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続き
⛄BL
💛×💜
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映画館の暗がりに、照明が落ちていく。
予告編が始まり、スクリーンの光が俺たちの顔を断片的に照らす。
隣にいるふっかは椅子に深く腰をかけて、ポップコーンの大きなカップを抱えてる。
「俺が持とうか?」
一応声をかけてみたけど、「俺の役目っぽいし」なんて笑って断られた。
その「っぽいし」って言い方が昔から変わらない。
無邪気で、曖昧で、俺を惑わせてくる。
なんやかんや俺がポップコーンは持った。
「これって前から見たかったの?」
「まあ、気になってはいたけど、」
「ふっかが好きそうかなって思って」
「気が利くね〜、ありがと照!」
ありがとう、の後に笑顔が来る。ふっかのそれは、純粋な笑顔で、俺の気持ちなんかとは関係ない笑顔だってことぐらい、わかってる。
だけど、あんな笑顔好きな人に見せられたら誰だって「嬉しいな」って、「ずるいな」って思うでしょ。
本編が始まっても、俺の意識はふっかに引っ張られてばっかだった。
ポップコーンをつまむ度、肘が俺の腕に当たる。
小さな音を立てて笑ったり、スクリーンに釘付けになったり。
その行動全てが愛おしくて。…でも、どうしようもなく遠い。
ふと、ポップコーンを食べようと手を伸ばすと、同じくポップコーンを食べようとしていたふっかの手に当たってしまった。
「あ、ごめ…」
「照も食べる?はい、上げる〜」
無意識の内なのか、あーんの形で渡された。
こんな事で興奮する俺の子供らしさに空しくなる。
俺は「ありがとう」とだけ言って、自分の手で口へ運ぶ。
映画の音の方が響いてるはずなのに、心臓の音の方がうるさい。
「…ふっか」
「んー、おもしろいね」
声を掛けたけど、映画に集中しているふっかはただこっちを見て小さく笑うだけだった。
タイミング、なんてものを見失ったのは、もう何回目だろう。
けど、せっかく誘ったデートだった。
俺から誘って、俺が勇気を出して連れ出したんだから、ちゃんと伝えたい。
「好き」って、その一言を。
ふっかに本気って伝わるように。
けど、映画が終わるその頃には、タイミングなんてものは跡形もなく流されてしまっていた。
エンドロールが流れて、館内が明るくなる。
「いやぁ、めっちゃ面白かったね!」
ふっかが立ち上がりながら言う。
「最後ちょっと泣いた?照、泣いてたっしょ?」
「いや、泣いてない」
「うそだー!目赤かったじゃん!(わら」
「スクリーンの光のせいだろ(笑」
くだらないやり取りが、何となく楽しい。
少し距離が縮んだ気がする。気のせいかもだけど。
でも、楽しいだけじゃ足りないのが、俺の厄介なところだ。
そもそも、泣いてたのは映画のせいじゃなくて……まあいいや。
映画館を出て、昼過ぎの街に出る。
ふっかはスキップでもしそうな勢いで、俺の少し前を歩く。
「さっきのシーン覚えてる?」
「あの、主人公がヒロインを庇ってーー」
「…うん」
覚えてない。何も。
館内で覚えてるのは、ふっかの横顔だけ。
「でさ、照ポップコーン抱えたまま感動してる照、笑ったよね〜」
「え、俺の話?」
「うん。だって、腕の角度絶妙だったもん!」
「落とさないようにしながら感動してんの、器用だな〜って(わら」
「そんなに笑うことかよ。(笑」
「笑うことでしょ〜(わら」
ふっかは楽しそうに笑ってる。
俺の隣で。俺を知らないままで。
この「隣」に、俺の気持ちはまだ届いてない。
言えば、伝わるのだろうか。
それとも、また冗談にされて、笑って流されるだけ?
「なあ、ふっか」
「ん?」
「……いや、面白かったな」
「なっ!」
俺の言葉にならなかった気持ちは、ポップコーンのカスみたいに、手のひらの中で転がっていた。
ー
なんと皆さん、この連載が「#いわふか」で8位に居たんですよ!✨
まさかこんなにのんびり上げている連載が上位に入るなんて、思ってもみなかったです😭💞
今後とも「言葉にしたがりと、傍にいたがり」をよろしくお願いします☺️
♡&💬、フォローも待ってます✨