テラーノベル
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ある日・・・百合はピアノの前に座ってドレスのようなワンピースを着て、背筋をピンッと伸ばしている
結い上げた髪の下のほっそりとして優雅なカーブを付けている長い首は、そこに口づけして欲しいと言っているかのようだ
指が鍵盤の上に置かれ、彼女はじっくりと時間をかけて、隆二がドイツに行った時に買い付けた中古のスタンレーを愛でている、鈴子が弾くかもしれないと思ったが親の期待に応えないのが子供というものだ
隆二は息を詰めて入口にもたれてピアノを弾く百合を見つめた・・・
彼女はたまらないほど美しく、アンティークのピアノを一心に見据えて、魅惑的な笑みを浮かべながら指を鍵盤の上で躍らせている、彼女がピアノが弾けるとは知らなかった、さすが芸術家の娘だ
隆二の存在に気付かず、楽しそうに笑みを浮かべながら指を鍵盤の上で躍らせる百合・・・部屋のあちらとこちらで離れていてもわかるほどの脈動を感じさせる
メドレーの様に百合はショパンを演奏し始めた、指も優美に動いていたが、何よりもその顔に感情が表れていた。音楽が彼女にもたらしている強烈な喜びは、幻惑的でもあり、隆二を憤激させるものでもあった
隆二は我慢できずにウイスキーのタンブラーを口元に持っていくと、 ゆっくりと百合の方へ歩いていった
真後ろに回ったので、たとえ目を開けていても彼女には見えなかっただろう、けれども百合は今は目を閉じ、ピアノを奏でる芸術の恍惚状態に入っていた
隆二は後ろから彼女のオフショルダーのトップスのせいで、むき出しになっている肩にそっとキスをした、百合がパッと目を開け、ぎょっとして飛びあがった・・・がまだこちらを見ずに演奏を続けている
隆二は彼女の柔らかく、温かな首筋へと唇を這わせ、耳の後ろにまた誘惑的なキスをした
「弾き続けて・・・美しいリーファン・・・俺のアンティーク・ピアノでこれほどの演奏を聴かせてくれるとはな・・・もっと聞かせてくれ」
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