「っうまっ…リョウも手で食え。うまい」
もぐもぐしながら唇についたソースを舐め、さらに美味しいと器用に言う彼を見ながら、私も食べてみる。
「あっ…美味しい」
「だろ?」
自分が作ったかのようなどや顔の颯ちゃんは
「これ熱いうちがいいよな、絶対」
そう言い、2本目にかぶり付く。
「ビールにもご飯にもいいね。成功して良かった」
「レパートリー増えてるよな、リョウ」
「旦那様のために頑張りたいな…初挑戦はドキドキだけど、失敗するかもしれないけど、またやってみるね」
そう言って指についたソースを舐めるリョウは、その言動全てが俺を煽り熱くすることを知らない。
根っから真面目なリョウは、初めての料理に挑戦する時にはきちんとレシピ通りに作るので失敗しないと思うのだが、火加減‘中火’ってこれで正しいのか等、いろいろ気になるようだ。
一緒に暮らし初めて、当初は無理に挑戦する必要はないと思っていた。
リョウの具沢山の味噌汁があって、肉か魚が焼いてあれば十分だったから。
だが、リョウが興味を持って、そして俺のために作りたいと意欲的なのでこの上なく嬉しい。
今夜の新しいご馳走メニューといつもは買わない生ハムは、今日彼女なりに記念日メニューを考えてくれたに違いない。
そしていつもと変わらない味噌汁が、最高にホッとする。
「リョウ、初めてのスペアリブもうまい。いつものハムじゃない生ハムサラダも味だけでなくテーブルを彩っていい。それにこの味噌汁」
俺は汁椀を持ってリョウと視線を合わせた。
「これが小洒落たスープじゃないところが最高。俺はリョウの味噌汁だけで米食えるくらい好き」
そう言い味噌汁のなめこを食べると
「颯ちゃん、ありがとう。颯ちゃんがいつも美味しいって言ってくれるから作っちゃう。でも…」
「うん?」
「今度スープも作ってみようと思っていたんだけど…味噌汁もいる?」
リョウは至極真面目に俺に聞いた。
普通じゃあり得ない質問かもしれない。
でもこれを真面目に聞くのも小さな頃から変わらないリョウなんだ。
本当に心から相手のことを思って聞いている。
だから分かりきったことも俺は何度も喜んで答える。
コメント
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ホッとするいつもと通りの美味しいあったかいお味噌汁。 それが2人の大事なもので幸せの象徴✨ 颯はリョウちゃんの質問になんて答えるんだろう♪ 両方とも?😆