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駅裏のコンビニに入ると、美月はコーヒーを飲みながら本を読んでいた。


「お待たせ」


海斗は笑顔で美月に近づいた。


「来てくれてありがとう」


美月は安心したような表情で言った。そして二人はコンビニを出ると駅構内を歩いて行く。

そこで美月がおずおずと言った。


「一緒にアパートまで行ってもらってもいい?」

「もちろん。でももう大丈夫だよ、すべて解決したから」

「えっ?」

「今アパートへ行って彼と直接話をしてきた。だからもう大丈夫だよ」


海斗は優しく言う。

それを聞いた美月は、安心したのか急に泣き出した。

平気な素振りをしていたが、美月の心は緊張で張り詰めていた。

夜遅くに自宅で待ち伏せなんてされたら誰だって怖いだろう。


「もう心配ないから」


海斗は大きな柱の陰で美月を抱き寄せると、背中をトントンと優しく叩いた。



美月が落ち着いてから、二人は手を繋いでアパートへ向かった。

海斗は嫌な出来事から美月の意識を逸らそうとあえて話題を変える。

そして海斗の出来たばかりのニューアルバムの話を始めた。


「アルバム名は『earthshine(地球照)』っていう名前にしたんだよ」

「素敵!」


美月は目を輝かせて喜ぶ。

それから海斗は、アルバムの曲についての説明を始める。

今回のアルバムではロマンティックなバラード調の曲をいつもより増やした事。そして曲のタイトルは全て月に関係する言葉を使ったとも言った。

例えば『earthshine』『虹の入江』『月への階段』だ。


すると美月は「すごく素敵」と言って興奮している。

その曲名はすべて美月と関係のあるものばかりなので、美月は一日も早くその曲を聴いてみたいと思った。


海斗はアルバムの一番最後の曲についてはあえて言わなかった。その曲名は『月の指輪』だ。

この曲には海斗の特別な思いが込められているので、美月にはまだ内緒だった。


やがて二人は美月のアパートの前まで来た。

すると海斗は真面目な顔をして美月に言った。


「今夜は美月の家に泊まってもいいかな?」


海斗は今まで抑えていた気持ちを、もうこれ以上抑える事はできないと思った。

美月の気持ちを第一にと考え急がないようにと自分を抑え続けて来たけれど、今日のような事があったらもう抑え続ける事は無理だ。

美月を全部自分のものにしたかった。そして美月の全てを知りたかった。


美月は海斗の言葉を聞いて驚いている。そして心臓がドキドキしていた。

いつかはこうなる事は覚悟していたが不安もあった。

しかし自分の為に一生懸命尽くしてくれる海斗の姿を見てきてこの人なら信頼出来る…そう思っていたので美月は決心する。


「うん」



二人で階段を上がると美月がドアの鍵を開けた。

海斗は部屋に入るとすぐに言った。


「なぜだかわからないけれど、落ち着くんだよなーこの部屋」


と言って大きく伸びをする。


「狭い方が落ち着くなんて変なの」


美月が笑いながら言う。


「コーヒーを淹れるから座っていて」


美月はすぐにコーヒーの準備を始めた。


海斗がこの部屋に入るのは今日で二度目だ。

この間は短時間しかいなかったのでちゃんと部屋の中を見ていない。

そこで海斗は美月が飾っている小物や読みかけの本、そして置いてあるCDを見ていく。

海斗のバンドのCDがあるのを発見した海斗は、それを手に取り美月に言った。


「買ってくれたんだ?」

「うん、好きな曲が入っていたから」


と美月はキッチンから返事をする。


「今度のアルバムはプレゼントするから買わなくていいよ」


海斗がそう言うと美月は嬉しそうに「ありがとう」と言った。

海斗は美月の母親の分と浩達の分も用意するからと言ってくれた。


コーヒーを淹れた美月は、ソファーの前のローテーブルにカップを置いた。


「どうぞ」

「ありがとう」


海斗はそれを一口飲むと、


「美味しい」


と言ってリラックスした様子でふうっと息を吐いた。


美月は海斗の隣に座るのが恥ずかしかったので、ベッドの端にちょこんと座る。

そして手に持ったカップのコーヒーを一口飲んだ。

自分の部屋で海斗と二人でこうしてコーヒーを飲んでいる事が信じられなくて、まるで夢でも見ているような気がした。


すると次の瞬間海斗がマグカップを置いてソファーからゆっくりと立ち上がった。

そして美月の隣に座る。

海斗は今度は美月の手からカップを引き離すとテーブルの上に置いた。

そして美月の腰に手を回し自分の身体に密着させるように引き寄せた。


海斗は美月を優しい眼差しで見つめながら、


「愛してるよ」


と耳元で囁くとゆっくり唇を重ねた。

最初はとろけるような優しいキスだった。

しかしそれは次第に激しさを増し、海斗はありったけの情熱を込めて美月の唇に挑んできた。


しばらく熱い口づけを交わした後、今度は美月の耳から首筋、胸元へと唇が移動していく。

とうとうこらえきれなくなった美月の口から、熱い吐息が漏れ始める。

そして美月の身体は徐々に海斗の動きに反応し始める。


美月はそのままベッドに押し倒されると、次々と押し寄せる大きな波の中へ飲み込まれていった。

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