今回は通常よりかなり長めです。時間のある時にお読みください!
蓮のやりたいことリストは、白いところが無くなるぐらいに夢いっぱいに書かれていた。
そのほとんどに「亮平と」という文字が並んでいた。俺はそれでまた少し泣いた。
涙腺が緩くなってる、と蓮は優しく笑った。
蓮の希望は、医師の岩本が体調面に考慮した上でひとつずつ叶えていくことになった。
そして、蓮が住み慣れた家に帰りたいと希望していたので、在宅看護に切り替えて残りの日々を過ごすことに決めた。
蓮は岩本のOKがもらえる度に、少年のような笑顔になった。
今日は待ちに待った、やりたいことリストの1つ目を実行する日。
長く入院していた病院とお世話になった人たちに感謝を伝えて、車に乗り込んだ。
久しぶりの家に帰って、穏やかな午後を過ごした。それからゆっくり支度をして、目的地に向かった。
ふたりで他愛もない話をしながら歩いていくと、店の前できょろきょろとしている、茶髪の青年が見えてきた。
俺たちの姿を見つけると、彼は目を輝かせた。
💙めめ!あべちゃん!しばらく見なかったから、心配してたぞ。
🖤うん。ありがとう、しょっぴー。久しぶり!
💚翔太、予約してた阿部です。
💙わかってるよ。今日は貸し切りだから、ゆっくりしてきな。
🖤💚ありがとう!
近所にあって、ふたりで暮らし始めた時から通っていたこの小さな食堂は、俺たちにとっていちばんの思い出の場所だった。
❤️いらっしゃい。待ってたよ。
ここの食堂は、店主の舘さんとそのパートナーの翔太がふたりで切り盛りしている。ふたりとも俺の幼なじみで、付き合いはかなり長い。
ふたりとも、ぱったりと来なくなってしまっていた俺と蓮を心配して連絡はたまに取っていた。
🖤舘さんも、久しぶり!
❤️目黒、来てくれてありがとう。
🖤ううん。俺たちのためにお店、貸し切りにしてくれたんだから。こちらこそありがとう。
❤️いいえ。ふたりはここの常連さんなんだから、このぐらいお安いご用だよ。
💚舘さん…
🖤ちょっと亮平!俺以外に惚れないでよ。
💚いや惚れてないよ!
蓮は一緒に居られない時間が長かったからか、最近は少し嫉妬魔だ。でも、そんな姿も愛おしい。
💙涼太に何かしやがったら阿部だろうと許さん。
💚だからしてないってば笑
❤️はいはい。俺は翔太しか見てないよ。
💙へへ//
どうやら嫉妬魔はもうひとり増えてたみたい。俺と蓮は、顔を見合わせて苦笑いした。
🖤なんかしょっぴーと舘さん、見ないうちにラブラブになったね。
❤️そっちもね。笑
💙そーいや連れは?まだ来てねぇの?
💚んー、そうだね。ちょっと遅れるのかな?平日の夕方だし。
からん、とドアに付けられた鈴が来客を告げた。
🧡めめぇー!あべちゃぁぁん!遅れてほんまにごめん!!
🖤向井さん!お忙しいのに来てくださり、ありがとうございます。
🧡いやいや!待たせてもうてごめんな。あと、そんな固くならへんで、今日は楽しもうや!!
🖤うっす!
💚うっす?笑
向井は、あの日以来ちょくちょくお見舞いに来てくれていた。彼はすごく、がつくほどフレンドリーで、やや人見知りな俺が打ち解けるまで時間はかからなかった。
🧡あ、せや。今日はスペシャルゲストも呼んだんねん。
💜いや忘れんなよ。俺一応社長だぞ。
向井の後ろから、色白な男が不服そうに顔を出した。その顔を見た蓮は、目を丸くする。
🖤え!?!社長!?
💜ども!目黒くんの噂、よく聞いてたから気になってて来ちゃった。社長やってる深澤辰哉です!気使わずにふっかって呼んでね~
🧡そう!ほっといてええんやで!
💜いや構ってくれよ~
一気に騒がしくなった店内に、大きな笑い声が響く。
❤️はい、お待たせしました。店長特製メニューです。
🖤うっまそ!!
💚さすが舘様!特注品もお手のものだね。
味の薄い病院食に慣れてしまった蓮のために、舘さんは通常よりもかなりヘルシーなメニューを考えてくれた。
🩷じゃ!めめこと、目黒さんの幸せな日々を願って!かんぱーい!!
⛄乾杯!!
