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※この物語はフィクションです。

実在の人物及び団体等とは一切関係ありません。


〈9話〉

ウサギは迷わず 包丁(それ)を取り――。

「やめっ」

右手の人差し指――私が切ってしまったのと同じ場所を切った。

傷口から玉のような血が浮かんでくるのを、私は少しの間、呆けたまま見ていた。

指に沿って血が流れ、まな板の上にぽたぽたと垂れるのを見て、我に返る。

「なにしてるの!」

慌てて右手をウサギの右手を取って、蛇口をひねった。

流水で洗い流す間、私の手だけが震えている。

動揺と混乱で、心臓が耳で鳴っているようだった。

「なんで、こんなこと……」

手と同様に、私の声はみっともなく震えていて、水の音に掻き消えそうなほど小さなものだった。

ウサギは明確な意志を持って、自分の指を包丁で切った。

傷の位置はほぼ私と同じだけれど、深さから躊躇いのなさが感じ取れる*************************

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