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クリスマス
熊本&福岡のボーダーZONEで旅支度をしていた。昨夜、古民家でクリスマスのニューヨーク・チーズケーキを食べた。25日は、早朝から雨。蔵財団のハイパーパジェロで、ボーダーZONEを、4:30AMに出た。そして、ワンアワー・ドライブ。K・シティ・パーキングにパジェロを停め、15分ほど歩き、ステーションへ。5:56AMのトレーンに乗車。エクスプレスだ。約30分でテンジンに着く。7:30AM前にはフクオカ・エアポート・コクサイ・ターミナルに到着したが、AIR SEOULの10:00AM発フライトのチェックインは、7:50AMから。私は梅ライスボールとほうじ茶を食しながら、考え事をした。今頃、ハイパーターミネーターとサイバーグラスは、光学迷彩ドローンによって、ソウルまで空輸されている最中だろう・・・。正午には、私はサウスコリアに入国していた。ランチに、インチョン空港の冷麺セットを食す。とりあえず、ソウルを動くために、40000円を、348000ウォンに換金する。シンチョンの大学そばの、オプティカル・メカショップで、サイバーグラスを補完するパーツを購入。65000ウォンだった。
Gタウンに潜伏
ソウルで、私の雇い主の秘書に会った。ソウル・RYZEホテルの向いにあるカフェ・グランジで・・・。段取りを決めた。私は、あくまでも、表向きはアーティスト。アーティストとしてGタウンに潜伏するのだ。秘書が私に渡したのは、すでに到着していた、ハイパーターミネーターとサイバーグラスだ。彼女は、光学迷彩ホバーマシンで、わたしをGタウンまで送ってくれた。Gタウンを上空から見た。サイバーグラスをかけてみると、たしかに、ちらほら、光学迷彩スーツを着たニューのアンドロイドらが町を歩いている・・・・・。なるべく、出会わぬよう歩こう。
五月
五月になった。
いろいろな出来事があった。
わたしは、バンクーバー・チャイナタウンのペンダ―ストリート沿いのモーテルで朝をむかえた。となりには、彼がまだ眠っている。法区写 B. 倉夫(ほうくしゃ・びー・くらお)くんだ。彼はまだ深い眠りの中にいる。
わたしは、彼にだまって、彼の脇にあった日記を読み始めた。
それは、大晦日から始まっていた。
法区写 B. 倉夫 ダイアリーi (NYからSFへ)
12月31日。僕はニューヨークに居た。彷徨っていた。一度しか会ったことのない女性に恋をし、追いかけていた。そんな僕に付き合い、一緒にイタリアンを食べてくれるウーマンフレンドが居たのに、僕は、一度しか会ったことのない女性のことばかり、あたまに描き続けていたのだ。恋は、あるアスペクトにおいては、人生の魔物ともいえるだろう。僕は何度も、その女性に手紙を書いた。ラブレターだ。そんな恋を陳腐なものだと馬鹿にする者もいるかもしれないが、恋する当事者にとっては真剣な問題だ。彼女は僕の前から消えた、西の方へ行く、と言って…。大晦日の日、その夜、僕は独り、ニューヨーク・マンハッタンを彷徨った。かっこよく言えば、そんな感じだ。それは、まるで、サリンジャーが描いた『ライ麦畑でつかまえて』の場面のようだった。