テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
32
風民
51
サッピーの小説室
41
レド(破壊神)
144
第8話「……行けよ、巧。お前の戦いを、ここで見届けてやるからよ」
巧たちがスマートブレイン本社へ向けて駆け出した直後、夜の闇を切り裂いて降り立ったのは、ミューズ・プロトを統括する「草加雅人の模造品」――機械騎士の完成形だった。
「ターゲット確認。園田真理、および乾巧の追跡を開始――」
冷徹に響く合成音声。巧たちの背後へ迫るカイザブレイガンの銃口。
「……おい。俺の連れに勝手に触ろうとしてんじゃねえよ」
立ち塞がったのは、右半身の半分がすでに砂化し、崩れかけている海堂直也だった。
「海堂直也。生命反応低下。戦闘継続は不可能と判断――」
「判断すんのは……お前じゃねえ、俺だ!」
海堂は叫び、ポケットから取り出した最後の劇薬を、砂になりかけた己の心臓へ直接突き立てた。
「ガァァァァァッ!!」
溢れ出す圧倒的な光と砂の旋風。命の燃えかすをすべて燃料に変え、海堂は黄金色のフォトンスティグマを全身に走らせた「限界を超えたスネークオルフェノク」へと覚醒する。
超高速の踏み込み。カイザブレイガンを拳一つで砕き、模造品の胸部装甲へ狂おしいまでの連撃を叩き込む。
「なぜだ……生命維持を放棄してまでの戦闘行動に論理性はない……!」
「論理だと……? 笑わせんな! 俺はなぁ……音楽家なんだよ!」
海堂の爪が、模造品の内部回路を鋭く引き裂く。
「理屈じゃねえんだよ! 友だちの夢を守るのに、理由なんか要るかよッ!」
崩壊していく身体。指先から、腕から、脚から、灰色の砂が凄まじい勢いで夜風に散っていく。それでも海堂の攻撃は止まらない。その動きはまるで、命の終わりを告げる狂想曲(ラプソディ)。
「俺の……最悪で……最高の……ラストライブだぁぁぁッ!!」
渾身の力を込めた一撃が、模造品のコアを貫いた。
爆散する機械騎士。
静寂が戻った街角。
変身が解けた海堂は、崩れかけた身体でベンチに腰掛けた。下半身はすでに砂となり、胸のあたりまで灰色の砂漠へと変わりつつある。
視線の先には、闇を切り裂いて走り去るオートバジンの赤い光。
「……巧。かっこよく散ってやったぜ……褒めてくれよな……」
海堂はポケットから、ボロボロに擦り切れたピックを取り出し、夜空へとかざした。
「木場……巧……真理……。俺の歌……届いたか……?」
月光の下、乾いた風が吹き抜ける。
ベンチの上には、一粒の砂も残っていなかった。
ただ、調子の外れた綺麗なギターの余韻だけが、夜の静寂にいつまでも響いていた。
コメント
1件
海堂、かっこよすぎるよ……「理屈じゃねえんだよ!友だちの夢を守るのに、理由なんか要るかよッ!」って台詞、心臓掴まれたみたいになった。自分の命が砂になってくのに、最後の一瞬まで音楽家として、仲間として生き切ったんだね。擦り切れたピックを月にかざす場面、涙出そうになった。調子外れのギターの余韻が響く夜の静けさ、すごく綺麗で切なかった。巧たちにちゃんと届いたよ、俺の歌って思ってくれてるといいな。赤虎さん、こんなに熱い最期をありがとうございます。読後、しばらく動けませんでした。