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病院の前。
俺は。
204号室を見上げていた。
「……凛って」
俺は蓮を見る。
「本当に俺たちの兄弟なのか?」
蓮は。
しばらく黙っていた。
「そうだ」
「じゃあ」
「なんで俺は知らない?」
「お前が生まれた時には」
「もう存在しないことになっていたからだ」
「存在しない?」
「ああ」
蓮は。
ゆっくり話し始めた。
「俺たちは三人とも」
「同じ日に生まれた」
「でも」
「三人とも同じように扱われたわけじゃない」
俺は。
黙って聞く。
「悠真は」
「普通の子供として育てられた」
「俺は」
「お前を守る役割を与えられた」
そして。
蓮は。
一度だけ目を伏せた。
「凛は」
「Rに選ばれた」
「……」
俺は。
息を止める。
「生まれた時から?」
「そうだ」
「そんなの」
「本人が選んだわけじゃないだろ」
「ああ」
蓮の声が低くなる。
「だから」
「俺はRを嫌いになった」
「凛を」
「取り戻したかった」
俺は。
凛という名前を見る。
「じゃあ」
「凛は今どこにいる?」
蓮は。
病院の中を見る。
「ここにはいない」
「じゃあどこに?」
「分からない」
「……」
「最後に見たのは」
「2018年」
俺は。
204号室を見た。
「その時」
「凛もいた?」
蓮は頷く。
「俺と凛は」
「204号室にいた」
「何をしてた?」
「逃げようとしていた」
俺は。
驚く。
「Rから?」
「ああ」
「でも」
「失敗した」
蓮の手が。
強く握られる。
「俺だけが逃げた」
「凛は?」
「残った」
「どうして」
「俺が」
「凛を置いていったからだ」
俺は。
何も言えなかった。
「……兄貴」
「俺は」
蓮が。
俺を見る。
「お前まで巻き込みたくなかった」
「だから」
「俺は死んだことになった」
「でも」
俺は。
スマホを見る。
Rから届いた。
大量のメッセージ。
「Rは」
「ずっと俺に連絡してきた」
「ああ」
「じゃあ」
「凛なのか?」
蓮は。
答えない。
「兄貴」
「……」
「凛がRなのか?」
蓮は。
ゆっくり首を横に振った。
「違う」
「じゃあ誰だよ」
「それを」
「今から確かめる」
その時。
俺のスマホが鳴った。
Rから。
メッセージ。
**『204号室へ』**
俺は。
画面を見つめる。
その下。
新しい一文。
**『今度こそ、全員で』**
「全員?」
美咲が。
俺のスマホを見る。
蓮も。
画面を覗き込む。
そして。
顔色が変わった。
「……凛」
「え?」
「このメッセージ」
「凛しか使わない言葉だ」
俺は。
息を止める。
「じゃあ」
「凛がR?」
「いや」
蓮は首を振る。
「凛じゃない」
「でも」
「凛が」
「Rを知っている」
俺たちは。
再び204号室へ向かった。
階段を上る。
201。
202。
203。
204。
扉の前。
俺は。
鍵を取り出す。
カチッ。
扉が開く。
中には。
一人の女性が立っていた。
「……母さん」
母さんだった。
俺を見た瞬間。
母さんは。
涙を流した。
「悠真」
「どうしてここに?」
「あなたに」
「話さなきゃいけないことがあるの」
俺は。
一歩近づく。
「凛のこと?」
母さんが。
頷く。
「そう」
「教えてよ」
「凛は」
母さんは。
言葉を詰まらせる。
「あなたの妹よ」
俺は。
固まった。
「……妹?」
蓮が。
母さんを見る。
「母さん」
「何で今まで黙ってた」
母さんは。
涙を拭う。
「凛は」
「あなたたちの兄弟だけど」
「あなたたちとは」
「違う」
「何が?」
「凛は」
母さんが。
ゆっくり答える。
「私が産んだ子じゃない」
俺は。
理解できなかった。
「……え?」
「凛は」
「あなたたちが生まれた後に」
「引き取られた子なの」
蓮も。
驚いている。
「じゃあ」
「三人目じゃない?」
母さんは。
首を横に振る。
「違う」
俺は。
混乱する。
「じゃあ」
「出生記録の第三児は?」
母さんは。
答えない。
その代わり。
一枚の書類を取り出した。
そこには。
2009年11月14日。
そして。
三つの名前。
**神谷悠真**
**神谷蓮**
**神谷凛**
俺は。
目を疑う。
「でも」
「凛は」
「私が引き取った子なんだよ」
「……」
「だから」
母さんは。
震える声で言った。
「この記録は」
「偽物なの」
俺は。
書類を見る。
何が本当で。
何が嘘なのか。
もう分からない。
その時。
部屋のスピーカーから。
声が流れた。
『そこまでだ』
母さんが。
顔を上げる。
「……R」
声が。
響く。
『悠真』
俺は。
スピーカーを見る。
『君は今』
『一番大事なことを忘れている』
「何だよ」
『凛が誰なのか』
「さっき聞いた」
『違う』
『凛という名前が』
『誰によって付けられたのか』
俺は。
言葉を失う。
『そして』
『なぜ』
『その名前が』
『2009年11月14日の出生記録にあるのか』
画面に。
一枚の写真が映る。
病室。
三つのベッド。
そこに。
三人の赤ん坊。
そして。
写真の隅に。
一人の人物。
俺は。
その顔を見た。
「……父さん?」
父さんが。
三人の赤ん坊を見ている。
その手には。
一枚の紙。
そこに。
赤ん坊三人の名前が書かれている。
悠真。
蓮。
凛。
そして。
その下に。
もう一行。
**『この三人のうち、一人だけを残す』**
俺は。
息を止めた。
「……一人だけ?」
母さんが。
泣きながら頷く。
「それが」
「Rの始まりだった」
俺は。
画面を見る。
そして。
ようやく気づいた。
Rが。
人を選ぶ仕組みになった理由。
それは。
最初から。
この三人を。
選ぶことから始まっていた。
(第五十九話へ続く)
コメント
1件
ああっ…もう、ここまで来たか…って感じでした😭💧 凛が妹で、しかも血の繋がりがないってところで頭が追いつかなくなりました。でもそれ以上に、204号室の出生記録と「一人だけを残す」って文字…あれがRの始まりだったっていうの、ゾッとしました。悠真くんが今、何を信じたらいいのか分からなくなる気持ち、すごく分かります。 何より、蓮が「凛を置いていった」って言ったシーンがずっと胸に残ってます。あの選択が、今の全部に繋がってるんだなって。 次話、待ってます。続きが気になりすぎて今夜眠れないかも🤍🥀
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