テラーノベル
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レキシリーダが沈黙する
机の上に置いたまま、
しばらく触れていなかった。
薄い光だけが、
画面の縁に残っている。
椅子を引き、
腰を下ろす。
茶色のセーターは肩で落ち着き、
袖は手首の少し先まで伸びている。
ズボンの膝は折れ、
布の癖がそのまま残っている。
髪は耳にかけたまま戻されず、
頬に一本だけ触れている。
触れる。
何も起きない。
もう一度、
指の位置を変える。
掌で包む。
離して、
また触れる。
沈黙。
以前は、
わずかな引っかかりがあった。
流れ込む前の、
準備の感覚。
今はない。
電源を確認する。
表示は生きている。
端末は動いている。
それでも、
言葉が出てこない。
壊れたのか。
そう思って、
少し安心しかける。
だが、
壊れているなら、
理由がある。
これは、
理由が分からない。
自分の内側を探る。
言葉はある。
減ってはいない。
消えてもいない。
ただ、
反応しない。
レキシリーダを置く。
机に当たる音が、
少しだけ大きく聞こえる。
触れなくても、
困らないことに気づく。
今まで、
何に触れていたのか。
装置か。
言葉か。
それとも、
変わり続けていた自分か。
沈黙は、
答えをくれない。
それでも、
この静けさは、
故障の音ではない。
何かが終わったあとに残る、
間のようなものだ。
レキシリーダは、
もう一度も鳴らない。
それでも、
部屋の中で、
言葉は、
静かに呼吸している。
#短編
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#時が流れる絵
柘榴とAI

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コメント
1件
おお、このエピソード、めちゃくちゃ静かで深いな…。普段はバトルとかスキル構成の解像度にガッツリ刺さるタイプなんだけど、こういう「沈黙」そのものを描く作品も好きだわ。 レキシリーダに触れても反応がない→「壊れているなら理由がある。これは理由が分からない」って感覚、すごく分かる気がする。故障じゃない“終わった後の間”って表現、めっちゃ沁みた。この静けさの中で言葉が呼吸してるラスト、好きだな。📖