僕はマンハッタンの教会で祈りを捧げ、しかしながら、落ち着かぬ心を持て余し、昨日まで雨だった危なげなストリートをブラウンのティンバーランドのマウンテンシューズでふらふらと彷徨ったのだ。一度しか会ったことのない、あの女性を頭に想い描きながら…。美化していたのかもしれない。それも恋だ。昨日の雨でストリートにはそこここに、水溜まりが出来ていて、そこに車のランプが反射して、赤や黄色がきらきらしていた。僕のあたまは、恋でふらふらとなり、足取りもおかしくなっていて、水溜まりにティンバーランドのシューズは、どぼんとはまった…。僕は泣きたくなった。その足で、ストリート沿いの1つのバルに入った。僕はギネスのBEERをオーダーし、ひとり、テーブルで飲んだ。僕はアルコールにはつよくないのだが。となりには、2人の熟女がBEERを乾杯していた。そうだ、大晦日なのだ。このニューヨーク、ビッグアップルは、大騒ぎだ。僕のこころは悲しみのなかにあっても。年をまたいで、恒例のビルディングに掲げられた、機械仕掛けのビッグアップルがおりてくる。カウントダウンが新年をつげるのだ。それは、うつくしい風景だが、すこしの悲しさもかんじさせる。だが、新しい年が明けると、最高のもりあがりとなる! 僕は西へ行くことを決めた。それを、一緒にイタリアンを食べてくれるウーマンフレンドに言った。ほんとうは、そのウーマンフレンドこそ、僕にとっての素晴らしいひとだったのだろう。だが、僕はそれに気づかず、一度しか会ったことのない女性を追って、サンフランシスコへ出発したのだ…。
法区写日記ii
三藩市(サンフランシスコ)空港につくと、到着出口から出たところでキャブに乗った。1月3日のことだった。サンフランシスコの気候は、年中やや肌寒いかんじだ。『ダウンタウンまで行ってくれる?』僕はキャブドライバーに行き先を告げた。ふつう、はじめての街では、ダウンタウンにまず行く。とりあえず、ダウンタウンのチャイナタウンで降りた。荷物は大きなカバン1つ。緑色の筒形カレッジバッグだ。UNIVERSITY OF MIAMIマークが付いていた。近くにはトランスアメリカ・ピラミッドも見える。安宿を取った。ブロードウェイのバルに付属している、あまり綺麗とは言えない怪しいINNだ。とりあえず、眠って明日のことを考えよう。一度しか会ったことのない、あの女性と、僕は再会できるのか?
日記iii
そして…。
かんたんに言ってしまえば、僕の、あのひとへの恋は終わった。あのひとと、三藩市で再会はした。だが、彼女にはすでに西眞砂男という彼がいたのだ…。僕は失意で三藩市を去った。僕はエレメンタリースクール時代を過ごしたGタウンへと運命のいたずらか、向かった。
日記iv
長い間忘却の彼方にあったエレメンタリースクール・メモリー。
Gタウンに立つと、USBから流れてくるメモリーのように、多くのビジュアルが僕のなかに流入した。それらは正確ではないかもしれない。色んな記憶、それらは、本当に僕がかつて経験したことなのか…。とおいとおい過ぎ去った時間の記憶は、自分の頭がつくり出した捏造かもしれないのだ。記憶に去来する場所は、ほんとうに存在した場所なのか? アノヒ、アノ場所、あの出来事、甘酸っぱいとよく形容されるメモリーは、上書きされた僕自身の捏造ではないのか?
