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卒業式を終え、春休みに入った私たちは、ついに約束していた温泉旅行へと向かった。
特急列車に揺られながら、駅弁を半分こして笑い合う。窓の外を流れる景色は、すっかり春の準備を始めていた。
キララ:「(窓の外を指差して)見て見て、ユウキくん! あの山、少しずつ緑になってきてるよ」
ユウキ:「(私の手の上に自分の手を重ねて)本当だね。……でも僕は、景色よりも隣で楽しそうにしてるキララの顔を見てる方が楽しいな」
キララ:「(顔を真っ赤にして)もう、すぐそういうこと言うんだから……!」
宿に到着すると、そこはユウキくんが言っていた通り、静かで気品のある素敵な旅館だった。案内された部屋の扉を開けると、畳の香りと共に、ベランダにある専用の露天風呂が見えた。
キララ:「(駆け寄って)すごーい! 本当に独り占めだね。……ねえ、ユウキくん、本当にここに泊まっていいの?」
ユウキ:「(後ろから私を優しく抱きしめて)もちろん。キララが合格するために頑張ったご褒美なんだから。今日は誰にも邪魔されずに、二人でゆっくりしよう」
豪華な夕食を終えた後、私たちは浴衣姿でベランダに出た。
夜の空気は少し冷たかったけれど、目の前の露天風呂からは温かい湯気が立ち上り、月明かりが水面をキラキラと照らしている。
ユウキ:「(私の肩を抱き寄せながら)……キララ。こうして二人でいると、出会った頃のこと思い出すよ。あの時、僕を選んでくれて本当にありがとう」
キララ:「(ユウキくんの胸に頭を預けて)私の方こそ……。あの時、ボロボロだった私を見つけてくれたのはユウキくんだった。ユウキくんがいなかったら、私は今でもずっと、暗い場所で立ち止まったままだったと思う」
以前、誰かに振り回されて泣いていた日々が、まるで前世の出来事みたいに遠い。
ミナトと二人で温泉なんて、想像もできなかった。あいつならきっと「めんどくせー」って言うか、友達と騒ぐことを優先していただろうから。
でも、ユウキくんは違う。私のために時間を使い、私のために最高の場所を選んでくれる。
ユウキ:「(私の顎をそっと持ち上げて、真っ直ぐな目で見つめる)……キララ。大学に行っても、新しい生活が始まっても、僕はずっと君を離さない。君の幸せは、僕が一生守るって決めてるんだ」
キララ:「(胸がいっぱいになって)ユウキくん……。私も、ユウキくんがいない人生なんて考えられないよ。……大好き。世界で一番、愛してる」
ユウキくんがゆっくりと顔を近づけ、私たちの唇が重なる。
温泉の湯気と、ユウキくんの甘い香りに包まれて、私は頭が真っ白になった。
ミナトのことなんて、もう完全に、細胞の一つ一つから消え去ってしまったみたい。
キララ:「(心の中で強く誓う)……私は、この人と生きていく。ミナトとの過去なんて、もうどこにもない。私の未来は、全部この人が作ってくれるんだ」
夜風が竹林を揺らす音を聞きながら、私たちは深夜まで、これからの新生活の夢を語り合った。
ミナトが今、どこの大学でサッカーをしているのか、そんな小さなこと、今の幸せに比べればゴミみたいなものだった。
私の隣で微笑む、完璧で、優しくて、愛おしい恋人。
この夜、私たちの絆は、何があっても壊れない鋼のようなものになったのだと、私は信じて疑わなかった。
つづく