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ゆうき あきや
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#心理描写重視
第17話:生配信で証明! 癒やしの強制浄化
「……よし、マイクテストOKです。お兄さん、配信スタートしますね」
夕暮れ時、西日が差し込む古民家の縁側。
ジンバルに固定されたスマートフォンを前に、小春ちゃんが少しだけ強張った声で言った。
俺は急須から淹れたてのほうじ茶を湯呑みに注ぎながら、コクリと頷いた。
「ああ、いつでもいいぞ」
小春ちゃんが画面の赤い『ライブ配信を開始』ボタンをタップする。
画面左上に【LIVE】の文字が点灯した瞬間――同接(同時接続者数)のカウンターが、過去に類を見ない異常な速度で跳ね上がり始めた。
『100,000』
『350,000』
『700,000』
『850,000』
配信開始からわずか数十秒で、同接は85万人を突破した。
ヒグマ遭遇事件の切り抜き動画が世界中でバズり散らかした結果、純粋なファンに加え、ネットニュースやまとめサイトを見て「炎上の匂い」を嗅ぎつけた野次馬やアンチたちが、大挙して押し寄せてきたのだ。
案の定、チャット欄は開始早々、地獄のような有様だった。
『CG猫チャンネルはここですか?ww』
『ヒグマの着ぐるみいくらしたの? 詐欺師さん』
『動物虐待で通報しました! 早く猫を解放しろ!』
『どうせまた言い訳配信だろ。とっととアカウント消せ』
『ギフト投げてる信者も共犯だぞ目を覚ませ』
悪意と嘲笑、そして根拠のない誹謗中傷の弾幕。
普段の『癒やし』を求める視聴者や海外セレブたちのコメントは、濁流のようなアンチの書き込みに完全に飲み込まれ、かき消されていた。
「お、お兄さん……やっぱりコメント欄、すごい荒れてます……」
カメラの裏で、小春ちゃんが震える声で呟いた。彼女の目には不安の色が滲んでいる。
しかし。
俺はそんなチャット欄の地獄絵図など一瞥もせず、コールセンターで鍛え抜かれた『深夜ラジオDJのような、極めて落ち着いた声』で、ゆっくりと語り始めた。
「――皆さま、こんばんは。【日常チャンネル】の時間です。今日も一日、お疲れ様でした」
『は? 謝罪は?』
『無視してんじゃねーよww』
『メンタル鋼かよこの主』
「今日はですね、お隣の小春ちゃんの家からいただいた採れたての野菜と、うちの畑(※シロが3秒で錬成した魔法の土)で採れたラディッシュ。そして、ドバイの方から送っていただいた『最高級キングサーモン』を使って、のんびりと夕食にしたいと思います」
俺がそう言ってカメラの前に差し出したのは、大きなお盆に乗せられた料理だった。
瑞々しく輝く夏野菜のサラダと、軽く表面を炙って脂が滴る分厚いサーモンの切り身(シロ用)。
古民家の縁側に、香ばしい匂いが漂う。
『いや飯食うなwww』
『炎上してんのに夕飯配信とかサイコパスかよ』
『猫にサーモン食わせて機嫌取ろうってか? 虐待の証拠撮ったるわ』
アンチたちが画面の向こうでスマホやキーボードを叩き、さらに攻撃的なコメントを打ち込もうと指を動かしていた、その時だった。
『……ニャァン♪』
縁側の奥、キャットタワーで丸くなっていたシロが、サーモンの匂いを嗅ぎつけてふわりと飛び降りてきた。
そして、トコトコと俺の足元にやってくると、サファイアとアンバーのオッドアイを輝かせて、「早くちょうだい!」とばかりに俺の膝に前足を乗せた。
「あはは、シロちゃん、待ちきれないみたいですね!」
小春ちゃんが、カメラをシロの顔にズームする。
画面いっぱいに映し出された、一切の汚れを知らない純白の毛並み。宝石のように美しいオッドアイ。
『……っ、なんだこいつ、可愛すぎだろ……』
『いや騙されるな、これはCGだ!』
『猫に罪はないけど主は許さん』
アンチたちの指が、ほんの一瞬だけ止まった。
俺は小皿に取り分けた炙りサーモンを、しっかり冷ましてからシロの前に置いた。
「ほらシロ、熱くないから食べていいぞ」
『ミャム!』
シロは上品に、しかしとても嬉しそうに、サーモンの切り身にパクリと齧り付いた。
そして、モグモグと口を動かした直後――。
シロの動きが、ピタリと止まった。
サファイアとアンバーの瞳が、これ以上ないほど見開かれる。
そして、あまりの美味しさに歓喜した神獣の体から、ついに『それ』が物理的な現象として溢れ出した。
――ピカァァァァァァァァァァァァッ!!!!!!
