テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
朝、タブレットで天気予報を確認してみた。今日は曇りだけど雨は降らなくて、ひょっとしたら晴れ間もあるかもしれないんだって。
で、明日は雨で、また桜が散っちゃう。今の桜は、満開じゃないけど、結構咲いてる。
『だからさ、花見、早いけど今日にしないか?』
そう祟ってる奴に言ったら、賛成してくれた。
「うん、じゃあ、午前の仕事早めに一段落させるよ」
ワシはせっせと弁当を作り、お昼に、祟ってる奴と近所の公園まで行った。
九分咲の桜の近くのベンチで、弁当を広げる。揚げない唐揚げ、アスパラガスのごま和え、にんじんしりしり、卵焼き、おにぎり。
「あー、おいしい……外で食べるの、いいなあ」
『やっぱ、花見はいいな』
青空の下の桜じゃないのが残念だけど、薄紅色の花はやっぱりきれいだし、その下で飯を食えるのは、特別な感じだ。
祟ってる奴が、唐揚げをもぐもぐしてから言った。
「あのさ、後で、桜をバックに千歳と写真撮らせてよ。おばあちゃんがさ、ツーショットまた送ってっていうんだ」
『うーん、でも、この桜はツーショット撮りにくくないか?』
ベンチの隣の桜は、見上げて眺めるにはいい高さだが、人を入れて写真撮るには高すぎる気がする。
「公園の裏にいい感じの高さの桜あるから、後でそっちまで行かない?」
『じゃあ、そうしよう』
弁当を食べ終わって、持ってきたお茶を飲んで一服したあと、公園の裏まで行った。
祟ってる奴はいい感じの撮影スポットを決めてたらしくて、歩調を速めて低めの桜に向かった。振り返って、「千歳! こっち!」と、手を上げて笑った。
桜を背にしてワシの名前を呼ぶ、祟ってる奴は、なんか、すごく幸せそうだった。
……そう言えば、こいつはわしの名前よく呼ぶな。そんで、ワシは名前呼ばれて嫌な思いしたことないな。
むしろ、嬉しいよな、名前呼ばれるの。
名前呼ばれるのって、すごくいいことなんだな。名前を呼べるのって、すごくいいことなんだな。
こいつの名前、呼びたいな。
祟ってる奴とツーショットを撮った後、ワシは言った。
『なあ、やっぱりお前の名前呼びたいから、狭山先生に診てもらうの、あとでLINEで頼む』
「そう?」
『呪いだったら早めになんとかしたいし、呪いじゃなかったら、ワシががんばればいいだけだしさ』
「そっか。じゃ、見てもらおう。呪いじゃなくても、千歳のペースでやればいいからね」
祟ってる奴は、優しく笑った。
#幽霊
凛道桜嵐 新
193
#日常
がくじゅつてき・あかげ
22,155
わーい
41
485
コメント
1件
わあああ…このエピソード、めちゃくちゃあったかかった〜😭💕 千歳さんが「名前呼ばれるのっていいこと」って気づくシーン、胸がギュッてなったよ…! そこから「名前呼びたいから狭山先生に診てもらう」って前向きになるところ、成長じゃん? 桜の下でお弁当広げて、ツーショット撮る日常の尊さよ…。揚げない唐揚げとか、にんじんしりしりって細かい描写も愛おしい。祟ってる奴(名前まだ出てこないのニクいね笑)が「千歳!」って手を振るシーンが脳内再生された…幸せすぎて泣く。🌷🌸