テラーノベル
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羽海汐遠
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数十分後、家のチャイムが鳴らされる音が部屋に響いた。急いで自室に戻り服を着て、もたつく手で鍵を開けてドアノブを回す。キィ、となんとも古臭い音をたてながらドアを開けた先には、見慣れた顔があって思わず泣きそうになった。
友人はその光景を横目にズカズカと我が物顔で部屋にあがりだす。急いで後を追うと友人は女の死体を見ながら突っ立っていて、なんだか今になって怖くなり始めた。沈黙が痛かった。
「あ、あのさ……」
「捨てよう」
友人はそれだけ言ってこちらを見た。返答を待っているのか。捨てる、捨てる、捨てる。言葉が頭の中を埋め尽くす。
「捨てる、って、どう、」
「俺の家に死体を連れて行こう。それで、俺の家で解体して袋に押し詰めて捨てよう。解体も捨てるのも俺がやる。お前は隣で見ておけ」
そう早口で捲し立てられてしまえば、言葉はもう出ることを知らなかった。汗なのか涙なのか分からないくらいぐちゃぐちゃになった醜い顔を、友人はどうでもよさそうに扱って、女の死体を掴むと同時にこちらの肩を掴んだ。
「下に車がある」
友人は勝手にクローゼットを開けると、ズボンとシャツを軽く着させて自分の首に女の腕を回して、酔っ払った人を運ぶような体勢をとった。曰く、誰かに見つかったときに酔って寝ているだけだと言い訳をするためらしい。
下に行くと本当に車が止められていて、幸か不幸か、人は居なかった。友人はさっさと死体を後部座席に寝転がせると運転席に乗り、こちらを見つめていた。
友人の案に乗ってしまえば、もう戻れない。いや、最初から戻れないことだらけだった。でも、こんなことになるなんて、誰も。
「どうするんだ」
相変わらず冷たくて低い声が、嫌というほど脳に響いた。ちらりと見やれば友人は眉間にシワを寄せて早くしろとでも言うかのようにこちらを見つめ続けている。
どうせ、ここで立ち止まったとして、もう戻れやしないのだ。なら、最後まで…。死体と人二人を乗せた車は、エンジンの音を響かせて夜の暗闇にとけていった。
コメント
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読み終えたわ……。冒頭の「見慣れた顔に泣きそうになる」と、その直後の友人の冷徹な提案との温度差がすごくて、息が詰まった。死体を「これ」って呼ぶのも、酔ってるふり作戦も、全部がリアルでゾッとする。もう戻れない夜の闇に溶けていくラスト、静かで重くて、続きが気になりすぎる。友人はなぜそこまでしてくれるのか、そこも含めて早く次が読みたい🔥