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俺にはもう、まろしかいない。いや――まろしか、要らなくなってしまった。
外の世界なんて、もう思い出せない。
仲間の顔も、ステージの光も、全部霞んでいく。
ここにあるのは、狭い部屋と、まろの匂いと、まろの声。
それだけで、俺は生きていける。
「ないこ、ええ子やな」
その一言が欲しくて、俺は素直に頷く。
まろが笑えば、胸の奥が熱くなって、呼吸も忘れる。
俺の世界は、まろの機嫌で決まる。
最初は違ったはずだ。
何度も拒んで、何度も突っぱねて……それでも離してもらえなくて、
気づけば、拒むことが怖くなっていた。
嫌われたらどうしよう。
置いて行かれたらどうしよう。
そんなの、考えただけで息が止まりそうになる。
俺はもう、自由なんて要らない。
この腕の中に閉じ込められて、見下ろされて、支配される――
そのたびに安心する。
矛盾してるってわかってる。わかってるけど、止められない。
「ねぇ、まろ……俺、ちゃんといい子にしてるよね?」
答えを待つ間の沈黙すら、胸を締めつける。
それでも次の瞬間、まろの手が俺の頭を撫でる。
「ああ、ようできたな。お前は俺の一番大事なもんや」
その声が全てだ。
その言葉がなかったら、俺はきっと、生きていけない。