episode14
所夜side
ブライドに夕食を作って貰っている間随分とはしゃいでしまったようだ。
時計の針は1度見た時よりも遥かに指す数字が違う。
映矢輝さんは目の前に運ばれた煌びやかな料理に目を輝かせ、ほんの少し唾液を垂らしている。
私も見た事が無い料理、イギリス料理か何かでしょうかね。
そして、みんなの食具を魔法で素早く机に置き、一目散に椅子へと飛び込むように座る。
その姿はまるでトムとジェ○ーの追いかけっこの時のような速さ。表現しにくいですが本当早いんです。
3人で囲む食卓は極めて新鮮。いつも2人だったしさらに前は1人でしたから。
目の前で肉の取り合いをしている2人を見ていると、なんだか自然と笑みがこぼれてしまう。
元々1人の方が好きだったが、ここまで複数人で一緒にいると楽しいものなのだろうか。
ブライドはもちろん、映矢輝さんはすごく一緒に居て楽しい。私からしたらもうお友達だ。
こうして仲良く、雑談しながらご飯を食べれるような日がずっと続けばいいのに。そう思う私は、欲張りですね。
「ちょっと、!私のお肉全然残ってないじゃないですか!」
しまった。箸を進めるのを忘れていた。
ブライドは19歳、まだ沢山食べる年齢だ。
映矢輝さんは100歳超えてるけど、精神がまだ子供だからそりゃいっぱい食べますよね……。
まぁいいですよ。どうせお肉沢山食べたら胃もたれしますし。(2000年以上生きているから)
「えーちゃんの作ったお料理、どれも美味しいね!いくらでも食べれちゃう!」
「こら映矢輝。野菜もしっかり食べろよ?」
く、、、、、完全に親子!!!!!!!
ブライドside
夕食を食べ終わり、風呂も済ませて調度良い眠気に襲われる時間帯になってきた頃。
映矢輝は所夜が買った寝巻きに着替えて今にも寝そうな顔で目を擦っている。
仕方ないから寝させようと思ったが、1つ大事な事を忘れていた。
映矢輝から自身の情報を洗いざらい聞こうと思っていた事だ。買い物やら家の事やらですっかり忘れていた。
何かひとつでも聞き出さないと、ここに泊める意味がない。何か切り出さなければ。
「映矢輝。」
問いかけると、眠そうながらも明るい声で答える。
「なぁに?」
「眠たい所申し訳ないが、お前が寝る前に色々聞いておきたい事がある。」
私がそう切り出すと、所夜は思い出したかのような顔をして苦笑い。
映矢輝は先程までずっと目を擦っていたのに途端に真剣な表情になる。
「お前の父親の素性と、お前に関する事。あとはそうだな、地獄や魔界についても教えて欲しい。」
思ったより聞きたいことが山積みになってしまっていた。
買い物の際に軽い事は聞いておけばよかったなと少し反省。
「それ、ほんとに申し訳ないって思ってる?w」
「でも、えーちゃんがそういうなら少しくらいなら教えてあげるね。」
「まずは、私のパパだよね、それが1番2人とも気になってるよね。」
何かを悟ったような、感じ取ったような。父親の話題になった途端引きつった笑顔になった。
でも、気になっているのは事実。話を止めずにじっと聞くことにした。
「2人が見たパパは黒い竜巻みたいなやつだったでしょ?でもお分かりの通り、あれは全然ホントのパパの姿じゃない。」
「パパはね、地獄の閻魔様なの。あたしよりも、どんな神様よりも、それなりには立場は高い。背丈は180以上ある巨体な人。 」
「頭もいいし、とっても強い。」
「2人は多分、千ちゃんの国から情報を持ってきて調べてるからわかると思うけど、あたしは元々、地獄に封印されてたの。」
「それを、パパが信仰者を使って助けてくれた。それから、義理ではあるけど父親って思うようになったし向こうもそう思ってるんだ。」
「パパはあたしにいっぱい期待してくれててね、斧の使い方とか、魔法の使い分けも、戦闘の基礎も義理のパパが教えてくれたの。」
「本当のパパは地獄へ封印される前もずっとお酒ばっかりで嫌い。でも今のパパは凄い好き!!」
「あの、1つ質問です。」
「ん?なに?」
「どうしてあなたは私の国の事を知っているんですか?それもまた、お父様と関係とかって関係ありますか?」
「ぁぁ、、、これに関してはパパじゃなくてあたしの能のせいっていうか、、、」
「後でまとめてちゃんと話すよ」
「わかりました。ありがとうございます」
なるほど。何となくだが理解。これだけあればオブザーバーにも情報の一つや二つあるだろ。
まぁ別にそこは心配してないが。
「えーと、あとなんだっけ、そうだあたしの事と地獄と魔界の事か。」
