テラーノベル
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ワードクラフト非対応
検索欄に、
その言葉を入れる。
候補は出ない。
補完も、関連もない。
画面の端に、
小さな表示だけが残る。
非対応。
椅子に腰かけ、
肘を膝に置く。
モカ色のシャツは洗い跡が柔らかく、
袖口は手首で止まっている。
ズボンは少し長く、
足先で布を踏んでいる。
髪は整えきれず、
額に触れて静かに揺れる。
打ち間違いではない。
何度も確認した。
他の言葉は、
値段が出る。
説明が出る。
選択肢が並ぶ。
この言葉だけが、
売り場に出てこない。
一覧に戻る。
並んでいたはずの場所が、
最初から空いている。
試しに、
別の端末でも調べる。
結果は同じ。
非対応。
使えない、ではない。
足りない、でもない。
最初から、
商品にならない。
レキシリーダに触れても、
反応はない。
拒否でも沈黙でもなく、
対象外、という距離。
それでも、
言葉は内側にある。
加工も、
付与も、
調整もされないまま。
売られていないから、
値札がない。
値引きもない。
期限もない。
画面を閉じる。
不便でもなく、
損でもない。
ただ、
ここだけは、
ワードクラフトの外だと分かる。
非対応の表示が、
消えたあとも。
その言葉だけは、
静かに、
残っている。
#短編
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#時が流れる絵
柘榴とAI

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コメント
1件
うわあ、これは……すごく深いところに刺さる話でした。 「非対応」というエラー表示が、単なる不具合じゃなくて、その言葉だけがシステムの外にいることの証明になっている——この構造が美しいですね。特に「売られていないから値札がない」という一文が、なんだか切なくて、同時に誇りみたいなものを感じました。 リオン、設定と世界観の設計が好きなんで、今回の「ワードクラフト」という概念にすごく引き込まれました。システムに載らない言葉が、かえって「静かに残っている」——そのラストの余韻がずっと続いています。柘榴とAIさんの紡ぐ世界、また次も読ませてくださいね。