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これは私の記憶。

「それでは立派なくノ一にはなれない。」

私はなりたくてやってるわけじゃないの。

「貴女には一族の顛末を決める権利がある。必ずや打ち勝ちなさい。」

うるさい。お前らが勝手に産んだくせに。

「裏切りもんが!」

違うよ。あいつが先に襲ってきたんだ。殺すしかなかった。

「おい、起きろ。 」

うるさい。

「起きろっての。」

うるさい。うるさい。

「おーきーろー。」

「うるさい。うるさい。うるさい!」

私は飛び起きた。はっとして部屋の扉を開けると、シャルル隊員が耳を塞いで立っていた。

「ララ隊員。うるさいのはお前だ。俺は朝弱いんだからそんな金切り声を上げるな。頭が痛い。」

「あ、ごめんなさい。」

昔の夢を見た。家族と居る夢。もっとも、もう家族と言っていいのかも分からないけれど。取り乱した私にお構い無しにシャルル隊員は続けて言う。

「本日は任務のシミュレーションを兼ねた訓練日だ。もう遅刻ギリギリだ。速やかに準備しろ。クワッドメイト1人の遅刻はクワッド全体の連帯責任だ。」

「分かった。すぐに準備します。あの、何があったか聞かないの。」

「聞いたら答えるのか。 」

これには沈黙するほかなかった。彼の第一印象は、パッと見軽薄そうだけど、話してみれば堅物っぽい感じで、こういう引き際がうまいのだ。うん、新たな発見だ。

「だろうな。あ、あと、いつもそのような格好で寝ているのか。 」

うさぎのリアルな顔が一面にプリントされたパジャマを指さす。これはうっかりしていた。私は声にならない声とともに、扉を閉めるしかなかった。その向こう側には、額を当てて溜息をつくシャルル隊員の姿が見える気がした。




「点呼!!」

「クワッド12、1、2、3!」

「クワッド15、1、2、3!」

「クワッド79、1、2、3!」

ララ隊員は寸でのところで間に合い、我々は訓練の追加メニューという難を逃れた。しかし、本日の当の教官の腹の虫の居所はよろしくないようだ。

「クワッド79、貴殿らは新入りのようだが、まだ学生の気分で居るつもりか。任務では1分1秒を争う。」

これは止まらない。経験と直感で分かる。実質彼女はタイムオーバーとなった。もしくはただの新人いびりかのどちらかだ。


護衛任務は公安機関隊員にとって最もオーソドックスである。ジャパンは軍隊の保持を行わないため、公安機関のような自衛のための機関が必要である。ならば、確かにオーソドックスな任務だ。だというのに、任務の状況が少し特殊である。初の任務であるにも関わらず、大型船という状況は少しハードなようにも思える。まず、護衛は開放的な空間よりも閉塞的な空間の方が難しい。人の出入りが無いことは簡単なように思えるが、こちら側も出入りが不可なのである。人狼ゲームの騎士ナイト考えてもらうと分かりやすい。我々は占い師乃至ないし 市民を守らなくてはいけない。

「貴殿らが本日これから行う訓練は、特殊なものとなっている。大型船の環境下では出来ることも限られており、我々がかっての訓練で学んだ方法は悪手ともなりうる。例えば、発砲1つ取ってもそうだ。テロリストや犯罪者と遭遇した際、積極的に発砲することは好まれない。閉塞的空間でパニックになった市民に暴れられては我々の目的はより果たし難くなる。」

意外に思うかもしれないが、大学校で我々が訓練で学んだことはいくらかの格闘術や、銃や機関に関する座学などと基本的なものばかりである。何故ならば不足の状況に陥った際に基本的な知識を掛け合わせたり発展させたりし、切り抜けることを推奨されているからだ。臨機応変な動きが隊員には求められているということだ。そのため、このように公安に入れば任務の直前で何度かみっちりと訓練や座学を行い、その任務に特化した隊員を一時的に作り上げる。個人的には、俺はこの考えに反対なのだが。




そして、その日中訓練をした後、解散となった。思いのほか訓練が早く終わったことを喜び、我々は親睦会をかねて安居酒屋で呑みに出かけることになった。

「「「乾杯!!」」」

「2人とも何食べるんだ。好きなもんを注文しろよ。 」

「私とりあえず枝豆かなあ。」

まず、我々は枝豆と時間のかかる唐揚げを注文した。今はオフだ。この親睦会は少しくらい俺も楽しみたいな。2口ほど口に含んでから、1番初めの会話はササキから口を割った。

「なぜララは今日遅刻したんだ。」

「あ、あれは遅刻じゃないよ。」

「教官にお咎めあった時点で遅刻だ。」

ワケアリな悪夢にうなされていたときのことだろう。どうやら突っ込まれたくない感じだったため、ここはフォロー入れておくか。

「ララはぬいぐるみと夜遅くまで戯れていたそうだ。」

「ブフォ!」

ササキが吹き出して笑いながらこう答えた。

「…面白みのねえ女の感じだったのに意外だな。可愛いものが好きなのか。」

ララが俺に失望と怒りの眼差しを向けているが、目を合わせないことにする。むしろ彼女の過去をバラさぬよう守ったのだから感謝してほしいくらいだ。そういえば、俺は全員が全員初対面だと思っていて、ササキとララが親しい仲である可能性を考慮していなかった。

「セレモニーで任務内容を聞いた時こと覚えてるか。2人は射撃が得意みたいだな。格闘術にも精通しているようだし、頼りにしている。俺はあまり成績がよくなくてな。 」

「うん、まかせてね。ところで、なぜシャルルは医療を専門に選んだの?」

「専門科目を選び、その資格を得ると、一部訓練の免除があっただろ。それが目的だ。運動は苦手でな。」

もともと医療にはある程度の知識があったから、それを選ぶとちょうど良かったのだ。

「これはタブーな質問かもしれないが、2人は何故公安入ったのだ。」

俺の質問にララはやはり若干口を噤んだが、ササキが答えたため答えずにはいられなかっただろう。これはこれは意地悪な質問したのかもしれない。

「俺は、単純かもしれないが、強くなりてえんだ。強くなって、家族を守りたい。」

ササキは大きな拳を握りしめる。

「…私も同じような理由よ。強くなって、見返してやりたい人たちがいるの。」

ララはグラスを置き、答える。

「そういうシャルルはどうなんだ。」

だから射撃も格闘も一丁前にしているのか。と納得した。俺はララのように別に隠すつもりもないし、話しても問題は無いか。

「俺か。俺は…」

2人とも腹をかかえて笑ってしまう。何をそんな馬鹿げたことを。理由になるのか。と言う。馬鹿げているかもしれないが、俺は本気だった。

不死身«クリーチャー»

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