テラーノベル
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賑やかな団体が街を行き過ぎる。ある意味で皆が皆知られた顔ぶりばかり、勇ましい土産話から「ちょっと看板手直ししとくれ」まで懇切丁寧に対応しながら歩いた結果。ギルドに到着した時にはとっぷりと陽が暮れ、粋なラウールの手配で酒場よりジャンジャン酒と料理が運ばれて来ている真っ最中であった。
「あっ、帰って来た!ちょうどメインディッシュが来た所だよ」
「メっシぃ♪」
「メシーーーっっ!!」
「メシじゃん」
「…メシ」
四者四様?な喜びを表現しつつ四人掛けの円卓へ腰を据える。リーダーの責を委ねられているヒカルが樽型ジョッキを掲げて咳払いを二つ・三つ、逞しい肉体とはギャップ萌なはにかみを浮かべぽつりと呟く。
「みんな、お疲れ様。今回も誰一人欠けずに無事帰れて、俺は凄く嬉しいよ。そんじゃあ…かんぱい」
「「「かんぱ~い!!」」」
ガゴン、ゴッと荒くれた乾杯の後は盛大に飲んで、食って、笑い合う。そうして酒と料理が進んだ後決まって始まるのが〝仲間自慢〟。
仲間内でのみならず、近卓の素知らぬ人へ「いかに俺達の仲間は素晴らしいか」を面白おかしい冒険譚調で語り出すのだ。自分など二の次に、聞いていて気持ちがいい程に褒めて褒め倒す。しかもそこにリップサービスなど欠片も感じられない。皆で皆を誇りに思い、信頼し合っているからこそツルっと出る本音だろう。
アベがこっそりこのパーティーを箱推ししている最たる理由が、これだったりする。
実はヒカル達は数多あるパーティーの中でも常に上位に名を連ねる強者揃い。
リーダーのヒカルの職は『武闘家』。生家である修道院で武芸を教える師範代の役を務めている。
ムードメーカーのサクマは『盗賊』の職だが、人や家屋から盗みは働かない。いわば幻獣専門の盗賊で、普段はダンスで生計を立てているとか。
おっとりなレンの職は『騎士』。一剣振るえば切られた事にも気付かずに敵が倒れる腕前らしい。
マイペースなフカサワことフッカは『魔道士』の職で、アベとは正反対に攻撃魔法と補助魔法の使い手。
一人一人の能力もさながら、四人が掛け合わさった時の瞬発力・爆発力は凄まじい。スピーディーさから織り成す連携は中堅クラスの幻獣ならほぼ無傷で倒せる。けれど、スピードに重きを置いた戦闘着は推し量らったかのように軽装で、騎士であるレンですら最低限の盾しか装備していない。
アベが不思議に思い問うてみたら「あれこれ着けると動きにくいから」なんていう単純明快な答えが帰って来て、呆気に取られたものだった。
本音を言えば、ヒカルとサクマには皮じゃない胸当てや脛当てを、レンは兜に鎧、フッカは魔法を弾くという特殊生地での魔術衣をせめて着て欲しい。しかし、アベはギルドを介しての〝知り合い〟でしかなく。パーティーメンバーでもないのに口をはさむ訳にはいかないと、臍を噛む事しか出来なかった。
職務とは全く余所事に耽ってはいたが、機械仕掛けのようなアベの手は書類を纏め終え、ついでに明日の午前中の分まで進めていた。横から手元を覗き込んだラウールが口笛を吹く。
「さっすがぁ。これで明日はお説教の時間が取れそうだね」
「いいんだか悪いんだか、ね。あ、そうだ。お料理の手配ありがとう。帰り道〝腹減ったー!〟の大合唱で恥ずかしかったんだから」
「キャハハ、鮮明に目に浮かぶ!それで明日なんだけど…ボクも立ち会っていい?」
「それは勿論…ラウールがいてくれれば心強いけど。~…でも、いいの?大変だよ?」
「だから聞いたの。ヒカルくん達ってアベちゃん親衛隊じゃない?お説教されててもなんか嬉しそうで、あれじゃ完全に逆効果だよねって毎回思ってた 」
「うっ…~親衛隊とか言わないでよ。でも確かにね、ただ俺の喉があやしくなっていくだけだなとは感じてたよ…はぁ」
「可愛い溜息付かないの。ボクがピンチヒッターするから、明日は一緒に頑張ろ!」
「ラウ……うん、ありがとう」
感極まり瞳を潤ませながら、アベはラウールの手を固く握る。
はう
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するとちょっと遠くから茶々が入った。この良く通る声は……。
「…ラ~ウ。どさくさでアベちゃんの手握んなって」
