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第12話:虚構の楽園
目を開けた瞬間、そこは光に満ちた庭園だった。

芝生、花畑、透き通った湖。鳥のさえずり、甘い風の香り。

つい数秒前まで血と炎に覆われていた戦場が、まるで幻のように消えていた。


遠藤 蓮は立ち尽くす。

「……ここは……」


仲間たちの姿も変わっていた。

相原 凛は、ドレスを身にまとい、包帯のない腕で笑顔を見せていた。茶色のショートボブが陽光を受け、柔らかく輝く。

高城 翔は腫れも傷も消え、スポーツウェア姿で汗ひとつなく立っていた。

真田 玲央は丸眼鏡を外し、落ち着いたスーツ姿で誇らしげに周囲を見渡している。

森下 瑠衣は舞台衣装のようなピンクのチュチュをまとい、踊るように芝生を駆けていた。


そして――広瀬 伶も。

泥に染まったブラウスは消え、長い髪を撫でながら、笑顔で子どもを抱いていた。

「やっと……会えたの……」


その光景はあまりに完璧すぎた。

蓮の胸を冷たい疑念が走る。


「これは……管理者の仕業だ」


ステージ中央に仮面の管理者が現れる。長い外套、仮面が庭園の光に反射していた。

「ここは“楽園”。お前たち全員の願いを叶えた世界だ。殺し合う必要はない」


甘美な声が響く。

翔は拳を下ろし、凛は涙を流しながら笑顔を見せ、伶は子どもを抱きしめて離さない。


だが蓮は叫んだ。

「違う! これは偽物だ! 願いの“歪んだ反映”だろ!」


その瞬間、景色が揺れた。芝生が崩れ、花畑から血が滲み出す。湖が赤に染まり、鳥の声が悲鳴に変わる。


「見ろ! 本当の姿だ!」

蓮が叫び、石を掴んで地面に叩きつけた。幻想が砕け、ガラスのように割れていく。


管理者の声が怒りに変わる。

「なぜ抗う! ここでは誰も死なず、誰も苦しまないのだ!」


その時、幻に囚われた矢吹 隼人が飛び出した。短髪のボクサー姿、瞳は虚ろに光を宿し、拳を蓮に向ける。

「ここでいい……ここが俺のリングだ……」


矢吹の拳が蓮の頬を裂き、鮮血が飛ぶ。骨の軋む音が響く。

だが蓮は踏みとどまり、殴り返した。

「違う! そんな夢で生きるくらいなら、地獄で戦う方がマシだ!」


二人の拳が交錯し、血と幻影の破片が宙を舞った。

その衝撃でさらに幻想が崩れ、伶の抱いた“子ども”が霧散する。

「いや……戻ってきて……!」伶の悲鳴が響く。


庭園は完全に崩壊し、再び瓦礫と血の戦場が露わになった。

管理者の仮面はひび割れ、憎悪に満ちた声を響かせる。


「ならば――最後の一人になるまで、地獄を見せてやろう」


光が砕け、楽園は消え去った。残ったのは疲弊した10人と、さらなる地獄の約束だけだった。




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