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「イブリースちゃああああん!!」
「うるさいわボケー」
…はっ。これがデジャブ…?
なんてことを考えながら、お姉ちゃんタイマーを止めるために私はベッドから跳ね起きた。
「うるせえですわよお姉ちゃん。この区画には、私の同僚たちが沢山入っているのです」
「イブリースちゃんへの愛を語るのに、周囲の目を気にする必要なんてないわ! だからイブリースちゃんも、私の胸に飛び込んでおいで!」
「そんなことをしたのは子供の頃だけだと思うよ」
「ええっ、でもイブリースちゃん、小さいころに見た怖い本のせいで私のベッドに潜り……むぐむぐ」
「うるさーい!!」
お姉ちゃんの口に氷魔法で作った氷柱をねじ込みながら私はベッドを降りてスリッパに足を入れる。
その後に、ばきんっという音がしたから振り返ると、口の周りがびしょびしょのお姉ちゃんがいた。
………嚙み切ったんです? あの氷を?
「うーん。目覚ましに丁度いいわね…。やっと頭が起きてきたわ! おはようイブリースちゃん!」
「…ああうんおはよう」
よし。昨日の今日で、お姉ちゃんのこのパワーにも慣れてきた…。いや、慣れちゃだめだな。うん。
「…とりあえず朝ごはん作るけど、私とおんなじやつでいい?」
「あ、朝からイブリースちゃんの手料理を食べてもいいの…?!」
「そこかよ…。一人も二人も別にあんま変わんないしいいよ」
「やったあー!」
…どっちがお姉ちゃんだか。
お姉ちゃんを尻目にそんなことを思いながら、S字フックからエプロンを取りながらキッチンの方へ歩いて行き、魔導式冷蔵庫から卵を二人分取り出す。
ボウルに卵を割り入れて混ぜて、調味料を目分量でちょいちょいっと入れたら、フライパンに落とす。
「…お姉ちゃん。コンロになって」
「お姉ちゃんにするお願いじゃない気がするのだけど?」
「…一時間抱き枕になってあげる」
「よろこんで。マイロード」
そう言いながらお姉ちゃんは、私の方に歩いてきて、両方の手のひらを合わせると、手のひらを内側から熱し始めた。
試しに手のひらの上にフライパンを置いてみると、フライパンの底から、どじゅー…と焦げる音が聞こえてきた。
「ええ…なんでそんな火力出して手は無事なの…?」
「回復魔法を同時で回してるわ! これでいつでもフレッシュな体をお届け!」
「…魔法の並列駆動なんてしたら、普通は脳の神経が焼き切れるはずなのに…」
まあいいや。今は目の前の料理に集中しよっと。
適当に卵をかき混ぜて、なんかいい感じになったら器に移して、一品目は終わり。
はい。そしたら、この後はパンでも焼いて、冷蔵庫にある野菜で簡単なサラダを作ったら、終わり。…なんだけど…。
「そして、この間に用意していたものがこちらに」
最近は風魔法の練習がてら、魔法だけでいろいろ操作して料理を作るようにしていたのだ。
トースターを用意して、パンを焼いて…。冷蔵庫からレタスやらなにやら取って、洗って、切って器に入れる。
この一連の動作を、毎日繰り返してるわけだ。おかげで、風魔法の技術がめきめき上達している。
「おおー…料理なんて緻密な作業を魔法でできるなんて、すごいわね」
ふふん。お姉ちゃんからのお墨付きです。
特に風魔法は、侵入者の撃退で毎日使うから、こういう時に鍛えておかないとダメなのです。…っておい。頭をなでるな…! ぐぐぐ…。
「なんで妹を撫でるためだけにそんな桁違いの力を……」
「ふふっ、かわいい妹を撫でるためよ」
羽海汐遠
15,192
#魔王
チタコロ
56
#勇者
りな
119
( ᐛ )
267
説明になってない気がしますよ。お姉ちゃん。
私は、お姉ちゃんの拘束の隙を見つけて抜け出すと、用意されていたパンやらを持ってテーブルへ置いた。
「ごはん冷めちゃうよ。食べるなら早く来て」
…ごはんを食べてるシーンは、いらないと思うんだ。
…そんなこんなでごはんを食べ終えた私は、お姉ちゃんの抱き枕になっていましたとさ。
確かに、一時間抱き枕になるとは言ったよ? でもさ。ベッドの上に自分ごと拘束してくるとは思わないじゃん。
「ああ…書類くん…」
やらなきゃいけない書類が…まだまだいっぱいあるのに…。くそう。お父様め…。書類の仕事はなるべく無くすって言ってたくせに…。
…いや、お父様が正しいんだよね。こればっかりは。
侵入者への対応をした人が、侵入者の記録をする。…うん。何もおかしいところはないんだよ。私への負担を除けば。
…書類を減らすってなると、私を侵入者処理に使わないってことになる。でもそれだと、私っていう魔王の存在が、人間側に認知されにくくなる。それは避けたい。
だから、迎撃に私を使う。うん…うん…おかしくなんて…ないよね…。
…はっ! もしやこの状況こそ、風魔法の出番なのでは?
だって風魔法でペンを持って、書類を届けたりすれば…いける!
一時間だけだから、魔力量も多分持つはず。
いっけー! 風魔法くーん!
私が小さい声で風魔法の詠唱をすると、ペンがふわりと宙に浮いて、机の上にあった書類の項目にペケを入れ始めた。
よし! 成功! あとは、書類の回収口がある事務室まで書類の山を持っていけば…。
…浮かせられねえー…。流石に山は厳しいか…? 一枚ずつなら…。
お。いったいった! 書類の山から、書類が一枚ずつパシュパシュ言いながら発射されてる…。
よし! このままあと一時間、耐えればいいだけ…。
? あれ、結構魔力食うな…なんでだろ?
そんなこんなで一時間後。私はお姉ちゃんの腕の中で滝汗を流しながら限界を迎えていた。
…ぜはー………ぜはー……。
し、死ぬかと思ったぜ…。まさかこの作業だけでこんなに魔力なくなるとは…。
お姉ちゃんから逃げ回った時と同じくらいに魔力がない………。魔力の総量って増えづらいからつらい…。
「あ、あれ…? どうしたの? イブリースちゃん」
「いや…大丈夫…。うん。………多分」
「……この部屋…すごい魔力の残滓が見えるんだけど…」
「何にもない! 大丈夫…」
うん…そう。大丈夫のはず…。
「大丈夫ならいいのよ~」
…察せよお!
いや、お姉ちゃんにそういうこと求めたらだめだよ…この人察し悪いから…。
し、死ぬ…。これ、本当に休日…?
……きゅう…。
「あれ。イブリースちゃん? イブリースちゃあああん!!」
…私の休日は、意識を失って終わったのでした。
コメント
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お疲れさま〜!第4話読んだよ!📚✨ お姉ちゃんのパワーは今回も健在で、氷魔法かみ砕くシーンは思わず笑っちゃった🤣「察せよお!」のツッコミに激しく同意…!イブリースちゃんの休日が休日じゃなくなってるの、切なくて面白いよぉ〜💦 風魔法でペン操作しながら書類やってたのに、魔力切れで倒れるオチも「あーあるある…」ってなりましたww お姉ちゃんが気づいてくれないもどかしさ、めっちゃ伝わる〜!次回も楽しみにしてるね🌸