テラーノベル
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馬車の車輪がグランドランドの石畳を軋ませ、レクト・サンダリオスは鋼の鎖に縛られ、
暗い車内に揺られていた。
第22話でのパイオニアとミラによる強制連行が、12歳の彼の心に深い傷を刻んでいた。
窓の外、初夏の都心が遠ざかる。
市場の喧騒、
果物売りの叫び声、
子供たちの笑い声が、
まるで別世界のように感じられる。
遠くにシャドウランドの暗雲が浮かび、戦争の足音を予感させる。
目的地は永遠の果樹園——
政府が隠蔽する、国会地下500階の秘密倉庫。
「父さん、俺をどこに連れてくんだよ!」
レクトは叫ぶが、声は車内の重い空気に飲み込まれる。
パイオニアは前方の座席で微笑む。
「愛する息子よ。永遠の果樹園で、グランドランドの未来を築くんだ」
その声は甘く、かつて家族で過ごした温かな記憶を呼び起こす。
だが、彼の目は冷たく、まるで兵器を見定めるようだ。
後ろに座るミラ・クロウリーは無言で鋼の鎖を握り、レクトの腕を締め上げる。
鎖が肌に食い込み、骨が軋む痛みが全身を走る。
ミラの冷たい視線が、レクトの胸を刺す。
「おとなしくしなさいレクト・サンダリオス。
無駄な抵抗はしないことね」
馬車が国会の大門をくぐり、
隠し通路へ入る。
石壁に刻まれた炎の紋章が、松明の光で赤く輝く。
通路は狭く、湿った空気が肺にまとわりつく。
エレベーターが軋みながら降下し、地下500階へ向かう。
数字が刻まれたパネルが一つずつ光り、
階層が深くなるにつれ、
空気が重くなる。
湿った土と腐った果実の匂いが漂い、
レクトの胃が締め付けられる。
扉が開くと、広大な倉庫が現れる。
無数の果樹が暗闇に伸び、
その中でも虹色の、『禁断の果実』が不気味に光る。
赤、青、黒——それぞれが魔法への兵器的能力を秘め、心を蝕む呪いを持つ。
パイオニアが手を広げ、興奮に震える声で言う。
「ここだ、レクト。
お前のフルーツ魔法が真の力を発揮する場所だ」
倉庫の奥には、兵器試作用の果実の山。剣型、爆弾型、鎖型——
果実が異形に変形し、松明の光に不気味に映る。レクトの胸が締め付けられる。
「これ……全部、俺に食わせる気か?」
彼の声は震え、恐怖と怒りが混じる。
かつて父と笑い合った記憶が、偽りの愛に塗りつぶされる。
パイオニアはレクトを倉庫の中央に連れ、
黒く円型の果実
『無限の果実』を手に持った。
無限の果実
それは、食べれば異能力の限界値を無限にする果実。ー
常人が食べれば上記の変化が起こるが、レクトは果実として吸収し、複製することが出来る。
無限の果実もまた貴重なものなのだ。
『それ』は松明の光に不気味に輝き、まるで生きているかのように脈打つ。
「さあ、食べろ。グランドランドの兵器として、お前の魔法を完成させるんだ」
もう兵器とか言っちゃってる。
腐った匂いが鼻をつき、レクトは顔を背ける。
「嫌だ! 俺は道具じゃない!」
だが、ミラの鋼の鎖が腕を締め、骨が軋む。
彼女の無表情な顔が、まるで機械のように冷たい。
「抵抗は無意味よ、レクト」
その時、パイオニアの目が鋭くなる。
「追跡者が来るな」
地上から、微かな振動が響く。
金属の軋む音、足音の反響。
ヴェル、ビータ、カイザ、フロウナ先生、
アルフォンス校長——仲間たちが追ってくる。
レクトの心に一瞬の希望が灯る。
「ヴェル……みんな!」
パイオニアはミラに命じる。
「地上で奴らを始末しろ。レクトは私が預かる」
ミラが頷き、鋼の刃を手にエレベーターへ向かう。
彼女の黒いマントが初夏の風に揺れ、刃が松明の光を反射する。
パイオニアはレクトを縄で縛り、倉庫の鉄柱に固定する。
縄は炎の魔法で強化され、熱く肌を焼く。
レクトの腕が焦げる匂いが漂い、
痛みに顔が歪む。
「動くな、レクト。国のためだ」
パイオニアの声は優しいが、その裏に冷たい意図が潜む。
レクトの心臓が早鐘を打つ。
(ヴェル……みんな、来てくれるよね?)
