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2154年 5月22日。今日から公安機関に務める我々は、新入りのグループを自動的に作られる。3人1組で形成され、主に町の治安、イヴェントでのVIPの護衛などを任される。これをクワッドという。この物語は、我々のクワッドで起きた出来事を物語にしたものだ。
ジャパンに来て既に6年がたった。公安大学校での厳しい訓練や教育を経て我々はついに公安機関の一員となる。今日はその就任式だ。しかし、その式が砂場のグラウンドに等間隔に立たされるなどとは考えもしなかった。ここは大正時代なのか。
「敬礼」
「「「応」」」
ランダムに3人ずつ呼び出され、新入りの機関員どもは教官の祝辞とともに続々とクワッドを形成していく。このクワッドは公安機関にいる限り入る必要があり、ある時期を以て解消と再形成を同時に行う。
「シャルル・アストルフォン・スタンライ」
「はい。」
俺の名前だ。朝礼台の前に出るときだ。まったく、なんでこんな端の方なんだ。歩数が他の人より多いだろうが。
「ララ。」
「はい。」
我々のクワッドメイトの名前だろう。姓は無いのか。女性が俺の横に来た。声の感じから、この女性は俺と同じくらいの歳で若いように思えた。しかも苗字がない。公安にはこのようなワケありの人間が多い。大学校での手厚い保証や、寮とご飯の配給。社会的にみればこれらはそんなワケアリの人間たちの最後の受け皿となるのだ。かくいう俺もそんなワケアリの1人だったりする。
「タイガ・ササキ。 」
「はい。」
この名前には聞き覚えがある。男のジャパニーズのような名前だ。高身長の男がララの隣に並ぶ。あの肩には新聞紙か何か入れてあるみたいに、すごい筋肉量だ。俺の横の両者は、タッパもなかなかなものだ。とくにササキという男は、横目で見ても人間の体じゃないみたいだ。
「卒業おめでとう。君たちはクワッド79だ。機関員の自負を持ち、礼節を弁え、常に成長すること。」
いくらかして、式は終わった。ついに我々は公安機関に入隊し、クワッドを形成した。これからしばらくは、このメンバーで任務を行うのである。
クワッドを形成するのには幾つかの理由がある。公安機関は殉職率が高く、個々で任務を行うには危険が背中合わせになる。3人でグループを組むことにより、生存率を高める役割がある。背中合わせにするものを危険から仲間にするだけで、殉職率は一気に減る。また、不正や汚職を監視し合う意味もある。もしくは、一方が危機的状況に陥った際、他のメイトがストッパーや冷水の役割を果たすという意味もある。
就任式が終わり、式を執り行った先程の教官からクワッド79に直々にお達しが来た。俺が思うに、彼はきっとかなりの歴戦の人間であろう。俺も伊達に訓練していない。だからこそわかる。立ち振る舞いに隙がなくかつ余裕が違う。経験の差を顕著に感じる。まあ、そうでなくては教官などやっていない。
「クワッド79。貴殿らは様々な部門で優秀な成績を納めている、選りすぐりの集まりであることは既に知っているだろう。貴殿らには初の任務を任せよう。」
そんな事実は初めてだ。彼らは優秀だったようだ。ふつう、事前に言っておくべきではないか。
「ララ隊員は銃撃または対人戦、ササキ隊員は対人戦またはボディーガード、スタンライ隊員はホワイトハッキングまたは医療。バランスが良いな。」
ああ、だから横の2人は先から穏やかでない視線を交わしているのか。銃撃と対人の部門で成績のトップをやり合っていたライバルであろう。生憎と俺はそんな才能はなかったため蚊帳の外だが。そんな能天気なことを考えていると、ササキが口を割った。
「御託はよろしいですよ。教官。任務概要を教えていただきたく存じます。」
ふはは。と朗らかに笑う。毒づかれてもそうやって吹き飛ばせるほどに今日の教官は機嫌が良い。これほど器の大きな上官にとっては、生徒の正式な卒業が誇らしいのかもしれない。
「すまないな。では、クワッド79への任務の内容はクルーズ船の護衛である。」
護衛。そんな任務に俺が必要なのか、本当に。著しく戦力外だと思うが。まあ、クワッドへの任務である以上、行かないわけにはいかないが。