#一次創作BL
〃〃
「アイって、何だと思います?」
彼のそんな言葉が、
俺の靄のかかった頭に響いた。
「自分はですね、……」
疲れた笑顔見せながら答えを
出そうとする彼を遮り、
俺は云った。
「ヨウ素」
「え?」
〃〃
「え?。じゃねえ」
「Iはヨウ素だ」
「やだな先輩。
理系でもないくせに
理系アピールしなくても。 」
そう云ってヘラヘラした顔を向けるのは、
俺の部下、佐崎。
ブリーチやらワックスやらで
覆いたくられた茶色の髪が揺れる。
ついこの間までは赤色だったけれども。
「何でもいいから真面目にやれ」
パソコンと向き合いながら
今にもダウンしそうな脳を
エナジードリンクで醒ます。
「もう一緒にサボりません?」
整った涙袋に薄黒い隈を作る佐崎は
またも疲れた顔の笑みで
俺へ首を傾げる。
「お前がいいんだったらいいぞ。
本当にそろそろクビかもだけどな」
佐崎の今までの悪態を脳裏に
浮かべながら口に出す。
「イジワルですねー、相変わらず」
「何十人も女イジめてきたお前には
言われたくねえ」
嘘っぽい瞳に口角だけ上がる笑い方。
如何にも女誑しなその風貌は
評価は出来ないが、
彼が”フツウ”なことは分かる。
「…気になってたんすけど、
それどこ情報です?
俺が女誑しとか。」
なぜだかいつもより少し
真剣そうな表情で佐崎は聞いてきた。
「そんなの自分映した鏡にでも
聞いてみろ」
「えー、この顔は先輩の好みに
寄せてみただけですよ?」
「は?」
冗談だ、という可能性を
見つけられないまま
口の悪い疑問符を出す。
薄暗い部屋でパソコンから
漏れる仄かな光。
拍子に誤打してしまったことに
気づき、キーを鳴らし文字を消していく。
「先輩って、
ゲイでしょ。」
「は?」
同じ疑問形を繰り返す。
スペースキーに指がかかる。
間違って打たれた空白は、
今の俺の心中のよう。
こいつだけにはバレたくなかった。
そう思うのは何故だろう。
「いやー見ちゃったんすよね、
先輩が男優誌買ってるトコ
先輩、アイドルとかは
興味無いって言ってたんで、
やっぱそういう事かなー、と」
「はあ…」
俺は諦めて肯定の溜息をついた。
オフィス机の向かい斜め前、
座る彼の、パソコンを眺める顔を、
俺は眺める。
その、
奥底が冷たい瞳も、
白く高い鼻も、
薄ピンクに照る唇も、
少なくとも俺には
確実に綺麗に見えて、
惹かれてしまう。
「そうだとして。」
俺は普段より勢いよく
Enterキーを叩いて、
そう声を出した。
「なんでお前が俺の好みに寄せてんの?
皮肉か?」
そう尋ねると、
彼の顔が僅かに紅に染まり
待ってましたとばかりに口を開いた。
「そりゃあ、
先輩を喰いたかったから、です」
ブルーライトを避け顔を上げると、
バチッと効果音がつくのでは
ないかというほどしっかりと、
彼と目が合った。
「どうしたんです?顔赤いですよ。
それは引いてるんですか?
照れてるんですか?」
それは無論、後者だったが、
今彼の顔を見ていると
自分の心音を鳴らすのに精一杯で
答える暇も勇気もはなかった。
「あーあ、今日はせっかく真面目に
徹夜でもしようかと思いましたけど、
こんなチャンスを逃す訳にも
いきませんからね」
彼は回転椅子を回して立ち上がり、
こちらへ歩みを進めた。
「…お前は俺でいいのか?」
やっと出た声は
そんな安い不安だった。
「バカだなあ。」
語尾の’あ’が強調される、
そのいつも通りの話し方で、
いつも通りの口角の上がり度で、
俺の瞳へ近づいてくる。
「先輩が俺を意識するよりも
ずっーと前から、
俺は先輩が好きなんですよ」
頬を染め、若く男らしい
整った顔を見せ、口形は弧を描く。
そんな彼の表情に、
この国でまだ”フツウ”でない俺が、
惚れないわけが無かった。
〃〃
Profile
No.1
小松原
28歳
××株式会社主任
独り身
ゲイ
No.2
佐崎
24歳
××株式会社一般社員
独り身
バイ
「 ブ ラ ッ ク な 俺 ら 」
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コメント
16件
ああああ軽く叫んだ 先輩くん黒髪直毛サラツヤ目元ホクロであってください、、!!!!!!😭😭😭😭😭 そしたらガチで押します ほんと後輩くんの髪の毛が染めすぎて傷んでるって感じもクズっぽいよねつらい