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とかげのしっぽ
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柘榴とAI

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太陽の光が窓を通して、温かさを届けてくれている。
家のすぐ側に立っている桜木は、見事に満開。
うぐいすが楽しげに歌う声が聞こえる。
その鳴き声で、少年は目を覚ました。
ベッドの上で、ぼんやりと天井を見つめている。
テレビも勉強机もない、ただベッドと壁に沿うタイプの大きな本棚があるだけの部屋。その中でいつも彼は一人。
「……」
目を覚まして一番に目に入ったのは、いつも通りの真っ白な天井。
視線を泳がせた後に映ったのは、窓から見える桜木。
春の季節というのは「進級」とか、「卒業」だとか、お祝いのイメージが強いだろうが、少年にとってはただ虚しくなるだけだった。
妹は今年から小学校に入学する。
自分だって小学二年生になるというのに、病気のせいで自宅から一歩も動けやしない。
毎晩、みんな寝静まった時間に、こっそりと両親は少年に関することで揉めている。
母や父は気づいてないのだろうが、少年には筒抜け。
それを耳にするのが、何よりも嫌だった。
申し訳なくて、悲しかった。
生まれつきの病気で、少年は今日も家から出られない。
そんな彼の娯楽は、図鑑を読み漁ること。
本棚にあるのは、すべて宇宙に関するものばかり。
「いつか地球を見て、『地球は青かった』と言う」ーーそれが今の夢。
でも最近は、他にも楽しみがある。
ぼやけた頭が鮮明になってきたところで、少年は身体を起こして窓を見つめた。
時計を見ると、針は午前十時を指している。
時間を見て、少年は
「そろそろかな」
と、待ちきれない様子で微笑んだ。
チックタック、チックタック……静かな部屋に秒針の音が、小さく響く。
秒針が、一周回った。
すると、少年の予想通り。
かたん……と小さく軽快な足音が聞こえた後、
窓の外から、一匹の三毛猫が姿を現した。
あくびをしながら、少年を見つめる猫。
「あっ!」
少年は嬉しさのあまり声を上げる。
しかし、三毛猫は窓の隙間からこちらを見守るだけで、部屋へ入ってこようとはしない。
「めめ〜、今日も来たの?」
少年が「めめ」と呼ぶ三毛猫は、「んにゃあ」と返事をした。
黄色い瞳。
少し汚れた毛並み。
首輪のない三毛猫。
黄色い瞳が綺麗だったから、少年はいつしか「めめ」と呼ぶようになった。
「ね〜、めめ、聞いてよ。
今日ね、ママとパパと妹は遊園地行くらしいんだよ?僕はおばあちゃんとお留守番だって」
身体の向きをめめに向けて、声をかけた。
めめは毛繕いをするだけ。
「僕も行きたいのに、いつもそうだよ。妹の誕生日は色んなとこ遊び行くのに、僕はどこにも行けないの。悲しくない?」
まだ毛繕いを続けるめめ。
「行きたかったよ、遊園地」
猫のめめに愚痴を漏らす。
祖母には聞こえない程度の声量で話す。 部屋に誰かが入って来たら、めめがびっくりして逃げるから。
「にゃあっ」
めめはリラックスした様子で鳴いた。
「まぁ仕方ないんじゃない?」と慰めるように。
「……そうだよね」
顔を俯かせる少年。
顔の陰を濃くして、呟いた。
「あとちょっとで新学期だって」
めめが、興味を示すように耳を揺らす。
言葉の意味が、分かっているように。
「僕、学校行ったこと、あんまりないんだよね」
掠れた声で、袖を握りしめる。めめの背後にある桜木が、そよ風に揺れて花びらが散る。それを、見ながら呟いた。
「だから、友達いないんだ」
めめはしっぽを振るだけ。
目を細めて、少年を見守り続ける。
少年は黙り込んだ。
次の言葉を口にするか迷い、唇を結ぶ。
七秒程の隙間を開けたあと、少年はめめと視線を合わせた。
「ねぇ」
声をかけると、少し首を傾げる。
そして。
「めめが、友達になってくれる?」
そう尋ねた。
猫は何を思ったのか。
また毛繕いをし始めて、質問が興味ない、という様子だった。
完全無視の猫のマイペースさに、少年は小さなショックを受けた。
「……そっか。」
少年はぷいっと反対の向きに首を動かした。
ーーやっぱり、友達になんてなってくれない。
そう思った時だった。
「ーーにゃあ」
めめが鳴いた。少年の目に宇宙が宿った。
どこか悪戯が成功したような顔に見えて、少年は思わず笑った。
めめの鳴き声を、賛成してくれたという勝手な解釈をする。
「ほんと!?」
あまりに大きな声に、めめはぴくりと身体を震わせた。
それからもう一度、「にゃあ」と鳴く。
少年はパァっと口を大きく開いて、
「じゃあ、これからもよろしくね!めめ!」
小指を差し出して、 指切りげんまんの構えをした。
そこで、今日の秘密のおしゃべりの時間は終わりを迎える。いつもよりも幾分か短い時間。
こん、こん。
ドアをノックする音。
「入っていいかな?」
祖母の声。
少年は慌てて声を潜めながら、めめに「今日はおしまい!」と言った。
すると、「にゃあ」と返事することなく、めめはそそくさと去っていく。
ほんの少ししかない、一人と一匹の時間。
去り際に、少年はこう言った。
「明日も来てね!」
めめは振り返らなかったが、それでも明日も来てくれるという確信はあった。
今まで、ずっと来てくれていたから。
めめの姿が見えなくなった後、少年は祖母に「どうぞ」と言った。
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