「あの、エレベーターの操作方法教えて貰っていいですか?」
「!!!」
ミラが戻ってきて、パイオニアに向けてそう言った。
「………………分かった、レクトちょっとそこで待っていろ」
パイオニアとミラがエレベーターへ向かうと、
レクトは一人倉庫に残される。
倉庫の空気は重く、湿気が肌にまとわりつく。
レクトは深呼吸し、フルーツ魔法を起動。
巨大なグレープフルーツを創り出す。
果実が縄を押し、爆発的な力で鉄柱を砕く。
縄が破裂し、破片が床に散らばる。
レクトは自由になり、
膝をついて息を切らす。
「絶対、逃げる!」 だが、
足元に広がる果樹の影が、彼を追い詰めるように揺れる。
エレベーターの扉が重々しく開き、パイオニアが戻る。
「レクト! 逃げる気か」
彼の炎の魔法が倉庫を赤く染め、熱波が襲う。
果樹が燃え上がり、焦げた木の匂いが広がる。
レクトは跳び上がり、フルーツ魔法で巨大なマンゴーを創り、炎にぶつける。
マンゴーが溶け、甘い匂いが倉庫に充満する。
「父さん、俺を道具にするな!」
パイオニアは笑う。
「道具? お前は私の誇りだ! サンダリオス家の希望だ!」
炎の鞭がレクトを狙い、果樹を焼き焦がす。
鞭の熱が空気を切り裂き、レクトの頬をかすめる。
レクトはバナナの盾を創り、防御するが、炎の勢いに押される。
フルーツ魔法でオレンジの爆弾を創り、爆発させる。
倉庫の壁が揺れ、果樹が倒れる。果汁が床に飛び散り、粘つく音が響く。
パイオニアは炎の鞭を振り、
レクトを鉄柱に叩きつける。
背中が金属にぶつかり、息が詰まる。
「暴れるな!!!お前の魔法は、グランドランドを救う!」
炎の熱が肌を焼き、レクトの制服が焦げる。
パイオニアはレクトを地面に押さえつけ、
冷たく微笑む。
彼の目には、父の愛ではなく、戦争の道具を見る冷酷さが宿る。
パイオニアは倉庫の奥から、
黒く輝く金属器具を取り出す。
冒涜した罪人に与える拷問器具。
梨の形をしたそれは、内部に複雑な仕掛けを持ち、挿入された部分を拡張し、極端な苦痛を与える。
古い呪文が刻まれた表面は、松明の光に不気味に光る。
特に、肛門への挿入を意図したその形状は、レクトの心に底知れぬ恐怖を植え付ける。
パイオニアが低く笑う。
「レクト、嫌がらずに果実を食べてくれるように、痛めつけておこうか。父さんからのお仕置きだぞ」
レクトの目が恐怖で揺れる。
苦悩の梨の冷たい輝きが、倉庫の薄暗い光に映える。
パイオニアが近づき、レクトの制服の襟をつかむ。
「これでお前も、従順になる」
彼の手が力強く服を引っ張り、
ボタンが弾け、
肩の布が裂ける。
レクトの肌が露出する瞬間、冷たい空気が触れ、汗が流れ落ちる。
「やめろ! 父さん、こんなの父さんじゃない!」
パイオニアはさらに手を伸ばし、レクトのズボンのベルトに掛ける。
「抵抗するなら、こうするしかない」
ベルトが外れ、ズボンが膝まで引き下ろされる。
レクトの顔が羞恥と恐怖で歪む。
「やめて! 父さん、何!?」
パイオニアの手が下着に伸び、布が引き裂かれる。
金属の冷たい感触が肌に触れ、
レクトの全身が震える。
苦悩の梨が近づき、カチリと鳴る音が心臓を締め付ける。
パイオニアの声は冷酷だ。
レクトは絶句する。
苦悩の梨を握り、、レクトに迫る。金属の先端が、すぐそこに迫る。
レクトの心が恐怖で引き裂かれそうになる。
地上、セレスティア魔法学園の国会地上正門前。
初夏の風が吹き抜け、木々の葉がざわめく。
ミラがヴェル、ビータ、カイザ、フロウナ先生、アルフォンス校長と対峙する。
彼女の黒いマントが風に揺れ、
鋼の魔法が空気を切り裂く。
ヴェルが叫ぶ。
「レクトを返せ!」
震度2の魔法が地面を揺らし、石畳にひびが入る。
ミラの鋼の刃が空を切り、ヴェルの肩をかすめる。血が一滴、地面に落ちる。
ビータが時間遡行の魔法を起動し、ミラの動きを予測。
「次の攻撃は右だ!」
カイザが電気魔法を放ち、青白い電撃がミラの鋼の盾に炸裂する。
火花が散り、朝陽を反射する。
フロウナが風の魔法でミラを包むが、果物アレルギーで咳き込み、膝をつく。
「くっ……ごめん、みんな!」
アルフォンスが記憶の鏡を掲げ、叫ぶ。
「パイオニアは地下500階だ! 急げ!」
仲間たちはミラを切り抜けて国会の隠し通路へ突入。
石畳を蹴り、ヴェルの目には涙が浮かぶ。
(レクト、絶対助けるから! 待ってて!)
彼女の震度2が通路を揺らし、石壁にひびが入る。
「パイオニア様の命令だ。邪魔するなら、本格的に排除する」
彼女の鋼の魔法が輝き、鎖が蛇のように地面を這う。
ヴェルが震度2で鎖を弾き返すが、
ミラの刃が再び迫る。ビータが叫ぶ。
「時間遡行で見た! ミラの次の動きは左だ!」
仲間たちの連携が、ミラを追い詰め始める。
だが、ミラは動じず、鋼の盾を構える。
戦闘は膠着し、決着は遠い。
次話 9月27日更新!
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扉絵が可愛い!