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白山小梅
12
#借金
すると早紀が首を横に振った。
「それは違うと思う。あの子はずっと殻に閉じこもっていたのね。人間関係が面倒で、だから私みたいな自由人に憧れたのよ。でもそんなあの子が私との関係を捨ててまで一緒にいたい人を見つけたらしいから。例えば……どんな自分にも変わらない態度で接してくれる誰かさんとか?」
早紀が七香を指差して、不敵な笑みを浮かべる。
「な、なんのことですか? 私は彼とは……」
「どこかで再会したんでしょ? あんなにわかりやすい反応されたらバレバレよ」
まさか早紀にまで見抜かれるとは思わず、自分自身に呆れてしまう。
「……もしそうだったとしても、それはないです」
「どうして?」
「昴くん、私がいなくなってもいいからセックスしたいって言ったんです。欲には勝てない人だってわかっていたけど……だから私から彼に訣別宣言しましたから」
「それ、いつのこと?」
「一昨日です」
「あら、私は昨日言われたわ。ということは、その前に彼の心を揺るがす何かがあったということじゃない?」
「でもそれは……私じゃないです、きっと」
「きっと? それならあなたかもしれないわよ。ちゃんとあの子の話を聞いてあげて。そして話し合ってから結論を出しなさい」
自分が昴と早紀の関係に影響を与えたなんて、想像もつかなかった。むしろ別の何かが彼の心に変化を与えたと考える方が楽なくらいだ。
「私ね、今海外で共同事業を始めないかって誘われて。しばらく日本には帰らない予定なの。だからあの子に言われなかったら、私から切り出していたかもしれない」
あまりの情報量の多さに、頭と感情が追いつかず、口をあんぐりと開けたまま、何度も目を瞬く。
「何よ、その反応。それからさっき『私を好きな昴が可愛い』って言ってたけど、すごく興味深いわ」
「興味深い……ですか?」
「えぇ、だってあの子、私の前では可愛い姿なんて見せないもの。いつもドライでいろいろ面倒って感じ。でもあなたの前ではそうじゃないのなら、それはきっとあなたしか知らない昴なんだと思う」
「……早紀さんを想う昴くんは、いつも優しい笑顔になるんです」
「でも昨日私のところに来た昴、すごくスッキリした顔だったわよ。ようやく自分の居場所を見つけたような、そんな喜びを感じた。それってあなたへのなんらかの気持ちを自覚したんじゃないかしら」
「私への……?」
「そうよ、あなたがあの子に希望を与えたの。もっとあの子の想いを信じてあげたら? まぁ今までの行いを考えればそれも無理かもしれないけど、でもあなたも自信を持ってもいいんじゃないかしら」
今まで早紀を想い続ける昴を見てきて、自分は見向きもされなかった。それなのに、いきなり自信なんて持てるわけがない。
「あら、気付いたら夜が明けてたわね。やっぱりここから見る朝焼けは最高ね」
空には太陽が昇り始め、辺りは優しい光に包まれる。
私と彼は未だに夜道を彷徨っているよう。私たちは答えを見出し、夜明けを迎えることが出来るだろうかーーそこまで考え、七香は自分が昴から逃げ出したことに気付く。
あの夜、昴の明らかに様子がおかしかったのに、問い詰めることもなく、『友だちじゃなくていい』という言葉に傷付いて、家を飛び出してしまった。本当はあそこできちんと話し合うべきだったのに、放棄したのは自分だった。
「本当にきれい……」
やるべきことを自覚した途端、清々しい気分になる。早く帰らなきゃ、そしてきちんと話し合おうーー七香は大きく頷いた。
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