テラーノベル
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しばらく、リビングは静かだった。
若井はスマホを見ているふりをして、時々横目で涼ちゃんを見る。
動かない。
寝ているのかと思った、その時。
カーペットが少し動いた。
涼ちゃんがゆっくり体を起こす。
髪は ボサボサ。
顔色も悪い。
目もどこかぼんやりしている。
そのまま手を床につきながら立ち上がる。
少し ふらついた。
「……」
何も言わないまま、
ゆっくり歩き出す。
若井はスマホから顔を上げた。
視線でその後ろ姿を追う。
(……どこ行くんだ)
涼ちゃんはそのまま廊下の方へ行く。
トイレのドアが閉まる音。
バタン。
若井は少しだけ眉を寄せた。
数秒後――
「っ……う、……」
小さく、苦しそうな声。
そのあと、
「おぇっ……」
吐く音が聞こえた。
トイレの中で、
「っ、……げほっ……おぇ……」
苦しそうな声と一緒に、
吐いている音が続く。
若井の目が少し大きくなる。
(……ん?)
耳を澄ます。
また、
「おぇ……っ……」
水の音。
吐く音。
若井はゆっくり立ち上がる。
「……ん?」
数歩歩いて、
廊下の方へ向かう。
トイレの前で足を止める。
中からまだ聞こえる。
「っ……おぇ……」
若井はドアの前に立って、
少し眉を寄せた。
「……吐いとる?」
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