これはおれとルティが出会う前、つまりレア確定ガチャで引かれる前の話。
彼女の故郷は火山渓谷ロキュンテという町で、ドワーフが多く暮らしている。ドワーフ族が人間と共存して生活をする、数少ない所だ。
「ルティ、今日も山へ?」
「はいです! どこで何が起こるか分からないので、日頃から鍛えて鍛えまくって強くありたいんです!」
ドワーフ族の父であるテクスと、人間の母ルシナとの間に生まれたルティには天性の才能があった。ドワーフ族特有の器用さと腕力。それらが彼女に備わっている。
占術士をしているとされる母ルシナは、薬師《くすし》でもあった。そんな母の下で、ルティは回復魔道士を目指していた。
「てぇい! とぉぉっっ」
彼女は拳だけで火山に棲みつく魔物を倒すことが出来る。ルティにとっては日常茶飯事なことだ。家に帰れば魔物から取れた皮をなめし、肉を加工したりと充実した毎日を過ごしている。
そんなある日のこと、
「ねえ、ルティ。あなたが回復魔道士を名乗りたいのなら火口の灼熱湯で温泉水を汲んで、そこから回復水を作りなさいね」
「はい、母さま。それじゃあ、樽を持って行ってもいいですか~?」
「いいわよ。それから、帰りが遅くなったとしても……頑張りなさいね」
「……? はい~! 行ってきます!」
母の言葉の意味は深く考えずルティは温泉水を汲みに山に登る。
灼熱の湯を樽に汲み、回復と力を上げる効果のある水を作り始め、そして――
「あれれ!? け、景色が遠いですよ……!?」
そんな時、彼女は自分の体がどこかに呼ばれているような感じを受けた。
「むむむっ!? 洞窟!? しかも岩が落ちまくり! 誰かいますか~?」
「…………ぅ」
「あれ、これは魔石? わ、わたしの名前が何で~!?」
魔石の傍ではワイバーンが倒れている。その近くに人が倒れているのに気づき、ルティはワイバーンを持ち上げ遠くに投げることにした。
「あわわわっ……し、死んでる? と、とにかく、外に運ばないと! わたしが助けますからね~」
「う……」
「口移しで……い、いやいやそんなことは無理無理……!」
「…………」
「あ、あれっ? わたしの樽もここに来ちゃってますよ!? そ、そうだ!」
ルティは樽も一緒に移動して来たことに気付き、回復水を浴びせることを思いつく。
「よぉし、こ、これなら目覚めてくれます! 早く起きてくださいね~!」
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