【???視点】
空気が変わった。
その人物は、貼り付けた完璧な笑みと立ち振る舞いを全く崩さず、奴隷達に向かってくる。
「なっ、わざわざ奴隷の前になんて行かなくても…!」
「…いえ、行きます。俺が行きたいんです」
その人物__16歳ぐらいだろうか、少女にしては酷く大人びていた。
また笑みを崩さず。少女はそう告げた。
「良いでしょう?」
その凛とした音には、思わず聞き惚れてしまうような声とは裏腹に。
誰も逆らえなくさせるような、畏怖に溢れる圧が滲み出ていた。
「…っ、ぁ…」
「おや、…いけませんでしたか?」
「ぃ…ぃ、いえ! どうぞ!」
「ふふ、ありがとうございます」
静寂の中に響く足音。
自分の心音と重なるそれは、酷く威圧感を帯びている。
「__さて、」
「こんにちは、奴隷くん達。」
少女が微笑む。
その表情は、少なくとも、
先程の貼り付けた、完璧な笑み、では。なかった。
「俺は天幻夜。よろしくね」
「…っ、よ、よろしくお願いしますっ!!」
「お、俺! 天幻夜様のお役に立ちます!」
奴隷達がなんとか気に入られようとしている横で、
__僕は、何もしなかった。
できなかった。
同じだと思った。
また、選ばれないと思った。
必要とされないと思った。
もう、どうしようもないだろうと。
全部全部諦めた。
__いや、諦めていた。
諦めていただけだった。
「ねぇ、君。こんにちは」
天幻夜様が気に入った奴隷がいたのだろうか。
酷く優しい声色が耳を突く。
「聞こえてるかな? 金髪の女の子」
__え。
辺りを見渡しても、金髪は僕しかいない。
嘘?
僕が?
何で…?
「やっとこっち向いてくれた」
天幻夜様はそう言って微笑む。
貼り付けた笑みでも、先程の優しそうな笑みでも、無かった。
心底嬉しそうな、笑みだった。
僕を見て、嬉しそうに笑う人なんていなかった。
「…こ、こんにちは…」
「こんにちは。ねぇ、君の名前は?」
「…名前…」
…僕の名前、は。
「神楽宵…です」
A.神楽宵
コメント
7件
更新お疲れ様です! 幻月夜様……え、なんて読むのか分かりまs((((バカ 後々の展開が気になりすぎますね! うわぁあ!!好きです!!!!神です!!ありがとうございます!!!体調回復した気がします!!! ゼロ様、無理はなさらず。
幻月夜様と神楽宵… よ、宵……? 元は宵だったが後から神楽夜になったのか… はっ!もしや幻月夜様と下の名前同じだから気を遣って宵と名乗っt((なわけあるか ちょ待っ幻月夜様誰やねん貴方様(?) とりあえず神👍👍👍👍👍