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うめぼっち

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#溺愛
うめぼっち

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うめぼっち

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#ざまぁ
うめぼっち

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王宮を出たエドワール・ド・ヴェルモンは、馬車の窓から流れていく街並みを眺めていた。王太子ソル=アンリの言葉が、昨夜からずっと、脳裏から離れない。
──『あのリアーヌとかいう女だ。今では恩寵の館の娼婦だそうだぞ』
──『貴様の元婚約者は、今や誰にでも股を開く女になったというわけだ』
信じたくなかった。だが、否定する材料もない。
ジェラール公爵が処刑され、その妻が自害したという知らせは、エドワールの耳にも届いていた。リアーヌがどうなったのか、彼女がどこへ行ったのか。確かめる勇気もないまま、彼は日々を過ごしてきた。
そして今になって、彼女が娼館にいると聞かされた。
「……恩寵の館、か」
呟いた声は、馬車の揺れる音にかき消される。
あの場所に行けば、リアーヌに会える。だが、会って、何を話すというのだろう。かつての婚約者として、彼女を慰めるのか。それとも、すべてを失った彼女の姿を見て、自分がまだ恵まれていると安堵するのか。
そんな自分の卑しさを、エドワールは認めたくなかった。
けれど、馬車を引き返させる気にもなれなかった。
やがて、窓の外に白亜の建物が見えてくる。恩寵の館。国と教会が管理する、格式高い娼館。その外観は、噂に聞くとおり、貴族の邸宅にも引けを取らないほど優美で、夕闇の中にあっても白く輝いていた。
館の前で馬車が止まる。エドワールは一度だけ深く息を吸い、扉の外へと足を踏み出した。玄関へ続く石畳の道を歩く。磨き上げられた大扉の奥には、仮面をつけたスタッフが立っていた。
「ようこそ、恩寵の館へ」
恭しく頭を下げるスタッフの声は、どこか芝居がかっていた。
「今宵のひとときを彩るのは、美と沈黙の契約にございます」
エドワールは、返事をせずに館内へと足を踏み入れた。
大理石の床。高い天井。壁や天井を飾る絵画。魔術灯の柔らかな光が、広々としたホールを照らしている。奥のサロンには噴水があり、その周囲では何人もの娼婦が客をもてなしていた。
華やかな衣装に身を包み、笑顔を浮かべる女たち。
その光景を目にした瞬間、エドワールは喉の奥がひどく乾くのを感じた。
ここに、リアーヌがいる。そう思うだけで、足が重くなった。
「ご指名はございますか?」
仮面のスタッフがエドワールに尋ねる。
「……ああ。指名を」
「かしこまりました。お名前をお聞かせ願えますか?」
「リアーヌ。リアーヌ・ド・ヴィエルだ」
スタッフの動きが、ほんのわずかに止まった。
「……リアーヌ、でございますね」
その反応に、エドワールは眉を寄せる。
娼婦には、本名とは異なる源氏名が与えられるという。リアーヌをかつての名前で呼んではならなかったのかもしれない。遅まきながらそのことに気づき、エドワールはしまったと思った。だが、スタッフは何も言わず、静かに一礼した。
「少々お待ちくださいませ」
スタッフがホールの奥へと消えていく。
エドワールはその場に立ち尽くした。
リアーヌに会いたい。その一心でここまで来たはずなのに、いざ本人が現れるかもしれないと思うと、胸の内にためらいが広がっていく。リアーヌは、自分を見てどう思うだろう。なぜ今まで来なかったのかと責めるだろうか。それとも、もう自分のことなど忘れてしまっただろうか。
彼女がどんな顔をして現れるのか、エドワールには想像することさえ恐ろしかった。
◇
リアーヌは窓辺の席で、ぼんやりと外を眺めていた。
開店前の館内には、まだ客の姿はない。娼婦たちはそれぞれ身支度を整え、スタッフは夜の営業に向けて忙しなく動き回っている。
リアーヌは今日もエドワールを待っていた。待ったところで彼が本当に来るのかどうか、確信などなかった。それでも、心のどこかで信じていた。いつかきっと、あの人が自分を迎えに来てくれる、と。
ふと、窓の外に馬車が停まった。門番が一礼し、馬車の扉が開く。降りてきた男は、顔を仮面で隠していた。だが、その姿を見た瞬間、リアーヌの胸が大きく跳ねた。
──あの人は……まさか……。
彼から視線を逸らせない。男は館の入口へ向かい、やがて扉の向こうへと消えた。
リアーヌは椅子から立ち上がりそうになった。けれど、すぐに思い直して腰を下ろす。違うかもしれない。期待して、違っていたら。いつものように、違っていたら。うそんなことを考える自分が、ひどく臆病に思えた。
やがて、ホールの方からスタッフの声が聞こえた。
「……リュネット様」
名を呼ばれて、リアーヌは顔を上げる。
仮面をつけたスタッフが、静かに告げた。
「指名が入りました」
「……はい」
返事をした声が、自分でも驚くほどかすれていた。リアーヌは立ち上がり、衣服の乱れを整える。指先がわずかに震えているのを、誰にも気づかれないように握り込んだ。そして、ホールへと向かった。
そこに立っていたのは、やはり彼だった。エドワール。かつて自分の婚約者だった男。彼は仮面の奥から、リアーヌを見つめていた。表情は読み取れない。それでも、彼が自分を見ているという事実だけで、リアーヌの胸はいっぱいになった。
会いたかった。ずっと、会いたいと思っていた。
けれど、いま目の前にいる彼は、彼女を迎えに来た恋人ではない。客として、この館を訪れた男だった。リアーヌは、その現実を飲み込むように、ゆっくりと腰を折った。
「……旦那様」
声が震えないよう、細心の注意を払う。
「本日は、ようこそお越しくださいました」
エドワールは答えなかった。
リアーヌは顔を上げ、彼の手を取った。彼の手から手袋を外し、その甲に口づける。
その瞬間、胸の奥で張り詰めていたものが、ふっと緩んだ。
──あの人が。
──エドワールが、私を迎えに来てくれた。
そう信じたい気持ちが、理性を押しのけて膨らんでいく。彼は自分を忘れていなかった。ここまで会いに来てくれた。ならば、きっと。
リアーヌは彼の手を両手で包み込んだ。
「お久しぶりです……」
そう言いかけて、口を閉じる。
ここでは、かつての関係を口にしてはならない。
彼が何を望んでいるのか、まだ分からないのだから。
「……お部屋へご案内いたします」
リアーヌは微笑みを作った。その笑みが、どれほど切実な願いを隠しているのか。エドワールは彼女の心に気づいているのか、いないのか。彼は何も言わず、リアーヌの後に手を引かれるまま、歩き出した。
二人の間にかつて確かに存在したはずの親しさは、今ではひどく遠いものになっていた。
コメント
1件
わああ第14話……!ついにエドワールが恩寵の館に行っちゃったね……😭💔 リアーヌの「旦那様」って呼び方が刺さりすぎる……元婚約者なのに、今は客と娼婦の関係として再会するしかない切なさがヤバいよ。彼女が「迎えに来てくれた」って信じたがってる描写、感情ぐちゃぐちゃになった🥺 エドワールもエドワールで、会いたくて来たのに何も言えなくて……二人とも不器用すぎて泣ける〜!!次どうなるの、気になりすぎる💦白波先生、続きください!!