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「……やめろ、まろ」かすれた声でそう言う俺に、まろは微笑むだけだった。優しい顔をして、全然優しくない。
「まだ言うてんの。ほんまに強情やなぁ、ないこは」
逃げようと背を向けても、腕を掴まれた瞬間、全身の力が抜ける。アルファの匂いが、俺の奥深くにまで入り込んで、心臓を直接撫でられてるみたいに鼓動が早くなる。
「……俺は、俺はお前のもんになんて……」
必死に言葉をつなげるけど、まろの手が頬を撫でた瞬間、言葉は喉の奥でほどけて消えた。
「なぁ、ないこ。お前な、ほんまはわかってるやろ。俺から逃げられへんってこと」
「……っ」
「抗えば抗うほど、深くハマってまうんや。……せやから、もう諦め…笑」
諦めろ。
その一言が、俺の胸を深く抉った。
わかっていた。どれだけ拒んでも、まろは俺を離さない。むしろ俺が必死に抗うほど、強く抱きしめて、逃げ道をふさがれていく。
「俺が全部決めたる。お前はもう考えんでええよ。……ただ俺に甘えて、俺に縋って、生きたらええんや」
視界がにじむ。
悔しさなのか、安堵なのか、自分でもわからない涙が頬を伝って落ちた。
声をあげることすらできず、ただ震える俺の頭を、まろは優しく撫でてくる。
「なぁ、ないこ。お前は俺のもんや。……一生な」
その言葉に、抵抗の最後の糸がぷつんと切れた気がした。
俺はもう、二度と逃げられない。