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化粧なんかしていなくても、若く・・・艶のある百合の肌・・・どうしてこれほどまでに美しく見ているだけで心を締め付けられるのだろう
隆二は百合のカールした濃いまつげを見つめた・・・時が過ぎるのも忘れて見つめた、吸い込まれそうな瞳はビー玉みたいだ、あまりに澄んだ美しい茶色で生き物とは思えない
息子から奪い取ってやりたい・・・いや・・・元々この娘は俺のものだった
隆二が懇願の目で百合を見つめる、あまりに切なくて一粒涙がこぼれた
「愛してる・・・君はあんなにも俺を愛してくれていたじゃないか・・・過去を水に流してやり直そう・・・リーファン・・・いや、百合・・・過去の過ちを償わせてくれ・・・ねえ・・・少しでいいからやってみよう」
百合は悲しそうに言った
「何をしても過去の傷は消えないわ」
「許してほしい・・・どうしたら俺を許してくれる?君を幸せにするためなら、俺は出来るだけのことはするよ
隆二の額に刻まれた皺からは、ありありと苦悩が伺えた、彼は薔薇の花束を抱えている百合ごと抱きしめた
「リーファン・・・結婚が無理ならせめて君の面倒を見させてくれ・・・君にマンションを買おう・・・そこで二人で暮らそう」
「・・・バカな事言わないで」
百合は冷たい目で隆二を見つめた
ガサッと背後で音がして隆二が後ろを振り向くと、そこに鈴子が立っていた
白い薔薇とピンクの薔薇の生垣の間に、ただ目を見開いて・・・呆然と12歳の娘がこちらを見ている
その時になってようやく、自分が片膝を百合の脚の間に差し入れていた事に気が付いた、鈴子はショックを受けているのか、その場に立ち尽くし微動だにしない
バシッ
「放して!」
百合が薔薇の花ごと隆二を突き飛ばし、駆け足でその場から去って行った
彼女の抱えた薔薇のトゲで頬を切った隆二は、そっと血が流れている頬を指先で押さえた
手に入れるためには少々の血も流す覚悟がいるのか・・・
百合はまるで「薔薇」の花みたいだと思った
振り返ると鈴子はもういなかった