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「見事だった、ソフィア」
上座のカイル殿下がゆっくりと立ち上がり、私の元へ歩み寄った。 その瞳はこれまでにないほど真剣で、熱を帯びている。彼の手が、愛おしげに私の肩へ伸びた――。
「……あのように鮮やかに不正を暴き、新しい道を示すお前の姿に、心底圧倒された。……見直した、という言葉では足りないほどだ」
カイル殿下の熱のこもった言葉を、私は手元の帳簿を「パタン!」と閉じる音で遮断した。その音は、まるで「本日の業務終了」を告げるチャイムの音のようだった。
「……当然ですわ、殿下。数字が合わない世界など、私にとっては地獄も同然ですから。この程度、一介の妃として最低限の嗜みですもの」
(ああ……やっと終わった……。今の私の脳内、睡眠欲100%……もう一言も私に話しかけないで……)
「ソフィア……。俺は、お前のことを――」
(……ちょっと、何よ。まだなにかあるの? まさか夜の残業(夜伽)のお誘い? 今日は勘弁して。私はもう寝るのよ!)
「お言葉ですが殿下、本日の就業時間は既に終了しておりますわ。残りの質疑応答は、明日承ります。……それでは、失礼いたします」
私は殿下に完璧なカーテシーを見せ、風のような速さで会議室の扉へと向かった。