テラーノベル
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#独占欲
#ワンナイトラブ
「みなみ?」
お腹を見つめる私に、侑哉はそう呼びかけた。
あの夜から、侑哉は『姉ちゃん』から『みなみ』と呼び方を変えた。
電子レンジのタイマーが鳴り、侑哉は立ちあがると同時に私の隣に歩み寄り立ち止まった。
「俺がいるよ。俺はどんなみなみでも、大好きだよ」
――泣かないで。
――泣かないで。
侑哉の瞳は、そう悲しげに叫び、揺れている。
子どもの様に叫んでいる。
肩に触れた手に、緊張が走った。
肩の温もりが、ゆっくりお腹をなぞったと思うと、今度はうなじにその温もりが感じられた。
「みなみ……」
そう耳元で囁かれ、甘い麻薬をかがされた気分だった。
あの夜だけの誤りで、お互い忘れて無かったようにしたら、普通の姉弟に戻れると思っていた。
なのに、また、触れたら。
もう一度触れてしまったら、――今度こそ戻れない。
そう思い、顔を上げられずにいたら、テーブルの上のスマホが振動し始めた。
グォングォンと上下に揺れ、ゆっくりとテーブルの隅へ動いて行く。
慌ててスマホを持って、その振動を止めた。
『――もしもし』
止めたと同時に、電話を取ってしまったことにとてもとても後悔してしまう。
『もしもーし。固まってんのか、蓮川』
電話越しの声は、退職して以来会っていない上司の声だ。
ちょっと鼻につくような甘く低音で喋る、この声。
いつもセットでいたから忘れるわけない。
『話は、あのクソマザコン野郎から聞いた。てか、吐かせた。あいつは制裁しといたよ』
フーッと煙草の煙を吐く音が聞こえるのは、橘部長が重度のヘビースモーカーだから。
一緒に仕事していても煙草は何箱も持ち歩いていた。
でも、なんで橘部長が私なんかに……。
『取り合えず、今からそっち向うから』
「えっ?」
『えっじゃねーぞ。何を尻尾巻いてんだ。お前は俺の部下だろーが。勝手に負けてんじゃねーぞ』
「あ、いや、待って下さい。橘部長」
『話は着いてから聞いてやる』
そう言うと、電話は乱暴に切れてしまった。
一方的な、会話らしい会話も無く電話は切れた。
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