Gタウン。
探求がはじまった。
山の向うのクレーター。
12歳の日の記憶。
私は、パジェロミニを走らせた。
Gタウンは小さな町。
小さな世界。
エレメンタリースクールに通っていた頃、私は此のタウンの外の事は殆ど何も知らなかっ
た・・・。
町は四方を山が囲んでいる。
日記v (Gタウンに入境:法区写 B. 倉夫)
Gタウンに入るには西山のトンネルから入境することになる。
西山を貫通するように造られたトンネルは異様な外観をしていた。トンネルの周囲は東南アジアのジャングルを凌ぐ密林に被われていたし、其の地盤は南米ギアナ高地よろしく巨大な岩々の連なりだったのだ。トンネルが無かった時代には落武者が西山を越えてゆくヴァニシングポイントでさえあった。
エレメンタリースクール時代、私にとって『西山トンネル』の向うの世界は想像上の場所であった。
トンネルの向うは『外部』、・・・その『外部』情報はGタウンのキッズワールド(子供らのバイオスフィア活動圏)では完全に遮断されていたのだ、二軒のブックショップと一軒のサウンド(レコード)ショップを除いては。
そうは言っても、ファーイーストにGタウンみたいな町は無数にあるはずだ。そんなに特別だったわけではない。あの時代には、どこかアメリカの田舎町を思わせるサバ―ブタウンは多くあった。ファーイーストは様々なアスペクトでアメリカ化を推進していたからだ。現在、ファーイーストは世界にモーターカントリーズ、そしてアニメタウンズとして知られるが、車文化とアニメ文化は元はUSAからもたらされたテクノロジー&カルチャーだ。忘れがちだがね。田舎生活にも、それらは国産文化のように浸透していた。その情報は当時、ブック&サウンドで我々の生活に入って来ていた。
だが、当時の田舎では情報源が非常に少なく、我々は貪るようにブックショップとサウンドショップに出入りした。それでエレメンタリースクールは、噂(ゴシップ)の宝庫だった。そこでスチューデントが話すことは、あることないこと様々…。あの有名なフロリダ州のタブロイド『ウィークリー・ワールドニュース』も真っ青だったね。だが、親戚の子らの話を聞いていると、今のスチューデントも同じらしい。レン、ジョージ、ユウイ、カイ、ミライ、タイチ、・・・あの頃ゴシップトークに夢中だった友の記憶が頭を過った。
ふと、パジェロミニから外を見た。川があった。綺麗な小川だ。川で衣類をウォッシュしている少女が居る!
この土地には、何故かブリテン島のカントリーサイドを流れているような川が幾つかある。少女は、そんな川のひとつで、何かをウォッシュしている。歳の頃は、我々の子供ぐらいの年齢だろうか・・・。少女はちらと、こちらを向いた。十歳位の子供の顔だ。そう思った。だが其の瞬間、ザザッと彼女の顔にブロックノイズのようなものが見えた。そして次の一瞬、一秒程だろうか、彼女の顔が人間のそれとは違う何かに見えたのだ。その顔は宇宙人特集テレビ番組に出て来るような、そう、『リトルグレイ』{英語では、グレイ・エーリアン}と呼ばれるアレ、つまり私には地球外からのエイリアンにしか見えなかったのだ。なのに私は驚愕という程に驚いたわけではない。この町、Gタウンに何らかのエイリアンが暮らして居るって事は、エレメンタリースクール時代から感じていた。当時のスチューデントらの噂話では、学校のそばの中華拉麺店の店主は国際俳優Tに似ていたけれども、ほんとうは宇宙人{SPACE-MAN}だと云われていた。そんなある日「これが店主の正体だ」と、ひとりの友人が私にイラストを描いてくれた。
友人が描いた、其の中華拉麺店店主の正体はリトルグレイそっくりだった、頭部が平たい事を除いて・・・。へんなイラストだったが、妙なリアリティもあった。そして、……さっきの少女が一瞬見せた顔、・・・あの思い出の似顔絵イラストを彷彿させるものだった。そんな風に私のパジェロミニは、少女が居た小川の辺りを走り過ぎた。だが、バックミラーで確認すると少女の姿は無かった。
日記vi
そのまま私はクレーターのある南山の山頂ゾーンへ向かった。
1月11日だった。
このゾーンでは、あの歴史的バブル経済期間に大規模年金保養施設建設の為の山地造成が成され、当時流行ったハコもの建設が施工された。そういったものの半分以上が今は廃墟となっているという。理由は様々だ。ここでは……
その原因はメテオ・インパクト。つまり隕石落下が南山の向う側で起きたから。
この隕石はさほど大きいものではなかったが、宇宙からの落下の衝撃で直径二五〇メートルのク
レーターを形成するには充分だった。そんな事があったことも私は放浪生活の中で忘れてしまっていた。記憶が、ほんとうだったかどうか確認しに来たのだ。山頂辺りに着くと、そこには廃墟になったキャンプ施設がまだ壊されずに古びたまま残っていた。その向こうに、クレーターがあったはずだ。
……あった!
