テラーノベル
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しばらくして、玄関の引き戸が開く音がした。
「ただいま〜!」
祠の撤去作業を終えた信愛が、少し汗ばんだ額を拭きながら居間へ戻ってくる。
茜は笑顔で手を振った。
「おかえり♬」
信愛は部屋へ上がるなり、机の上の紙に目を向ける。
「歌詞は?どう?」
その問いに、茜はなぜか肩を震わせながら笑い始めた。
「は〜はっはっはっは〜♬」
「何? その高笑いは?」
「出来たんだなぁ〜コレが♬」
得意げに胸を張る茜を見て、信愛は目を輝かせる。
「え? もう出来たの? 凄いじゃん茜!」
「まぁね!」
鼻を鳴らす茜だったが、すかさず焔垂が横から口を挟んだ。
「いや、全部朝陽くんだろーが!」
「余計な事言わないの!」
茜は慌てて焔垂を睨みつける。
「え? 朝陽くん?」
信愛が不思議そうに首を傾げると、さくらが微笑みながら説明した。
「朝陽くんが全部考えてくれたの」
「うっそ! 凄いじゃん!」
信愛は驚いたように朝陽を見る。
当の本人は照れくさそうに頬をかき、視線を逸らした。
「い、いやぁ・・・それほどでも♬」
その顔はほんのり赤く染まっていた。
「どんな感じ?」
信愛に促されると朝陽はスマホを取り出し、メモ帳アプリを開いて、完成したわらべ歌三番を静かに読み上げた。
「オジロクオバサニ解放ヲ
贖罪込メテ祠デ拝メ
過去ト今ノ罪ヲ嘆キ
数珠ヲ手ニシテ悔恨謝罪
オジロクオバサヨ眠レ眠レ
オジロクオバサヨ昇レ昇レ」
最後まで読み終えると、朝陽は少し照れたように笑った。
「一応・・・こんな感じに出来ました」
その横で、お茶を運んできた秋穂は心の中で苦笑する。
(私の『供養せよ』は何処に行ったの?
まぁ・・別に良いけど・・・)
信愛は満面の笑みを浮かべた。
「凄いじゃん!天才だよ!めっちゃ良い歌詞!」
朝陽はますます照れてしまい、鼻の下を人差し指で軽くこする。
「そ、そうですかねぇ?」
信愛は歌詞を見つめながら静かに頷いた。
「おじろくおばさの解放と
自由を願って罪を認めて謝罪する
そして、おじろくおばさが安らかに
眠るように天へ昇るのを願う優しい詩」
信愛は嬉しそうに微笑む。
「これなら、おじろくおばさも納得してくれるよ」
「よっ♬天才作詞家ばくた〜ん♬」
茜が両手を叩きながらはやし立てる。
さくらも笑いながら続けた。
「今の内からサイン貰っとこうかな♬」
「あはは、いやぁもう辞めてくださいよ♬」
朝陽は照れ笑いを浮かべ、みんなの笑い声に包まれた。
ひとしきり笑い合ったあと、信愛は改めて口を開く。
「後は祠を新しい場所に建てる!それだけだね!」
焔垂が確認するように尋ねる。
「撤去は終わったんだな?」
「うん! 無事に!村のお兄さん達に
協力してもらったから!後はお焚き上げだけ!」
「お焚き上げ?」
茜が首を傾げる。
信愛は説明するように言葉を続けた。
「お焚き上げは神社とかお寺とかで
古いお守りとか仏壇とかを焼いてもらう事
想いが込もっていて、直接捨てるのが
忍びない物なんかもお焚き上げするの」
茜は首を傾げた。
「普通に捨てちゃダメなの?」
信愛は静かに首を横へ振る。
「これはただの木材じゃなくて
祠に使ってた木材だからね
普通に捨てちゃバチが当たっちゃうよ
きちんとしたお寺でお焚き上げして
浄化してもらわなきゃ」
その話を聞いた朝陽が、何かを思い出したように口を開く。
「確か正月の注連飾りとかも
お焚き上げしなきゃいけないんでしたよね?」
信愛は勢いよく頷く。
「そうそう!それ!」
一拍置いて、誇らしげに言い放つ。
「『どんどや』ですよね」
「あぁ〜!どんどや!」
茜が手を打つ。
さくらも懐かしそうに微笑んだ。
「小学生の時にやった記憶あるわ!」
茜は納得したように何度も頷く。
「あれって何でわざわざあんな大袈裟に
燃やすの?って思ってたんだけど
お焚き上げだったんだ!初めて知った」
信愛は笑みを浮かべながら話題を戻した。
「てか、木材調達はもう終わったの?」
朝陽は力強く答える。
「はい!無事に終わりました!」
すると焔垂が立ち上がり、玄関の方を指差した。
「こっちだよ」
そう言うと、皆を家の外へ案内し始めた。
#ボカロ
ありあ
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コメント
1件
×××さん、こんにちは、寺島あおいです🌷 第112話、拝読しました。朝陽くんの作った歌詞が「贖罪」や「悔恨謝罪」ではなく「解放」と「眠れ」「昇れ」という優しい祈りになっているのが、とても沁みました。信愛さんが「おじろくおばさの解放と自由を願う優しい詩」と評した言葉に、この物語が目指す場所が表れている気がします。秋穂さんの心のつぶやきにも思わず笑みがこぼれました。お焚き上げやどんどやの話で日常の温かさが戻ってくるバランスも絶妙でした。次が楽しみです!