テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
558
29
そこら辺のアニメオタク
56
メガネさん
42
予鈴のチャイムが鳴った。皆席に付いて、先生が入ってくる。プリントらしき何かを持った先生は、声を張り上げて連絡を通す。
「それじゃ中間テスト返すぞ〜」
何を隠そう今日は中間テストの返却日。今の時間は国語の返却。……そう、国語は私、高梨花菜の得意科目だ。
「高梨、今回も良くやったな」
そう言った先生から手渡されたテストの点数を確認する。自信はあるが、どうだろうか。何事も読めないものだから。推しの供給とか特にそう。急すぎて心臓保たない。
「お。…ふふん、今回もいい点」
お母さんに「いい点数だったら推しグッズ買ってね!!」と言ったかいがある。その目標さえあれば、私は無限の力を出せるのだ。二周年アクスタが推し神棚に増えることだろう。お迎えの為に自室を窓まで掃除した。
あらかたテストは返され、テストの解説も終わり、休み時間になる。へろへろとして様子で近寄ってくる人影があった。
「うあ〜…花菜〜…」
「唯。その調子だと…今回も?」
「登場人物の気持ちなんて登場人物しか知らないだろうがぁ…!」
この黒髪ショートの女子高生は、私の友達の山田唯。私は国語が得意科目だが…唯は国語が苦手科目。数学と理科の方が良く出来る、典型的な理系だ。
「花菜はなんでそんなに国語得意なのさ…?いみわからん…」
「グッズを原動力にしてる」
「いみわかった、そりゃそうなるか」
私のヲタクっぷりを良く知っている唯は、私のその言葉だけで理解したらしい。そう、ヲタクは推しのためなら何でも出来る(バカデカ主語)。
だけど、それだけではない。常日頃からしているある習慣が、私の言葉力を高めているからだ。
「まぁ、あとは小説を読むことかな…」
「花菜に読書の趣味なんてあったんだ」
「ん?二次創作小説だよ?」
「おい」
広義的に見れば、ある程度長い物語が小説だ。ならば二次創作だろうと小説は小説。推しが題材の為、脳味噌に焼き付くこと間違い無し。
『彼は、まるで鏡花水月のようだった』なんて文章をこの前見たばかりだし、『花菖蒲』『紫丁香花』『杜若』は推しの概念花として信じられないくらい見るため、難読漢字を読めるようにもなっていく。なんて素晴らしい。
「実はヲタクって二次創作によって語彙力と漢字力が鍛えられるんだよ」
「なにそれ…」
「ライフハック」
「絶っっっっ対違う」
えー、事実なのになぁ。
タイトルに四字熟語が使われるケースも沢山あるし、花が題材の作品は探さなくても見つかるほど。ネット小説を侮るなかれ。文章力が凄まじい神作者様は沢山いらっしゃるし、そもそも長い文章に親しむことが大事なのだ。小説読解は定期テストのマスト問題だし。
「いやはや本当に二次創作者様と公式は現人神…」
「それだけのコンテンツがあるのも凄いよ。ちょっとだけ羨ましいかもなぁ…」
その唯の言葉に、耳をぴくりと動かす。ほほう、そうかそうか。付け入る隙を見せたな。
高速、もはや音速でスマホを取り出しファイルを共有する。ファイル名は『布教用二次創作小説』。こんなこともあろうかと、一年前から作っていたのだ。今回はその中の短めの神作をピックアップした。
「お?お?隙を見せたね、LINEに共有してあげよう!」
「うわっなんか来た」
「取り敢えず十個ね」
内訳は、軍パロ軍パロ通常ファンタジー学パロホラー通常芸能パロ奇病異能力となっている。まだまだ共有したいものはごまんとあるが、今日のところはこのくらいにしておこう。
「なんかラノベみたいなタイトルある」
「あ、『親友が風紀委員になった件について〜絶対加入させたいヤツらvs絶対加入したくない俺〜』?」
「何文字よこれ…」
ちなみにこれはギャグコメディ系の小説。テンポが良いのでページ数が多くても全然読める。読むのに疲れたら栞機能で休み休み読んでほしい。とにかく最後まで読んでほしいのだ。
「読んで!マジで神だから!」
「タイトルに惹かれすぎたからこれは見るわ」
「ッッシャオラァ!!」
「雄叫び?」
私は布教を全力でしつつ、好きを共有できる楽しさを噛み締めた。
コメント
3件
花菜ちゃんの「グッズを原動力にしてる」って台詞、めっちゃわかるし笑ったわw テストの点数で推しグッズ買ってもらうってモチベ管理がヲタクすぎて好き。二次創作で語彙力と漢字力が鍛えられるって理論も実は理にかなってて、作者さんの地力が感じられるエピソードだった。唯ちゃんに布教する時のテンションの上がり方、ヲタクあるあるすぎて共感しかない。次回も楽しみにしてる🔥