しかし、三十年という時を超え、それは湖となっていた。だが、しかし私はふと思った。これは本当にクレーターだったのか? もともと湖ではなかったのか? 宇宙から落下した隕石が直径ニ五〇メートルのクレーターを造った、なんてそもそも誰が言い出した? あの日のクラスメートらじゃなかったか? 新聞記事じゃなかったと思う。確かな情報だったのか?
そうだ。私は、自分の頭の中で友人から聞いた噂話の『クレーター』を空想していただけだったのかもしれない。このキャンプ場を使った思い出もない。だが、このキャンプ場でキャンプをした、という空想を頭の中で構築していたのだ。なぜか? そう、私はあのキャンプに行けなかったのだ。私の他の全ての同級生が参加したキャンプだったのだが・・・。私は行けなかった。当時通っていた学習塾の合宿があったからだ。その後、同級生の友人らとの関係は、なんとなくよそよそしいものになっていった。『彼ら』と『私』という隔絶された雰囲気がどこか漂った。
私は『欠落』を補完するように、友人らのお喋りからの情報を空想によって再構築し、『想像上の
キャンプの記憶』を脳内につくりだしたのであった。私の真剣さが、その記憶をいっそうリアルなものにした。子供が何かに真剣になるとき、恐るべき力を発揮するものなのだ。湖を見ながら、私はあの時代に私が感じていた事をリコールした。つまり、この湖が隕石で出来たクレーターであるという確証は私には無いのだ。だが、この湖には何か得体のしれない空気が漂って居る・・・。Gタウンは太古から宇宙の神秘と無縁ではない。近隣の村には『天翔ける舟』が降りて来ていたとされる大岩もある。其の村には天文台が在るのだが、宇宙からの訪問者がそこで何度も目撃されたという情報もある。しばし岸から湖面を眺めたあと、私はそこを去り再びパジェロミニに乗り込んだ。東山(通称キャスルヒル)へ向かう為だ。ダッシュボードに数日前に買って忘れていたミルキーチョコが入っていた。疲れた頭には丁度良い。
南山を麓まで下った。南山は古くから人々が住みついていた。その中腹には仏教徒が祈りの時に使用する、線香を生産する手工業があった。山幅は広く、Y川に沿って広がっている。Y川は南山を背にすると右が上流となる。トラッカーらがよく使う道路もY川に沿っている。Y川上流の方向へ向かえばアッパータウンKに行ける。南山の麓から三つの道に分かれる。右へ行くと山深く、シャーロック・ホームズとモリアーティが決闘した断崖のような光景がある。左へ行くとY川の下流へ向かって進むことになる。こちらはうっそうとした南米的ジャングルのような道になっている。かつて、この道の入り口には遊郭があったという。もう少し進むと映画『キャット・ピープル』の舞台のように、猫の一族がたむろしている木々が現れる。この道は散歩するには面白い。その先に『ストゥーパ』遺跡が在り、そこから向こうがトラッカーたちの集荷場。三つ又の中央を行くと、ミドルスクールが在る。その脇からキャスルヒルへの登山道に入れる。キャスルヒルの歴史は古く、モナークの古城があった時代に遡る事が出来る。
登山道を登っていく。Gタウンの人口が近年著しく減少した為、登山者も減りキャスルヒルのかなりの面積が原生林に還ろうとしていた。
Dvii
原生林の奥に、誰が造ったのか、・・・チャペルを見つけた。
『聖マザーテレサチャペル』、そう書かれていた。
此のキャスルヒルには聖母マリアが出現したという地元の伝承もある。
聖母マリアは世界のいろいろなところに出現している記録があるが、それは至福の出来事である。
COCOは不思議な町だ。
あの通り過ぎた川縁の少女は誰なのか、・・・私はあの場所へ戻る。
其処にはアート・インスタレーション(モティーフ:イエス・キリスト)が在った。
声が後方から聞こえた。
「法区写倉夫くん・・・? 倉夫くんじゃないの?」
私の名を呼ぶ人物・・・。一体誰?
