テラーノベル
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皿が運ばれてくる。
香りが立つ。
———
「ハギスです」
ユアンが言う。
———
「このあたりでは、よく食べられるものです」
———
私は皿を見て、わずかに手を止める。
———
ホームズがそれに気づく。
———
「大丈夫だ、ワトソン」
———
短く言う。
———
「うまいぞ」
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そう言って、すでに口にしている。
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私は一瞬ためらい、それからフォークを取る。
———
メレッドが、小さく笑う。
———
「少し、こうすると食べやすいですよ」
———
グラスを手に取り、スコッチをわずかにかける。
———
「香りが立つんです」
———
穏やかな声だった。
———
私は、言われた通りにする。
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確かに、悪くない。
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「でしょう?」
———
メレッドは、そう言って少しだけ微笑む。
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そのときだった。
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彼女の手が止まる。
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わずかに、呼吸が乱れる。
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「どうした」
ユアンが言う。
———
「いえ……」
———
声は小さい。
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「少し、気分が」
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言い終える前に、目を閉じる。
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ユアンが立ち上がる。
動きが速い。
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「横になろう」
———
支えようとする。
———
「私が診よう」
私は言う。
———
別室に移る。
———
脈を取る。
速くはない。
乱れてもいない。
———
「大丈夫です」
メレッドが言う。
———
「よくあることなんです」
———
「よくある?」
———
うなずく。
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「ときどき、こうして……」
———
言葉を探す。
———
「思い出せないことがあるんです」
———
「何を」
———
少し考える。
———
「子供の頃のことです」
———
「全部ではありません」
———
「ある時期だけ、ぽっかりと」
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沈黙。
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「思い出そうとすると、少し……」
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目を伏せる。
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「怖くなるんです」
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それ以上は言わない。
———
外で、水の音がする。
———
変わらず、続いている。
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るしゅ
鬼霧宗作
鬼霧宗作