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「どうしたエカテリーナ、驚くことか?昨日、見たはずだろう。あの方が残してくれた面白い玩具リストを」
「?!……っ、それを知ってるっていうことは…全部、手のひらの上だったってわけ……?」
父は楽しそうに頷く。
しかし、ダイキリは父の言葉を聞き、怒りで顔を紅潮させていた。
「あなたは……っ、あなたのせいで、お母さんがどんな目に遭ったか、知っているでしょう! どうして平気でいられるの!?」
だが父は、小指の爪ほどの興味も示さずに鼻を鳴らした。
「小娘の泣き声など、豚の嘶きと同じだ。聞き飽きた」
その一言だけで、ダイキリの理性は決壊した。
「この……ッ!」
彼女が短剣を握り直した瞬間、その刃が父の喉元を目がけて閃いた。
しかし──虚無。
父はまるで幽霊のように、一瞬で彼女の斬撃を回避していた。
ダイキリが必死に距離を詰めようとすればするほど、その動作は滑稽なダンスに成り果てる。
父は嗤った、嘲るように。
心底愉しむかのように。
「ふん、まだ学習せんのか。お前ごときの刃がこの俺に届くとでも? 改造を受ける前の俺ですら、お前など赤子同然だったがな」
「黙れぇぇっ!」
ダイキリの叫びが、虚しくスラムの湿った空気に吸い込まれていく。
その隙を逃さず、父が踏み込んだ。
「……っ!」
ダイキリが防御の構えを取る前に、鈍い衝撃が走った。父の掌底が彼女の腹部を抉ったのだ。
ダイキリの身体は軽々と吹き飛び、腐った煉瓦壁に叩きつけられた。
「がはっ……」
肺から搾り出された呻き声と共に、鮮血の雫が地面に滴る。
「ダイキリ!」
私の叫びと同時にアルベルトが動いたけれど、父はその動きを読んでいたかのように視線だけをちらりと動かした。
「まあいい」
父が再び口を開いた。
その声音には、先ほどの嘲りとは別の何か、余裕と計算が滲んでいる。
「あの方が到着するまで、遊んでやろうではないか」
「遊び……ですって?」
私は唇を噛みしめた。
怒りが全身を焼くけれど、同時に脳裏には警戒の信号が走る。
(なぜここで時間稼ぎを? ダイキリを痛めつけても得はないはず……)
父が言う「あの方」とは誰なのか。
コロナリータが逃げる直前に言っていたMASTERのことなのか。
「ダイキリ!」
私は倒れた彼女を庇うように前に出る。
「無駄だ」
父がゆっくりと腕を組んだ。
「お前たちが束になっても、今の俺に傷一つ付けられん。それよりも───」
父は顎をしゃくり、遠くの霧深い路地へと視線をやった。
「お前らに、最高のハッピーエンドをプレゼントしてやろう」
その言葉が合図となったかのように。