私はふり返り、見た。
その洒落た感じは、思い出すのに十分だった。
「君は、ヨマリちゃん・・・! ヨマリ・エクス・バルダットだね。」
ヨマリ、・・・私が12歳の頃のクラスメートだった。Gタウン日系エレメンタリースクールの…。
或る日、別の国へと引っ越して行った子・・・。
私は思い出す。
「ヨマリ、たしか、君はフランス及び日系アメリカ人だったよね。君との思い出は、よく一緒に登校したこと。君のママは、朝、私が君を迎えに行ったとき、寒い日にはいつも私にホット・ココアをつくってくれた。」
彼女は答える。
「そうだったよね。だけど、うちの家族は、あの年の終りに密かに海外へ引っ越した。お別れ会とかする時間も無かったね・・・。今は話せるけど、父はアメリカ連邦警察FBIのアジア支部に居たんだ。それで、ああいう形になった。」
私は聞く。
「それで、・・・・・君は戻って来たの?」
ヨマリは言う。
「そう。この町は変わってるからね。アーティストとしてのモティーフが多い。今は住民としてツリーハウスに住んでいる。」
私は、彼女のアート・インスタレーションのキリストを見て言う。
「君はアーティストになったのか・・・。」
ヨマリは言う、「君のお父さんは壁画家じゃなかった、倉夫くん?」
私は言う、「銭湯の壁画だ。ほとんどはね。」
私は問う。
「この町Gタウンで何かが起きていると思うか?」
「正確に言えば、何かが起きつづけている。」
ヨマリは、そう答えた。
その時上空を、重・多用途ヘリが横切った。 VAD,VAD,VAD,VAD,VAD・・・、静けさを裂く轟音。
ヨマリは言う。
「あれだ。アレが関係してる。アメリカの財団だ。今のは、その財団のヘリだ。今の方向だとY川の下流の方、・・・トラッカー集荷場辺りの広場に着陸したな。ものものしいな・・・。おそらく、SCP と関係がある。」
「SCP?」
「SCP とは。自然法則に反した存在・物品・場所・現象をSCPオブジェクトとしてファイリングする動きさ。多くの国際組織がファイリング競争を激化していると云われる。SCPファンデーションという謎の財団の存在も囁かれているよ。Secure/Contain/Protect … … それがSCPよ。」
Dviii
SCP情報を多く保有する事が、今世紀の国際社会での威信に関わるとさえ考える研究者らが居るという。一九五二年に米国ウエストバージニア州{FLATWOODS}に飛来したとされる『UFO と宇宙人のロボット』は、そのひとつとして、あまりに有名だ。
YOMARYは言う。
「Y川に沿って行ってみよう。途中、工事中で車両通行出来ない場所がある。だが、歩きで行ける距離だ。そうはかからない。」
Y川に沿って歩いていくと『キャットピープル』のような猫一族の棲息区に入った。一人の女性が、猫にハイエンドマイクロフォンみたいなものを差し出していた。
YOMARYはその様子を見ると、草むらにサッと身を隠した。私もとっさに、そうした。
YOMARYは言う。「あれ、さっきのヘリに乗ってた人物だよ…。あのタイプのジェットブラックヘリはかなり特殊なやつなの。基本的には、あのアメリカの財団の、地球外生命部門に関係するアクションに使用されてる。そして、彼女が持っているマイクロフォンは、・・・FBIが捜査用に開発したマシン…。」 私は驚く。YOMARYは言う、「あのマシンは、『キャット・コネクター』だ。人間と猫のコミュニケートを可能にするものだ。猫の行動範囲は広い。様々なものを見ている。彼らから情報を集めることが有力な犯罪捜査になる。そのためにFBIは開発したのだが、その他あらゆる捜査に秘密裏に利用されている。」
