黒澤「おう、伊武。来たのか」
伊武「…来るしかないでしょう」
黒澤「確かに。じゃあ早速だが、お前に重大発表だ」
黒澤の『重大発表』という言葉も、今の俺には響かないはず。しかし、奴が次に放った言葉には、俺は耳を疑った。
黒澤「眉済達に言っといたぞ。『お前んとこの伊武が毎日、俺達のところに抱かれに来てる』ってな」
伊武「?!…は…?!」
黒澤「『もう戻って来なくていい』だとさ。捨てられたな、お前」
元より約束を守ってくれるような奴だとは思っていなかったが、まさかここまでとは知らなかった。
伊武「そんな…!約束が違います!!俺があんた達に体を売れば、言わないって…」
黒澤「それは『映像を流出させない』ための条件だ。言わないでおいてやる、なんて言った覚えはねぇよ」
俺は絶望した。悔しくて仕方がない。今までずっと我慢してきたのに。目の奥が熱くなって、暖かいものが頬を伝った。
伊武「…て、下さい」
黒澤「?」
伊武「もう…こんなことはやめて下さい!!どうして…!!俺にこんなことをさせるんですか!!俺は……!俺は、ずっと耐えてきたのに…!!こんな…!!こんな…!!!」
涙をポロポロと零して、俺は黒澤に哀願した。ドアの向こうから微かに鮎川と犬亥が俺を嘲笑う声が聞こえる。
眉済派にいられなくなったこともかなり悔しかったが、何よりも『龍本の兄貴に嫌われてしまった』という事実が俺には耐えられなかった。
黒澤は依然として泣き続ける俺に近付くと、俺の顎を掴んで上に向けさせた。
黒澤「健気な奴だなぁ。随分可愛らしくお願いするようになったじゃねぇか。そんなに眉済に味方したかったのか?…それとも龍本に嫌われたことの方がよっぽど堪えたか?んん?」
伊武「…知った風なことを…!!」
黒澤「まぁどっちにせよ、お前にはもう何もなくなっちまったわけだ」
黒澤の冷徹な物言いに、俺は初めて抱かれた日以来感じていなかった恐怖を改めて体感した。
黒澤「黒澤派に来い、伊武。俺達なら、あいつらよりもずっと、ずうっと優しくしてやるからよ」
その言葉に俺は悲しみからようやく怒りを覚え、黒澤の手を力強く振り払った。
伊武「ふざけないで下さい!!いくら頼んでも、今まであんた達が俺に優しくしてくれたことなんか一度も無かった!!!」
黒澤「おーおー、失うもんが無くなったと分かったら、急に反抗的になるじゃねぇか」
黒澤は下劣な笑みを浮かべると、何時ものように、いや、何時もより何倍も強く俺を押し倒した。
伊武「嫌…!もう嫌です!!離して下さい!!」
俺は久しぶりに「抱かれたくない」という気持ちが沸き上がってきて、今までで一番激しく抵抗した。
黒澤「…お前は絶対逃がさねぇ。一生、俺達の玩具だ」
黒澤が俺の耳元に向けて冷たく囁く。その日は、何時もより一層強く抱かれた。
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