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🕳️ シーン1:地下で響く共鳴
碧診区の地下フロア。杭貯蔵区域の再点検中、作業員が不明なフラクタル反応を検知した。
「ここ……登録されてへん杭や」
報告を受けたユレイは、すぐさま現場に降りる。
薄明かりの中、誰にも共有されていないはずの杭がひとつ、孤独に立っていた。
メディすずかのスキャンが静かに告げる。
「診療記録に該当なし。過去の消失データに類似」
その杭に、見学中だった少年――アマギが誤って触れてしまった。
直後、アマギの碧素が暴走を起こし、空間に感情の渦が吹き荒れる。
🌪️ シーン2:共鳴、そして暴走
アマギは12歳。碧族化から1ヶ月の新人で、好奇心旺盛な少年だった。
碧素リングは乱反射を始め、彼の周囲に見えない“叫び”が響き渡る。
「お母さん……ぼく、まだ……!」
ユレイはアマギに接触し、杭を即座に封印。
《CODE=EMOTION_SEAL》《TRACE=PAIN_MEMORY》《TEMPORARY_LOCK=ON》
杭は沈黙したが、ユレイは深く息を吐いた。
「……この杭、“誰かの想い”が記録されないまま、残ってたんやな」
🧩 シーン3:刻まれなかった声
ナミコが処方室から駆けつけ、鎮静食を用意。
ほんのり甘い“碧根スープ”が、アマギの碧素の揺れを静かに整える。
メディすずかの声が、静かに共鳴する。
「この杭は、おそらく碧族初期……都市が形成される以前の、孤立した記録」
ユレイは杭を撫で、目を閉じる。
「名前も、姿もわからん。でも“誰か”が痛みを残していった。……それが、アマギを通して叫んだんや」
🔦 シーン4:記録するということ
その杭は、“無記録杭”として碧診区の奥に再安置されることとなった。
ユレイはアマギの回復を確認しながら、そっと言う。
「お前が触れてくれたおかげで、この杭はもう、ひとりぼっちちゃう」
アマギはまだ少し顔を伏せながらも、小さく頷いた。
「……ぼく、覚えてる。あの、さびしい感じ」
メディすずかが記録端末に追記する。
「記録完了。“記憶なき杭”に、初めて名前がついた:『アマギの証言』」
すべての記憶が残るわけではない。
けれど、誰かが“思い出した”瞬間に、それは未来へと刻まれていく。