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砂浜を散策した後、奈美と豪は、海沿いのイタリアンレストランに立ち寄り、遅い昼食を摂った。
夕方近くの時間にも関わらず、陽の光は海と砂浜を燦々(さんさん)と照らしている。
窓の外に広がる海は、まるでダイヤモンドダスト。
レストランに入り、サングラスを外した豪の顔立ちは、めまいがしそうなほどイケメンだ。
ピザやサラダ、パスタをシェアしながら、食事を楽しむ。
「海がキラキラ輝いてて、すごく綺麗ですね」
「ああ、そうだな。今度は都心のベイエリアに夜景を見に行ってみるか?」
「本当ですか? ベイエリアは行った事ないので、ぜひ行ってみたいです!」
こんな会話を交わしている二人は、仲睦まじい恋人同士、または恋人未満の男女に見えるかもしれない。
いつ叶うかも分からない、確約のない、彼との約束。
(私と豪さんの関係は…………歪んだ関係だし、いつ切れてもおかしくない、儚いもの……)
奈美の鼻の奥がツンとして、瞳が今にも潤みそうになってしまう。
「どうかしたのか?」
虚しさを感じつつも、黙々と料理を口に運ぶ奈美に、豪が怪訝な表情で顔を覗き込んだ。
「いえ、何でもないです。それにしても、パスタがモチモチで美味しいです……!」
彼女は彼に気を遣わせないように、無理矢理笑顔を作った。
奈美の笑みに、様子が変だと感じているのか、豪に眼差しを送られたまま。
色気を纏わせた彼の視線が、今は痛い。
彼女は俯き加減で、黙々とパスタをフォークに絡ませていく。
「奈美ちゃん、本当に……大丈夫か?」
「だっ……大丈夫ですっ! こんな美味しいパスタ、初めて食べたので……無言になってしまいました」
彼に胸の内を知られるのが嫌で、何とか言い繕うけど、豪は腕を組みながら、まだ奈美を見据えたまま。
彼女は時折、ぎこちなく笑みを彼に見せつつ、食事をするのだった。