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第13話:最後の土曜日
夜の鐘が鳴り響いた。
最後のフィールドは、廃墟と化した都市の広場。
倒壊したビル群、砕けた街灯、アスファルトに染み付いた血の跡。
空は暗雲に覆われ、月明かりすら届かない。
残るは四人。
遠藤 蓮――黒髪短髪の大学生。灰色のパーカーは血と泥で黒ずみ、眠そうな目の奥に鋭い光が宿っていた。
相原 凛――茶色のショートボブ、水色のシャツは血で赤く滲み、包帯に縛られた腕を震わせながらも立っていた。
八坂 圭吾――スーツ姿は破れ、細身の体に返り血が点々とついている。それでも口元には余裕の笑み。
霧島 静――長い黒髪を垂らし、紫のワンピースは裂けて土埃にまみれている。だが瞳はなお濁らず、幻想を宿していた。
「最後の土曜日……これで終わるのね」霧島の声は甘く響く。
八坂が冷ややかに応じる。
「終わらせるのは私だ。言葉で勝てぬ者は、ここでは生き残れない」
蓮が歯を食いしばった。
「……どんな言葉も幻も、俺の直感は騙せない」
次の瞬間、霧島の幻覚が爆発する。
瓦礫の影から無数の分身が現れ、幻の街灯が灯り、空から無数の刃が降り注ぐ。
「さぁ、誰が本物か……見極めてみなさい」
凛が呻きながら仲間を庇う。
「……蓮、私が時間を稼ぐ!」
彼女は包帯の巻かれた腕を振り抜き、幻影の刃を受け止める。布が裂け、血が再び噴き出した。
「凛っ!」
八坂の声が響く。
「お前の“守る”という願いは弱さだ。その弱さこそ、お前を殺す!」
言葉が心を抉るように響き、凛の瞳が揺らぐ。
蓮が叫ぶ。「耳を貸すな!」
彼は地面を蹴り、幻影の中を走った。直感が導く。左ではない、右でもない――真正面。
蓮の拳が幻影を突き抜け、霧島の頬を打ち抜いた。
「ぐっ……!」
鮮血が飛び散り、霧島がよろめく。だが笑みを消さない。
その隙を突き、八坂がナイフを抜いた。
スーツの袖から光る刃。背後から蓮へ突き立てる。
「これで終わりだ!」
しかし凛が身を投げ出した。
水色のシャツが裂け、胸元に深い傷が走る。
「やめろおおおっ!」蓮の咆哮。
八坂の冷笑。「結局、守るために死ぬのか。愚かだな」
蓮は血に濡れた凛を抱きかかえ、震える声で言った。
「……愚かでもいい。俺は……仲間を見捨てない」
その瞬間、蓮の直感が研ぎ澄まされる。
八坂の言葉も、霧島の幻覚も、全てが“偽り”として浮かび上がった。
「……見えた」
蓮は地を蹴り、八坂の胸に拳を叩き込む。肋骨が砕ける鈍音。八坂が血を吐き、膝から崩れ落ちる。
最後に残った霧島が笑みを浮かべ、幻影を最大限に広げた。
「ならば……最期に悪夢を」
数千の幻の刃が蓮を襲う。だが蓮は怯まない。
直感が導いた一点に突進し、拳を突き抜けた。
霧島の身体が大きくのけぞり、紫のワンピースが血に染まる。
「ふふ……悪くない結末ね……」
そう呟き、霧島は倒れた。
荒れ果てた広場に残るのは、蓮と、瀕死の凛だけ。
最後の土曜日が、静かに終わろうとしていた。