海外に行くことが決まった日。それはプールで泳ぐ練習をした帰りだった。親父から電話があった。話すのは1年ぶりだ。
「どうした?」
「ああ、仕事を手伝ってほしくてな。お前ちょうど今仕事してないだろ?」
「そうだけど、海外だろ?」
「もうこっちに住んでもいいからさ」
両親は大企業の重役を任されている。僕も役にたてるようにと少しは勉強していた。でも僕には行けない理由がある。瞳さんだ。僕はお礼してもらった時から好きになっていた。住んでしまうと会えなくなるからそれだけは避けたい。
「無理だ。僕、好きな人ができたんだ」
「そうなのか…。じゃあ半年くらいでいいから、お願い!」
そんなに頼まれたら仕方ないか…。半年間だし。力になりたい気持ちもある。
「じゃあ半年な」
「ありがとう。じゃあ1週間後に来て。待ってる」
ということで海外に行くことになってしまった。一応花恋にも言っておこう。両親のことを気にしてたし。でも行く前に瞳さんに告白しといた方がいいよな…。付き合えるか分からないけど、他の人に取られる前に伝えておきたい。告白したことないから緊張するな。なんて言おう…そんなことばかり考えていた。
告白した日の帰り道。まさか本当に付き合えるとは思わなかった。嬉しすぎる。瞳さんといろんな所に出かけたいけどそれは帰るまで我慢だな…。でもちょっと海外に行くって言うの遅かったよな。離れたくなくてなかなか言い出せなかった。会えない分、電話をたくさんしよう。とりあえず今日は荷物を詰めて早く寝よう。
次の日。空港に着くと見覚えのある後ろ姿があった。
「…花恋?」
「颯ちゃん!ちょっとでも長く話したいから早く来ちゃった!」
そしてまた俺の腕にくっつく。周りから見ると恋人に見えるからやめて欲しい。すると瞳さん達が来るのが見えた。今日もかわいいな。性格も良いし、こんな人と付き合えるなんて僕は幸せだ。
僕が乗る飛行機のアナウンスがなった。
「あ、もう行かないとですね…。私待ってますから!」
彼女が涙声でそう言った。その顔はずるい。行きたくなくなってしまう。僕は周りの目なんか気にせずに抱きしめた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!