テラーノベル
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好きって百回言って((いいよ――夜のユラシーア、灰色のビルの谷間。俺はロシア。氷の怪物のくせに、今は心臓がやたらうるさい。
ふと思い出したんだ。中国――紅星は、金に弱い。そう、あいつは金の力には抗えない。俺は財布から、すっと十万円を抜き出した。紙幣の束が、夜風に揺れる。
「……好きって、百回言ってみろ」
無言で札をひらひらさせながら告げる。心臓がどきどきしている。ああ、絶対無理だろう。あいつの死んだ魚みたいな目が、俺を軽蔑して……
「いいよ」
…………え?
!?!?! マジで!? マジでやるの!? 俺の心臓が爆発しそうだ。ちょ、やめろ、そんなあっさり承諾すんな。心の準備が……いや、待て、もっとやれ!! 俺は氷の怪物、俺は強い、耐えられる、はず……!
「……す、好き」
一回目。心臓が跳ねる。
「好き」
二回目。ああ、だめだ。胸が熱い。氷が溶ける。心臓が忙しい。俺の紅星が、俺に向かって、好きって……。俺のために。金のために。いや、理由はなんでもいい。俺のために。
「好き、好き、好き……」
三十回目くらいで、もう頭が真っ白だ。百回も聞いたら、俺は死ぬかもしれない。いや、死なない。不老不死だから。でも心は確実に死ぬ。声が、耳に、胸に、氷を溶かす熱になって突き刺さる。
――やばい。嬉しい。可愛い。俺の紅星。金で釣れてもいい。俺だけに向かって、好きって言ってくれるなら、それでいい。いや、もっと欲しい。もっと溺れたい。もっと、もっと……!
「好き、好き、好き……」
八十回目。心臓が、もう限界。顔が熱い。指先に氷が生まれそうになって、必死に抑える。俺は歪んだ笑みを浮かべて、ただその声に耳を傾け続けた。
「好き……百回」
……終わった。心臓が止まった気がした。俺は財布ごと十万円を握りしめて、紅星を見つめる。死んだ魚の目は、やっぱり俺を見ていない。けど、さっきまで好きって言ってくれた。
――ああ、やばい。俺、また溺れる。
しなもん ここあ たん .ᐟ
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コメント
1件
うわっ……これ、めっちゃ刺さるやつだ……! ロシアの心臓の音がこっちまで聞こえてきそうで、読んでて息できなかったよ。金で釣った「好き」なのに、百回も聞いたらもう理由なんてどうでもよくなるよね。氷の怪物が溶けてく過程が一語一語丁寧で、最高にやばい。ライチジャムさん、また沼に落としにきましたね……!?