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龍河は静かに息を整え、次の質問へと移った。
「まず初めに、何故精神分析で博士号まで
取得してるアンタが、天縁教団で幹部
をやりながら詐欺なんてやってたんですか?」
ひなたは少しだけ遠くを見るような目をしたあと、静かに口を開く。
「天縁教団に入ったのはヤツらからのスカウトよ」
龍河が眉をひそめる。
「スカウト?」
その言葉に信愛も反応した。
「勧誘されたって事ですか?」
ひなたは小さく頷く。
「そうよ・・・」
そして、懐かしむように目を伏せた。
「私がスカウトされたのは今から8年前の話」
龍河は記憶を辿る。
「8年前って言えば天縁学園野球部が
高野連から除籍された後だな・・・」
ひなたは静かに話を続ける。
「当時の私は、都内で開業したメンタル
クリニックで臨床心理士として働いていたの」
信愛は首を傾げた。
「臨床心理士?」
すると銚子が穏やかに補足する。
「カウンセラーの事よ」
「あ、なるほど・・・」
信愛は納得したように頷いた。
ひなたは苦笑を浮かべる。
「けど経営はあまり芳しくなくてね
患者不足による不安定な収入
滞る開業資金の返済
それらに頭を悩ませる日々だった」
面会室に一瞬、重い沈黙が流れる。
「そんな時にヤツら・・・教団の人間がやって来た」
ひなたは当時を思い返すように目を細める。
「『あなたの力は武器になります』とか言ってね」
龍河は腕を組みながら尋ねる。
「何で教団はアンタをスカウトしたんですか?」
ひなたは肩をすくめた。
「さぁ、詐欺の才能があると思われたんじゃない?」
冗談めかした口調だったが、その笑みはどこか乾いていた。
そして、すぐに真顔へ戻る。
「私が詐欺やってたのは教団の指示だったからね」
その一言に、龍河も信愛も息を呑む。
「え!?あの詐欺が指示!?」
ひなたは静かに頷く。
「そうよ・・・」
龍河はさらに踏み込む。
「やはり資金調達が主な目的ですか?」
#普通
野々さくら
543
805
44
ありあ
159
ひなたは首を横へ振った。
「それもあるでしょうけど真の目的は別にある」
「真の目的?」
銚子が聞き返す。
ひなたは指を組みながら淡々と語る。
「まずは私が集めた信者を教団へ横流しする事」
龍河は静かに頷く。
「なるほど・・・野球部の不祥事がキッカケで
教団への信頼は地に堕ちてたでしょうからね」
「そう・・・」
ひなたの声は冷静だった。
「後がある人物を誘き出す事」
龍河はすぐさま反応する。
「ある人物?」
銚子も身を乗り出した。
「そのある人物って誰なんですか?」
しかし、ひなたは首を横に振る。
「さぁ、そこまでは知らされてない。でも
教団の目的達成の為には必要な人だと言っていたわ」
龍河は視線を鋭くする。
「その教団の目的って?」
ひなたは静かに首を振った。
「それは聞いても教えてもらえなかったわ
どうやら教祖とその側近しか知らされてないみたい」
その言葉を聞いた龍河は、静かに息を吐いた。
「なるほど・・・」
◇ ◇ ◇
龍河は頭の中で、今の情報を整理する。
カウンセラーとして働いていた霊貴冥孤は、スカウトされて天縁教団に入った。
更に、霊貴冥孤が行っていた詐欺は、教団からの指示。
第一の目的は信者数減少に伴った資金不足を補う為の金策。
第二の目的は、天縁教団の目的達成に必要なある人物を誘き出す事。
整理を終えた龍河は、次の質問をひなたに投げかける。
「では、次の質問なんですが・・・
ナワバリ様って言葉に聞き覚えありますか?」
その瞬間、ひなたの表情が凍りついた。
「ナ、ナワバリ様!?」
ひなたは思わず目を見開く。
驚きを隠せない様子で、龍河をじっと見据えた。
「ナワバリ様についてどうやって調べたの?」
そして、さらに声を潜める。
「それを知ってるのは、教団の中でも
限られた人間だけのはずよ?」
静まり返った面会室で、銚子が静かに口を開いた。
「私です」
ひなたは目を丸くする。
「おばさんが?」
銚子は穏やかに微笑みながら頷いた。
「私ね、昔は御船愛子って
名前で霊媒師をやっていたんですよ」
「御船愛子?」
ひなたが首を傾げる。
龍河が説明を引き継いだ。
「94年から96年まで放送されていた
『未解決事件調査隊』って番組があるんです」
ひなたは聞き返す。
「未解決事件?」
コメント
1件
うわあ、今回もすごく重くて深い回でしたね…。ひなた先生がまさかスカウトされて教団に入ってたなんて、しかも詐欺が教団の指示だったとは。でも「ある人物を誘き出す」って真の目的がまだ見えなくて、気になります。そしてラストの銚子さんの「御船愛子」って名前、衝撃でした!銚子さんにもそんな過去が…。続きがすごく気になります。×××さん、今回もじっくり読ませていただきました🤍