テラーノベル
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ご本人様には関係ありません。
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病院の廊下はありえないほど静かだった。
一歩進むごとに、心臓の音が大きくなる。
ふっかの病室が変わってた、そんなの聞いてない。いや、聞こうとしなかっただけだ。
おれ、なんも知らないわ。
「えーと、405、405……あ、ここ」
足がすくむ。
会うって決めたのに。
<…亮平さんっ、____
声がドアの向こうから漏れる。
は?なんだ今の。
なんか話してる…?大事なことだろうか、
どーしよ、完全に入るタイミング失った。
「ちょっとだけベンチで待つか…」
俺が振り返って、1歩踏み出した時ドアが静かに開いた音がした。
「あ、照。」
「ぉ、おう。阿部も来てたの?」
「あ、うん。空いてる時間は基本的に来てるかな、」
「そ、そうか。」
いつも通りの、優しい声
でも___
「……あのさ、ちょっとだけ話があるんだけど、」
どこか、違和感があった。
俺は一瞬だけ、目を細めた。
何かを隠しているような気がする。
何かを隠す時、阿部は少しだけ表情に出るから。
「…今?」
「うん、少しだけ、だめかな?」
断る理由も特に見つからなかった。
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病院の裏にある公園。
小学生くらいの子供達が元気に遊んでる。
「ごめんね、ふっかに会いに行くつもりだったでしょ?」
「あー、まあ、俺も入るタイミング失ってたし、この後行けばいいから、気にしないでいいよ」
「ありがと、照」
「あ、で、話って?」
阿部は少し視線を落として、それから口を開いた。
「照さ、」
「ふっかの記憶、戻す気ある?」
「……は?」
何か衝撃的な話がくるとは思った。
でも、それがここまでとは思わなかった。
思わず俺は眉をひそめる。
「その反応だとあるんだ。」
「いや、当たり前だろ」
即答だった。
少しの沈黙。
風と、元気に遊ぶ子供達の声だけが間を埋める。
「じゃあさ、」
阿部が、ゆっくり顔をあげる。
「もし、戻らなかったら?」
「…っ、」
言葉が詰まる。
「今のふっかのままでも、隣にいられる?」
胸の奥がざわつく。
「…俺はさ」
阿部が小さく息を吐く。
「今のふっかも、大事にしたいって思ってる。」
その言葉に違和感が走る。
「だから、」
一歩、距離を詰められる。
「照が、ふっかの記憶を戻させる気がないなら」
視線がまっすぐ突き刺さる。
「俺が貰うから。」
「っ、!」
これは、本気だ。本気の顔だ。
これまで何度も見てきた阿部の表情。
一瞬頭が真っ白になる。
でも、
「……関係ない、」
気づけば勝手に口が動いていた。
「何も覚えてなかったとしても、ふっかはふっかだろ。」
一歩踏み出す。
「ふっかの恋人は俺だ。俺がふっかの隣にいる。」
声が、震えてるかもしれない。
でも、止まらない。
「思い出しても、思い出さなくてもいい。どっちにしろ俺は__」
「ふっかの傍で愛し続ける。」
静寂が落ちる。
阿部は何も言わなかった。
ただ少しだけ目を伏せた。
「、そっか」
その声は、優しい声に戻っていた。
「なら、早く行きなよ」
「ふっか、照のこと待ってるよ」
その言葉に、一瞬だけ引っ掛かりを感じる。
でも、もう迷わない。
俺は阿部に背を向け、振り返らずに走り出す。
「ははっ、馬鹿だな、俺…」
そう阿部が呟いたのは、俺には聞こえていなかった。
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病室の前にもどる。
さっきと、まったく同じドア。
でも、もう俺に迷いは無い。
ゆっくりドアを開ける。
「ふっか、」
俺はその名を呼んだ。
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