二人同時に振り返って見れば、案の定ピンクの髪をしたサクマ。
「残念でしたぁ。握ってるのはアベちゃんの方だよ♡」
「っ…~~アベちゃぁん!俺の手も握って!」
「へっ?なんで??」
「なんででもっ!ほら、ぎゅ~♡」
飛んで跳ねて来たサクマはラウールからアベの手を奪還し、きゅうきゅうと握り込む。空に見えない花を咲かせて、さも幸せと言わんばかりに綻んで。
そんな笑顔に弱いアベは、されるがままで八の字眉を形作るのみ。傍から見ているラウールですら人の良さが有り有りと分かっちゃって、こりゃボクが人肌脱がないとだなぁ…なんて思いながら、椅子を鳴らして立ち上がり掛けるレンの元へと大股で近付く。
「はいはい、レ~ン。食事、終わったの?」
「まだ…もう少し食べる」
「じゃあ、立つのは食べ終わってからね。ヒカルくんとフッカさんは?」
「俺、ごちそーさん。あ~…美味かった。世は満足じゃ!」
「俺は…酒欲しいかな」
「ボク、酒場で貰って来るから…アベちゃん、此処座りな 」
「えっ?俺が行くからラウール座ってなよ」
「マスターに用事あるからついでにお酒貰ってくるだけ。気にしないで~」
幅広な手をフリフリ行ってしまうラウールが置いて行った椅子の位置は、ヒカルとフカサワの間。流石は絶妙が出来る男、ラウール。
名残惜し気に抱擁を解くサクマの頭を撫でてから丸椅子へお尻を落とす、と早速フカサワがアベの口元へカルパッチョを刺したフォークを翳した。
「アベちゃん、アベちゃん。コレいっちばん美味しかった!あ~んして♡」
「あ、あ……」
「ちょっと待ったあぁぁ!美味しいんならコッチのチーズが先っ!アベちゃん、あ~…♡」
「~…あ、あー…」
「どっちも一番じゃないっす。…一番はローストビーフ。はい、あーん…」
「あ?あ、あ~…?」
「…ったく、お前らは…。アベ困らせてんじゃねぇよ」
言うが早いかヒカルは大口を開き、差し出された三品をパク、パクっ、パークっと一気に頬張り咀嚼する。パンパンな頬っぺがハムスターみたいで可愛いな、なんて眺めていたアベは慌てて水の入ったグラスを手渡す。
「ヒカル…、大丈夫?」
「んっ…んぐ、んぐ……ん、平気。サンキュ」
水を飲み干しクシャっと笑うヒカルからは、一蹴りで大物を仕留める豪傑さが微塵も感じられない。幻獣と対峙した時、この優しい顔は果たしてどんな風に変わるんだろう…探るようにじっと見詰めるアベをどう勘違いしたか、ヒカルは片腕が悠々周る細腰を抱き寄せた。
「…そんなに可愛い目で見るなって。お…、おかしな気分になるだろ」
「なるなぁっ!!」
「させませんから」
「お前ねー…二人だけの世界じゃないのよ?」
バチバチバチバチっ。
四人の絡み合った視線が青白い火花となって激しく散る。アベを除いた全員がゆら~…りと立ち上がり、空気は正に一触即発、臨戦態勢、爆発寸前。
と、ハルマゲドンでも起きそうな場にそぐわないのんびりした声音が割って入った。
「あれ、ちょうどみんな立ってるね。お約束のアレ、やって貰おうかなぁ…じゃ~ん!」
酒樽を担いだラウールが雰囲気などものともせずに近寄り、テーブルへ紙切れをピラリと閃かせる。
〝お食事代 ¥〇〇〇〇〇〇也〟
「げぇっ!たっっっか!!」
「そんなに食べましたっけ」
「ヒカルが酒爆呑みしたからだろっ!?」
「お前らだって肉ばっか食ってたじゃん!」
「は~い、喧嘩はナシね。取り敢えず食べて飲んだのは確かなんだから、ちゃんと払わないと」
「んふふっ…ヒカルもフッカもサクマもレンも、お腹ペコペコだったもんね。はい、覚悟を決めてぇ…漢気ジャンケン、ジャンケン…」
「「「「ポンっ!!!」」」」
リーダーたる男はリーダーを見事全うし。勝利のチョキを高々と掲げたまま、真っ白になって夜が明けるまで立ち尽くした。
コメント
2件
どんな世界線でも男気ジャンケンするのね😂かわいいパーティですね💛🩷🖤💜
いやー、めっちゃ笑ったわこれ!笑 メシ!からの漢気じゃんけんでリーダーが白目むくまで立たされるの、ギルドあるあるすぎて草。 ヒカルたち四人が強者なのにアベちゃんの前だと子どもみたいにベタベタしてくるギャップ、尊すぎるだろ。 ラウールの「ボクも立ち会っていい?」からの空気読まずに酒樽担いで請求書出すとこ、アベちゃんを困らせたくてやってるとしか思えなくて笑った。 続きめっちゃ気になるわ!アベちゃんの視点でギルドの内側もっと見たい🔥