テラーノベル
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彼は再び鍵盤に向かう。
今度は迷いがなかった。
ゆっくりと、最初の音を置く。
ド。
それだけで、十分だった。
続ける。
ド、ド、ソ、ソ――
単純な旋律。
だが、その一音一音に重さがある。
過去が重なり、経験が染み込んでいる。
速く弾かない。
飾らない。
ただ、そこにある音を、そのまま鳴らす。
「……これだ」
彼は初めて、自分の音を認めた。
星は相変わらず遠い。
だが、もうそれでいいと思えた。
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