テラーノベル
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演奏は終わった。
誰もいない部屋。
静かな夜。
彼は椅子から立ち上がり、窓を開ける。
冷たい空気。
遠くの街の灯り。
そして、星。
あの日と同じように、瞬いている。
「きらきらひかる……」
自然と口をついて出る。
子どもの頃に聞いた歌。
母の声。
「おそらのほしよ……」
もう隣にはいない。
だが、不思議と寂しさはなかった。
旋律は、消えていない。
彼の中に、確かに残っている。
変わり続けながら。
「……遠いから、光るんだよな」
あのときは理解できなかった言葉。
今なら、少しだけわかる気がした。
遠く離れたもの。
戻らない時間。
それでも、光は届く。
彼はもう一度、空を見上げる。
星は何も語らない。
ただ、そこにある。
同じようでいて、決して同じではない光で。
ゆっくりと目を閉じる。
旋律が、静かに流れる。
ド、ド、ソ、ソ、ラ、ラ、ソ――
それは始まりであり、終わりであり、
そしてまた、続いていくものだった。
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