看護師の佐久間に今日ここに来ることを話したら、楽しそう!と岩本も連れてちゃっかり来てしまった。
💚あー!!久しぶりの揚げ物!ビール!サイコー!!
🧡ええな!阿部ちゃん、うまそうに飲むなぁ。
💜ここの料理めっちゃうまいっすね!
💛お洒落なのに意外と居酒屋っぽいんですね。また来ようかな。
💙うわ!うっま!!
❤️ありがとうございます!って、翔太は毎日食べてるでしょ笑
💙いひひ
🖤やばい、美味い…毎日来たい…(泣)
🩷めめぇー!泣くなー!笑笑
騒がしい食堂の一角で、俺たちの特別な夜は更けていった。
🧡おれもうかえらへーん!ここに住むぅぅ
🩷俺っちも泊まる~♡
💛佐久間。飲みすぎだよ流石に。
💜あーあー。康二もつぶれてやんの。
💙はーはっはっはっ!はぁぁっ(引き笑い)
❤️翔太ももうダメそう。
💚そろそろお開きにするか…笑
🖤そうだね。みんな、今日はありがとう。
🧡めめぇー!!またなー!また飲もーなぁぁ!
🖤もちろんです!良かったらふっかさんも。
💜おう、もちろん!ってか康二ちゃんと歩けよー。
🧡ふっかさんニンニク臭い…
🖤確かに…
💜うるせぇ!!確かにってなに!?わら
💛突然押し掛けてすみませんでした。楽しい時間をお邪魔してしまったようで…
💚いえいえ!おふたりが来てくれてとても楽しかったですよ!
🩷ひかるぅー!!かーえーろー!!
💛わかったって!では、明日はご自宅に伺いますね。
💚はい!笑
4人がそれぞれ帰途についたところで、蓮がそっと後ろから抱きついてきた。
💚なーに?笑
🖤今日、ありがとね。全部亮平のおかげだ。
💚ううん。賛成してくれたみんなと、頑張った蓮がいるからだよ。こちらこそありがとう。
ちょっと眠そうな蓮の頬を撫でると、犬みたいに顔を擦り寄せてきた。
🖤えへへっ//酔って赤い亮平もかわいい。
💚えっ!顔、赤い?
🖤うん。かわいい。大好き。
💚もおー!蓮ったら♡
❤️(入りづらい…)
それから舘さんと(ほぼ寝てる)翔太に感謝を伝えてから家に帰った。
今日は、4ヶ月ぶりくらいに一緒に眠った。互いに人肌恋しかったようで、すぐに眠りについた。
蓮のやりたいことリストには、日に日にチェックマークが増えていった。
2つ目は、「ふたりで映画をみる」
蓮の好きなアニメの劇場版は、映画館ではもう上映期間が終わっていたので、家でふたりでゆっくり観た。
3つ目は「釣り」
行き先は海ではなくザリガニ釣り用の釣り堀だった。魚釣りとは違い、素早くスピード重視でザリガニを捕る蓮に、俺は一日中笑っていた。結局何十匹も捕れてしまい、バケツに入った大量のザリガニはかなりグロテスクだった。
4つ目は「ふたりで遊園地に行く」
絶叫系のアトラクションは乗れなかったけれど、観覧車から見えた夕陽が人生で一番綺麗だった。大の大人ふたりがはしゃぐから、観覧車が揺れてかなり怖かった。
5つ目は「ふたりでイルミネーション」
最新の技術が使われた音と光の芸術に、心が奪われた。ついでに蓮に唇も奪われた。カップルが多いとはいえ、人前でイチャつくことに慣れていない俺は心臓がもたなかった。
6つ目は、「実家に帰る」
蓮の実家は東京からかなり遠く、2泊3日の長旅になった。何回かお見舞いに来てくれていた蓮の家族は、俺のことを優しく迎え入れてくれてとても心が温かくなった。
蓮の顔に笑顔が灯っていく。その瞬間を見られることが何より俺は嬉しかった。
体調が優れなくて出掛けられない日も増えていったけれど、ふたりで顔を合わせて笑う。
そんな日々が永遠にも感じられた。紛れもなく俺たちは幸せだった。
次回・最終話 忘れない
コメント
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めめあべ楽しそう✨
お気づきの方もいると思いますが、💛🩷は職場に内緒で付き合ってます笑 あと、💙❤️💜は出演予定ではなかったですが、どうせなら…と思って出してみました🤭どうだったかな?? 次回が最終話になりますので、気長にお待ちください!