テラーノベル
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信愛たちが離祠の儀式を行っている頃、諏訪部家の居間では、さくらと茜がわらべ歌の三番の歌詞に頭を悩ませていた。
茜は何枚目か分からない紙を見つめたあと、大きくため息をつく。
「あー!これじゃダメ!」
勢いよく紙を丸めると、そのままゴミ箱へ放り投げた。
「やっぱ無理だよぉ〜・・・」
肩を落とし、畳に座り込む。
「作詞なんて産まれて初めてなんだからさぁ〜」
その弱音に、さくらは申し訳なさそうな顔を浮かべた。
「ごめんね・・・茜
関係無いのに村の事に巻き込んじゃって」
茜は一瞬だけ目を丸くする。
(あ、やばっ)
さくらが本気で責任を感じていることに気付き、慌てて笑顔を作った。
「いや!できるよ!うん!私たちなら出来る!うん!」
その言葉に、さくらも少しだけ表情を和らげる。
「でもどうやれば良いんだろ・・・」
茜は考え込むように顎へ手を当てた。
「一番も二番も初めは
『おじろくおばさ』から始まってるから
そこはそのままでOKとして、その先だよね」
さくらは考え込みながらも続ける。
「『啜り泣く』と『怒り泣く』
同じように五文字で統一した方が良いのかな?」
「五文字ねぇ・・・」
茜は畳を指先で軽く叩きながら、一定のリズムを刻み始める。
「おじろくおばさが──タタタタタン!みいな?」
「そうそう! そんな感じ!」
「うー・・・ん」
茜は腕を組み、さらに考え込む。
「『奉る』とか?」
「お、いいじゃん!それ」
さくらは嬉しそうに身を乗り出した。
「おじろくおばさを奉る」
しかし茜は首を横に振る。
「いや、それだと神格化し過ぎかな?」
「あ、確かにそう言われれば・・・」
再び二人の間に沈黙が流れる。
その時だった。
「あーもう!どうしたら良いんですかー!」
頭を抱えて叫ぶ茜の声に、湯呑みを載せた盆を持って居間へ入ってきた秋穂が、くすりと笑う。
「『供養せよ』とかは?」
何気ない一言だった。
茜の目がぱっと輝く。
「あ!それだ!『おじろくおばさを供養せよ』」
さくらは嬉しそうに母へ笑いかける。
「さすがお母さん!」
秋穂は照れくさそうに微笑み、肩をすくめた。
#普通
野々さくら
543
805
44
ありあ
159
「それほどでも♪」
そこへ玄関の方から焔垂の声が聞こえてきた。
「どうだ?作詞は順調か?」
そこに美羽の運転する車で伊那木材工房まで赴き、木材の調達に行っていた焔垂と朝陽が帰ってくる。
「あ!おかえり!」
茜が元気よく手を振る。
「どんな感じですか?」
朝陽は机の上に置かれた紙へ視線を落とした。
そこには、大きく一行だけ。
『おじろくおばさを供養せよ』
朝陽はしばらく無言でその文字を見つめ、やがて恐る恐る口を開いた。
「こ、これだけですか?」
茜は顔を真っ赤にして叫ぶ。
「あー!これだけって言ったー!
バカサイテーなんだけど!」
頬をぷくっと膨らませ、ふてくされたように顔を背ける。
朝陽は慌てて両手を振った。
「あ、す、すいません
別にそういう意味で言ったんじゃ──」
すると、さくらが苦笑いを浮かべながらフォローに入る。
「慣れない作業でさ、勝手がわからないんだよね」
朝陽は申し訳なさそうに頷いた。
「うー・・・ん、そうだなぁ・・・」
朝陽はしばらく考え込んだあと、紙へ視線を落としたまま静かに口を開く。
「贖罪込めて祠で詫びよ」
そして少し照れくさそうに付け加えた。
「とかはどうです?」
一瞬、部屋の空気が止まる。
「え?」
茜は目を丸くした。
「え?どうかしましたか?」
突然の沈黙に朝陽はどうようする。
「待って・・・」
茜は歌詞を頭の中で何度も繰り返し、リズムにはめ込んでみる。
その瞬間だった。
「朝陽くんチョー凄いんだけど!」
さくらも大きく頷く。
「うんうん!すごい!」
二人から一斉に褒められ、朝陽は慌てて手を振った。
「い、いやぁ、すでに完成してる
歌詞に後から付け足すだけなんで」
だが茜は首を横に振る。
「それが出来なくて悩んでたのに」
そこへ焔垂が苦笑しながら口を挟む。
「最初から朝陽くんに任せるべきだったな」
「まぢでそれな!」
茜は勢いよく頷いた。
さくらは期待に目を輝かせながら身を乗り出す。
「で?次は?次は?」
「次ですか?」
突然話を振られた朝陽は少し戸惑いながらも、腕を組んで考え始める。
「そうだなぁ・・・」
コメント
1件
茜とさくらが歌詞作りに四苦八苦してる姿、めっちゃ可愛かった〜!!💕 秋穂さんの「供養せよ」で道が開けたと思ったら、まさかの朝陽くんが「贖罪込めて祠で詫びよ」って…あの沈黙の後の一斉絶賛シーン、鳥肌立ったよ!!😭✨ みんなで協力してる感じが伝わってきて、ほっこりした〜。次の一文も気になる!