「うおっ!?」
「きゃあっ!?」
シロの全身から、フラッシュを何百個も同時に焚いたような、凄まじい『真珠色の光』が爆発的に放たれたのだ。
太陽光すら凌駕する圧倒的な光量が、夕暮れの古民家を真っ白に染め上げる。
小春ちゃんの持つスマートフォンのカメラの自動露出補正が完全に追いつかず、配信画面は一瞬、純白(ホワイトアウト)に包まれた。
そして、その光はただの光ではない。
神獣の歓喜から生まれた、純度1000%の『超濃縮マイナスイオン(神聖力)』だ。
それは電波に乗り、光ファイバーを駆け抜け、世界中でこの配信を見ている85万人のディスプレイから、物理的な『癒やしの波動』として放たれた。
***
都内の薄暗いワンルームアパート。
万年寝不足で、仕事のストレスからネットの炎上に便乗し、アンチコメントを書き込んで鬱憤を晴らしていた男がいた。
『どうせヤラセだろ。徹底的に潰してやる……』
そう呟きながら、スマホのキーボードを親指で猛連打していた彼の画面が、突然真っ白に発光した。
「うおっ、なんだ!? 目が――」
男が顔をしかめた瞬間。
画面から放たれた『真珠色の光の波』が、男の顔面を直撃した。
「……あ?」
その瞬間、男の脳を締め付けていた偏頭痛が、嘘のようにスッと消え去った。
それだけではない。キーボードを叩きすぎて腱鞘炎気味だった手首の痛みが消え、慢性的な肩こりが解け、胃の奥底でドロドロと渦巻いていた他者への憎悪や嫉妬、仕事へのストレスが、まるで洗剤で洗い流されたかのように『浄化』されていく。
「な、なんだこれ……っ」
男の目から、ポロリと涙がこぼれ落ちた。
心が、恐ろしいほどに穏やかだ。
さっきまで、なぜあんなに見ず知らずの配信者を憎んでいたのか、全く思い出せない。
代わりに胸を満たしたのは、画面の向こうでサーモンを美味しそうに頬張る白い猫への、圧倒的なまでの『愛おしさ』だった。
「……ごめん……俺が間違ってた……。この猫は、本物の天使だ……」
男は震える指で、さっきまで暴言を打ち込んでいたキーボードの文字を全て消去し、代わりにこう打ち込んだ。
『……尊い。疑ってごめんなさい。俺の荒んだ心が洗われていく……』
***
それは、男一人だけに起きた現象ではなかった。
世界中で、悪意を持って画面を睨みつけていた数万人のアンチ全員に、平等に『神獣の強制浄化』が直撃したのだ。
ホワイトアウトしていた配信画面が徐々に元に戻る。
そこには、全身を淡くキラキラと発光させながら、一心不乱にサーモンを食べ続けるシロの姿があった。
「お、お兄さん……! チャット欄が……!」
小春ちゃんの震える声に、俺は手元のスマホを覗き込んだ。
『あああああああ……心が、心が浄化されるぅぅぅ……!』
『私、なんでさっきまで怒ってたんだろう。シロ様、疑ってごめんなさい……』
『画面から光の粉が出てる……私の不眠症が治った……』
『CGとか着ぐるみとか言ってた過去の俺を殴りたい。これは神だ』
『会社辞めてきました。俺もシロ様みたいに生きます』
『さっき動物虐待とか言ってごめんなさい!! 【MeTubeギフト:¥10,000】これで美味しいおやつ買ってください!!』
『俺も許してくれ!! 【MeTubeギフト:¥50,000】これで最高級のベッドを!!』
数万人のアンチが、たった数秒の『光』を浴びただけで、一瞬にして熱狂的な『優良リスナー(信者)』へと強制ジョブチェンジを遂げていた。
謝罪の言葉と共に、懺悔の証として投げられる高額MeTubeギフトの雨。
先ほどまでの地獄のようなチャット欄は、圧倒的な平和と愛、そして札束が飛び交う天国のような空間へと変貌していた。
「……よし。今日も平和だな」
俺は縁側でほうじ茶を啜りながら、ピカピカに平らげたお皿の横で口元を拭っているシロの頭を優しく撫でた。
口で反論する必要などなかった。
ただ、圧倒的な『癒やし』を見せつけるだけでいい。
現代社会が生み出したストレスと悪意の塊であるアンチなど、シロのマイナスイオンの前では、朝日に溶ける霜のように儚い存在だったのだ。
「あははっ! お兄さん、海外のファンたちも『アンチが浄化された!』って大喜びしてますよ!」
小春ちゃんが、涙を拭いながら満面の笑みでジンバルを構える。
「さて、俺たちも冷めないうちに夕飯にしようか」
「はいっ! いただきます!」
『ミャーウ♪』
狂乱するネットの世界をよそに。
古民家の縁側では、今日も絶対にブレない、のんびりとしたスローライフの時間が流れていた。
コメント
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まじでこの話、熱すぎた……!!!🔥🔥🔥 アンチが一瞬で強制浄化されて全員が「シロ様ごめんなさい…」ってなる流れ、脳みそぶっ飛ぶかと思ったよ😭💕シロちゃんのサーモン食べて光るシーン、なんか神々しすぎて笑っちゃった(褒めてる)!! 最後の「今日も平和だな」で締めるお兄さん、かっこよすぎるし、小春ちゃんも涙拭いながら笑顔でカメラ回してるのがもう尊すぎて…🥺💖 癒やしで悪意を粉砕するスタイル、最高すぎるのでこれからもずっと読ませてください!!