きみ何でそんな事、知ってる?・・・という顔を僕はしていたに違いない。
YOMARYは言う。「じつは、父が開発中のプロトタイプをひとつ持っていた。今もそれ、多分動く。わたしたちの住んでた川沿いの家、空家になってた。半地下ストレジにまだあったから、持ち出してツリーハウスに置いてる。・・・今の様子じゃ、アメリカの財団も殆ど何も掴んじゃいない。この農道には何匹も猫が住んでいる。彼らの方が今は、人間の誰よりも情報を持っているだろう。」
翌日。
私は猫一族の棲息区でチーズを持って、待っていた。
YOMARYはキャット・コネクターのケースを抱えてやって来た。
Dix
Yomaryは言う。
「これがキャット・コネクターだ。プロトタイプの試作機の一つだが。父がFBIに居た頃、使うこともあったようだ。彼はもう引退してヨーロッパで事件捜査とは無縁の日々を過ごしている。父はあの頃、FBIレガット{LEGAT}と呼ばれる国際捜査支部に居たらしい。今思うと、支部は掴んでいた、このGタウンにおける宇宙人の存在の痕跡を。 ・・・・・だが、長い間忘れられていた。独自調査しているアメリカの財団は敵ではない。だが、じつは、私は別の財団に雇われている。独裁国家ニューとの軋轢はある、そこは・・・。私は、ニッチなスペースを通って動いている。」
僕は、Yomaryに真顔で問う、「総合的に言えば、つまり、かつてFBIは宇宙人を捜査するためにアジアに入り込んだのか。そこに事件性がなくて、とりあえず捜査を打ち切った?」
「おそらくそうだ。私を雇っているのはソウルの財団だ。廃墟になっていた{LEGAT}インフォセンターから情報を取り出し、その財団がセーブしている。現在のソウルは入り組んでいる。いわゆる複雑系都市。冷戦構造破綻は進歩ではあったが、細分化した力が新しいバランスを模索している。宇宙生命もその一端を担いでいる。」Yomaryはそう推測した。そして続けて言う、「Gタウンでは数十年以上前からSCP目撃情報が多数あった。かつてUMA(ユーマ)と極東で呼ばれていた謎生物たちだ・・・。それらは元々地球上の生物ではない・・・。」
僕はチーズを紙皿に載せて、農道の脇に置いた。前のとは模様の異なる猫が現れた。
Yomaryはキャット・コネクターのマイクロフォンをその猫に向けて、喋りかけるのだった。
「猫さん。君らが知っている事も教えてくれ。チーズがご褒美よ。」
《数世代にわたり、このGタウンに住んでいる猫一族から得た情報》
●Y川の支流を北へ進んだところに、秘密のコミューンがある。
●秘密のコミューンでは宇宙人と地球人が結婚し、共に暮らして居る。
●そのコミューンでは、新しい世代が生まれている。
●衣類を小川で洗っていた宇宙人少女は新しい世代なのだ。地球人に怪しまれることなきよう、デジタルホログラムを纏っていた。
●宇宙人らの世代交代のスパンは地球人と同じ位。結婚に支障は無い。
●『Y川支流北』にはSCPが棲息している。
Gタウンの西インダストリアル・エリアには、毎晩、明かりが灯り何か重工業プロダクトを製作しているらしい工場がある。目撃者の話では、重工業パーツが出来次第、何度も何度も、南山奥の湖の方面へトランスポートトラック・カーゴで運ばれているという。どうやら、もう一度、南山の湖へ向かう必要がありそうだ。我々はキャット・コネクターで猫らとコミュニケーションを取った、彼らの身体を使わせてくれ、と。
キャット・コネクターによって、猫らとリンクし、我々の意識で彼らの身体を動かせるようになる。ただし、彼らがオーケーしてくれれば、だが。
チーズ・二キロでディールだった。猫の身体の方が潜入に怪しまれないはずだ。