「と言ってもあたしの事に関しては話せる事はあんまりないっていうか、、、」
「 あーでも、さっきの話的にあたしの能の話をしておいた方がいいね。」
「あたしは、人から言われた言葉を絶対に忘れないの。」
「と、言いますと?」
すかさず所夜が返答する
「言葉の通り、1度聞いた事を忘れないで一生覚えてるの。」
「耳がいいって訳じゃないんだけど、なぜか忘れたくても忘れられないんだよね」
「なるほど、続けてください」
「わかった。」
「昔、まだ魔界にいた頃、ほんとのパパから聞いた事があるの。オブサーバーの国の事を。」
「だからほんの少し知ってるってだけ。」
「なるほど……では次に魔界と地獄のことについて、、、」
長い時間続いたから、端的に私がまとめよう。
まず地獄、ここは現世の地球や異界で罪を犯した者が行き着く場所。
地獄の閻魔、、つまり映矢輝の父親が罪人の罪の重さを見てどの拷問にするか決めてそれを執行する。
まぁ、私たち人間が思い描く地獄がそのままあるようなものらしい。
大きな特徴は、実力主義なこと。
1番強いとされる閻魔の他に、映矢輝のような神や閻魔に仕える妖精や妖怪、様々な種族が住み着いている。
強いものが弱いものを支配して信仰や富を巻き取る。そんな事が許されているのだ。
が、地獄の者達は賢いらしく、強いものの手下に入る事で安全になる場合がほとんどらしい。
さっき言った通り、様々種族や力がある中でも、映矢輝は特に強い。そのため映矢輝を信仰する者は少なくないのだとか。
一応、罰が結構どれも重いため、前世の姿からは想像できないほど優しい者が多く、地獄の者同士も喧嘩を起こすことはほぼほぼない。
地獄と聞いていた手前、もう少し壮絶なものなのだろうと読んでいたが、割と自由にやってもいいみたいだ。
それよりも厄介なのは魔界だ。
地獄のように実力主義な事はもちろん、人間と魔族という大きく別れたふたつの派閥で激しく対立している厄介な所。
しかも、魔族は魔族同士、人間は人間同士で仲が良くない者が多いらしい。
なにしろ、遠い昔、魔族が人間を襲った事で人間側が魔族と戦争をおっぱじめたのだ。
結果はほぼ引き分け。
そこから次第に魔族と人間は最悪の仲になっていき、魔界は差別や貧困、病気や資源不足に陥った。
今でこそそれが少しづつ良くなって行っているものの、一昔前までは大変だったのだ。
ちなみに、魔界にとって映矢輝の年齢(100歳以上)はまだまだ子供の部類に入るのだとか。
映矢輝が言うに、「周りにいる人はみんな500とか1000とか生きている」らしい。
所夜side
ここまで話しきったから疲れたのか、映矢輝さんがさらにウトウトし始めた。
最初からメモ用紙に全てをメモしていたブライドも、肩を伸ばして眠そうにしている。
時計を見ると、夕食からもう2時間が経とうとしていた。
だいぶ長いこと話をさせてしまったようだ。ちょっと申し訳ない。
「千ちゃん、えーちゃん、ありがとうね」
いきなりしゃべったと思ったら、出てきたのは意外な言葉。
ありがとう?何に対しての感謝なのだろう。むしろ付き合わせたのはこっちなのに。
「今日ね、あたしすっごい楽しかった。今まで生きてきた中で1番よ。お買い物したり、ご飯食べたり、少し真剣だけどお話したり、、。」
「千ちゃんとは2人っきりのファッションショーしたり、えーちゃんとはジュース一緒に飲んだりしたの、人生で1番楽しかった。だから、ありがとう!」
ツーンと目の奥が熱くなるような感覚を覚えた後、水のような物がこぼれそうになった。
初めて戦闘をした時、邪悪な者だと思った。でも違った。心の底から純粋で優しくて、強い魔法使い。
「だ、だからさ、千ちゃん」
ん?なんだなんだ。なんだその真剣な表情は。
「あたしの事、「さん」付じゃなくて映矢輝って呼んで欲しい、、、な?」
あ、ただの可愛い理由だった。
「も、もちろん、いいですよ。映矢輝。」
「千ちゃん……!!」
事あるごとに目を輝かせたり明らかにガッカリしたりと、感情がわかりやすいな。
「感動ムードの所悪いが」
「なんか……凄く違和感を感じるのは私だけか?」
「安心してください。自分で呼んでいて少し違和感を覚えました。」
「まあ……楽しそうだからいいか。」
寝る時、3人で川の字になって寝たのはまた別のお話。
コメント
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こういう何気ない日常って心ホッコリしますね✨仲良くしてるの可愛らしいです☺️ラストの川の字で寝るの最高すぎる、、!✨✨