テラーノベル
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屋上から降りたあと、
おらふくんは保健室のベッドに横になっていた。
カーテン越しの光が、やけに白い。
目を閉じると、
さっきの風の音が、まだ耳に残っている。
――違う。
風だけじゃない。
声。
「だいじょうぶ」
低くて、少し不器用な声。
今と、同じ。
「……」
胸の奥が、じくりと痛む。
頭の中に、
知らないはずの景色が、にじむ。
古い校舎。
今よりずっと小さい自分。
手のひらが、やけに小さい。
泣いている。
理由は分からない。
でも、必死で声をこらえている。
「……ばれたら、また……」
そこに、足音。
「――なにしてんの」
驚いて顔を上げると、
逆光の中に、男の子が立っている。
少し無愛想で、
でも、目だけは真剣で。
「……ここ、だめだよ」
「泣くなら、こっち」
そう言って、
手を引かれる。
その手が、
今の、おんりーと同じ温度だった。
「……名前」
記憶の中の自分が、聞く。
男の子は、一瞬だけ間を置いてから言う。
「……おんりー」
それを聞いた瞬間。
――ガタン。
現実のベッドで、
おらふくんの体が、びくっと跳ねた。
「……おん、りー……?」
喉が、ひりつく。
あの日の声。
あの日の手。
あの日の、屋上の影。
全部が、
今につながっている。
カーテンが、静かに開く。
「……起きてる?」
おんりーだった。
いつもより、少しだけ静かな声。
おらふくんは、
しばらく何も言えなかった。
でも、
逃げなかった。
「……ねえ」
小さく、でも確かに。
「……昔」
おんりーの動きが、止まる。
「……俺さ」
言葉を探すみたいに、視線を彷徨わせて。
「屋上の影で、泣いてたこと、ある」
おんりーの目が、見開かれる。
「……で」
続ける。
「……手、引いてくれたやつが、いた」
沈黙。
重い沈黙。
それから、
おんりーは、ゆっくり息を吐いた。
「……思い出した?」
おらふくんは、首を振る。
「……全部じゃない」
でも。
「……声と、手だけ」
それで十分だ、と言うみたいに
おんりーは、ベッドの横に腰を下ろした。
「……そっか」
一瞬、昔に戻ったみたいな顔。
「……俺さ」
視線を落として、言う。
「昔、転校する前に」
「……一人だけ、置いてきたと思ってた」
おらふくんの胸が、きゅっと鳴る。
「……泣き虫で」
「……すぐ、自分のせいにして」
「……でも」
顔を上げる。
「……放っとけなかった」
その言葉で、
最後のピースが、はまった。
「……それ、俺」
声が、震える。
おんりーは、否定しない。
ただ、
ほんの少しだけ、笑った。
「……やっと、会えたな」
過去は、全部優しかったわけじゃない。
でも。
一人じゃなかった記憶が、
確かに、ここに戻ってきた。
忘れても、
途切れても、
それでも、また繋がる。
おらふくんは、
初めて自分から、言った。
「……今度は」
一拍。
「……置いてかないで」
おんりーは、即答だった。
「置いてかない」
短く、強く。
「今度は、最後まで一緒だ」
うぅみじかい
コメント
4件
うあああああああ(?) 最後のピースが、はまった。ってひょうげんすきすぎるッッッッッッッッッ(( てかちょうかんどうううああああああああ( え、あ… _:(´- `」 ∠): バタッ ((こうふんのしすぎですね、ほっときましょう☆
さすがに、もう投稿は...